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「まぁよく知らん男に嫁ぐのは怖いよな」
孝之介は、さわさわと寺の中を風が通っていくのを耳で聞く。
今日はからっと乾燥した風だ。
さぞかし洗濯物もよく乾くだろう。寺のすぐ近くには洗濯物人が何本かあるため、風に乗って洗濯物を干している女たちの声が小さく聴こえている。
女の場合は嫁ぐ先のこともわからずにその家には上がって仕舞えばそうやすやすと抜け出すことまで叶わない。
子供が出来るまでは子供を産めと言われ続けら子供が出来れば子供の面倒を見ながら仕事をして、飯を炊き旦那の機嫌をとりながら夜の相手までしてやらねばならないのだから、少しでも性格の良い旦那、稼ぎの良い旦那、姑が優しい旦那をと望むのは当たり前であろう。
外面のいい暴力男というのは一定数存在するし、酒浸りになって仕事をしなくなる男というのも残念ながら割と良く見かけるのだ。
嫁ぎ先の家の内情など、懇意にしている人間同士でさえもわかりにくいというのに一目惚れで結婚して欲しいといきなり尋ねてくるその横暴さや自分勝手さは既に結婚してからが大変そうだと予期できる。
しかも年が離れている。
その年になるまで嫁を取らなかったのはなぜなのか、と考えれば自ずと答えは出るだろう。
いや、世の中にはいろんな理由で嫁をもらうのが遅れたというものもいるだろうが美知子に求婚してきた男の場合は、病弱や、金銭的な問題ではなかろう。
病弱とは程遠い、がっしりとした骨太の男であったらしいし、茶屋で金を落として行くぐらいには裕福そうだ。
とすれば、姑か本人の性格によるものである可能性が高い。
姑の嫁いびりというのは壮絶なのだと言うのを孝之介は母より聞いたことがあった。
いや、母は姑にいびられていたわけではない。
孝之介の家は道場であるため、そういった噂話が集まるのである。
孝之介の祖母はどちらかといえばおっとりとしすぎた良家の箱入り娘をそのまま品よく年を取らせたようなふわふわしたお方である。
美知子はまだ若い。
それに実家の茶屋も繁盛しているのだ。
もっと年齢に合った男との良い縁談がくるだろう。
「そんなん当たり前やろ。しかも結構おっさんのそんなに好きな顔でも無い男やで。最悪以外のなにがあるん」
美知子は「大体おっさんはくさいし好かかんねん」などど元も子もないことを言って顔を歪めた。
なるほど、美知子は年上趣味ではないらしい。
しかも見知った人間のほうが良いのか。
孝之介はにわかに調子づいて、石階段に座った美知子の頭をぐいぐいと撫でた。
美知子の髪は一本一本が健康で太い。
「もうっ、髪型崩れるわ、やめぇ」
孝之介が手を伸ばす前からすでに後れ毛が出ているがそれでも美知子は髪がそれ以上崩れるのを嫌がり、孝之介の手の甲をべしっと叩いてはたき落とした。
「痛いな。いきなり叩くなよ」
さっと手を引っ込めた孝之介は、叩かれた手の甲を慰めるごとくさする。
「それをいうならいきなり頭触んな、やで。軽々しく女の頭撫でるのは良くないと思いまーす」
美知子は、言ってぷいっと目を背けた。
孝之介は、さわさわと寺の中を風が通っていくのを耳で聞く。
今日はからっと乾燥した風だ。
さぞかし洗濯物もよく乾くだろう。寺のすぐ近くには洗濯物人が何本かあるため、風に乗って洗濯物を干している女たちの声が小さく聴こえている。
女の場合は嫁ぐ先のこともわからずにその家には上がって仕舞えばそうやすやすと抜け出すことまで叶わない。
子供が出来るまでは子供を産めと言われ続けら子供が出来れば子供の面倒を見ながら仕事をして、飯を炊き旦那の機嫌をとりながら夜の相手までしてやらねばならないのだから、少しでも性格の良い旦那、稼ぎの良い旦那、姑が優しい旦那をと望むのは当たり前であろう。
外面のいい暴力男というのは一定数存在するし、酒浸りになって仕事をしなくなる男というのも残念ながら割と良く見かけるのだ。
嫁ぎ先の家の内情など、懇意にしている人間同士でさえもわかりにくいというのに一目惚れで結婚して欲しいといきなり尋ねてくるその横暴さや自分勝手さは既に結婚してからが大変そうだと予期できる。
しかも年が離れている。
その年になるまで嫁を取らなかったのはなぜなのか、と考えれば自ずと答えは出るだろう。
いや、世の中にはいろんな理由で嫁をもらうのが遅れたというものもいるだろうが美知子に求婚してきた男の場合は、病弱や、金銭的な問題ではなかろう。
病弱とは程遠い、がっしりとした骨太の男であったらしいし、茶屋で金を落として行くぐらいには裕福そうだ。
とすれば、姑か本人の性格によるものである可能性が高い。
姑の嫁いびりというのは壮絶なのだと言うのを孝之介は母より聞いたことがあった。
いや、母は姑にいびられていたわけではない。
孝之介の家は道場であるため、そういった噂話が集まるのである。
孝之介の祖母はどちらかといえばおっとりとしすぎた良家の箱入り娘をそのまま品よく年を取らせたようなふわふわしたお方である。
美知子はまだ若い。
それに実家の茶屋も繁盛しているのだ。
もっと年齢に合った男との良い縁談がくるだろう。
「そんなん当たり前やろ。しかも結構おっさんのそんなに好きな顔でも無い男やで。最悪以外のなにがあるん」
美知子は「大体おっさんはくさいし好かかんねん」などど元も子もないことを言って顔を歪めた。
なるほど、美知子は年上趣味ではないらしい。
しかも見知った人間のほうが良いのか。
孝之介はにわかに調子づいて、石階段に座った美知子の頭をぐいぐいと撫でた。
美知子の髪は一本一本が健康で太い。
「もうっ、髪型崩れるわ、やめぇ」
孝之介が手を伸ばす前からすでに後れ毛が出ているがそれでも美知子は髪がそれ以上崩れるのを嫌がり、孝之介の手の甲をべしっと叩いてはたき落とした。
「痛いな。いきなり叩くなよ」
さっと手を引っ込めた孝之介は、叩かれた手の甲を慰めるごとくさする。
「それをいうならいきなり頭触んな、やで。軽々しく女の頭撫でるのは良くないと思いまーす」
美知子は、言ってぷいっと目を背けた。
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