魔女のハートが盗まれた!〜返してください私の心臓。私の心臓妹が使ってます?

染西 乱

文字の大きさ
14 / 21

14.

しおりを挟む

「私の心臓どこにやったの? さすがのあなたでも心臓がなかったら私がどうなるかぐらいわかるでしょ?」

 生来通り、まっすぐな髪を長く伸ばすレーシーと、伸ばした髪をくるくるとお上品に巻き毛にしているクララはぱっと見はまったく異なる印象を与える。しかしじっくりと見比べて見れば、どれほど2人の姿形が似通っているかがわかる。
 長年別々に暮らしていたにもかかわらず、身長背格好もほどんど変わらない。
 どうでもいい話をしても、レーシーとクララがわかりあえないのぐらいはわかっている。レーシーはさっさと本題に入った。久しぶりの再会なのに情緒がないのは許して欲しい。相手は泥棒なのだ。
いやー久しぶり! などと和やかに挨拶などしてられない。

「えー? 心臓なくても毎日ロクとえっちなことして魔力流して貰えば死なないじゃない」

 取ってつけたようなお上品な話し方には飽きたのか、砕けた話し方で、クララがきゃらきゃらと軽薄な笑い声を上げる。何十年と生きているくせして、クララは年若い娘のように振る舞う。いや、真実内面が成長していないだけか……
 心の中は女狐であっても外見だけであれば美しく、今時の装いに身を包み魅力的に見える。

 突然話に名前を出されたロクは、クララの言葉に大袈裟にむせこんでしまっている。レーシーは哀れみを込めて、後ろに立つロクをちらりと見てから、ふぅ、と吐息を吐き出す。

「確かにそれで生きながらえることはできるけど……恋人でもないのに……」

 それは最後の手段だとレーシーは眉間に皺を寄せる。

「えっ、まだそんなこといっちゃう段階? アレから何年経ったと思ってんのよぉ」

 クララは驚きに目を開いてから、くすくす笑う。
 その瞳はレーシーではなく後ろにいるロクのほうに注がれていて、そのからかうような色にレーシーはますます機嫌を損ねた。

「なにがおかしいのよ??」

 「えー? 教えてあげてもいいけど~」
 
 クララの煌めくよう強い瞳が後ろに控えるように立っていたロクに、おもねるように向かい「なんなら私から伝えてあげてもいいんだけどぉ」などといいながら、巻き毛をくるくると指で弄ぶ。

「おい、レーシー。そんなことより心臓のことを聞け」

 持ち直したロクが、生真面目な顔で促してくるのを聞いてレーシーは話が脱線していたことを認識する。

「たしかに」

 先程まではお年寄りのようにごっほごっほど咽せていたロクに言われ、レーシーはあらかじめ考えてきていた質問を口にする。

「心臓をどこにやったのか聞こうとおもってたけど……アンタ今私の心臓を使ってるわね?」
 
 クララの服のざっくり空いた胸元は、くっきりとした谷間が見え影を作っている。目に毒なくらいに瑞々しい肌は惜しげもなく晒され、どうぞ見てくださいとばかりに胸元を強調するネックレスを付けている。
 前に会った時はもうすこし控えめだった気がするが、今はそういう気分なんだろう。

 人の心臓を使うなんて信じられないが、目の前に確固たる証拠がある。
 魔女であるクララに心臓が宿っているのは、奇異な事だ。
 それが自分の心臓でないならなおさら。

「自分の心臓はどうしたのよ」

 わざわざレーシーのものを使わなくとも、自分のものを使えばいい。一歩クララに近づいたレーシーを目を細めて眺めながら、クララは軽快に後ろへ下がる。

「大丈夫。私のはちゃあんと安全な場所に隠してあるから」

「じゃぁなんで……」

 わざわざ必要のない心臓を身体に付けている?
 
 自分の心臓があるならわざわざレーシーの心臓を使わずとも生きていけるではないか。

 レーシーはわけがわからずに、クララを見つめて首を傾げた。さら、と髪が肩から落ちていくのをクララの瞳が見ている。

「今日これから、一人の人間が私を殺しに来るの」

 クララは、くすくすと心底おかしそうに声を立てながらレーシーに話をする。
 ゾッとするような可憐さに毒をふんだんに含んだ歪みのある笑顔は、レーシーにとっては懐かしさすら感じるものだ。
 
「ハ? なに言ってんの?」

 突然話をされてもまったく意味がわからない。
 レーシーは間抜けな顔を隠しもせず、クララに呆れ返った言葉を返した。

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...