怪異退治はアクマでゴリ押し

染西 乱

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あまり目立つ容姿の悪魔じゃなければいい、と思ったサイリの希望はすぐに砕け散った。
悪魔召喚機が呼び出したのは、双頭の獣の姿をした悪魔だった。
ごわごわとした硬そうな毛並みと、金色の細い瞳孔を埋め込んだような理知的な瞳が、サイリを見る。
それも大人5人ほどならば易々と背に乗れてしまいそうながっしりとした体躯をもった大型のものだ。大きな手足でしなやかにその場に立ち、警戒するように辺りをぐるりとあたりに視線をやっている。
この悪魔もサイリにとっては見慣れた馴染みのある悪魔である。
ぐるる、と獣らしく喉を鳴らして威嚇するようにして挨拶を済ませたらしい悪魔はその牙を見せつけながら地面を蹴ると、近くにいたほんのちいさな雑魚悪魔を丸呑みにしてしまう。
恐れをなして交差点に散らばっていた何匹かの悪魔を軽々と追い詰めて、大きな前足で小さな悪魔を押さえつけて踏み潰したり、鋭い鉤爪でもって引き裂いたりしている。
遊んでいるんだろう。
サイリから見ても、呼び出した双頭の魔物はこの場の悪魔よりも数段強い。
交差点を行き交う人々の突き刺さるような視線を感じて、サイリは慌てて双頭の悪魔に還ってくれるように言う。まだまだ悪魔を使ったこの仕事への理解は乏しい。
中には怯えたようにこちらを見つめて踵を返す人もいる。
双頭の悪魔は、おもしろくないとでもいいたげにふす、と鼻から息を吐いた。
サイリの前までよってくると、ぐいぐいと頭を寄せてくるのでどうすべきかわからないながらに、頭を撫でる。
この悪魔は見かけよりもやわらかな毛並みをしているのだ。

「えーと。はいはい、いつもありがとうね」

お礼を言って、帰ってもらうとサイリの様子を観察していたコヨミ様が口を開いた。

「いつも、というのはどういうことだ? 呼び出す悪魔はいつも同じ悪魔なのか?」

「はぁ、たぶんそうですね。大体5種類ぐらいの悪魔が入れ替わり立ち替わりって感じですけど……」

「ほぉ、そうか……不思議だな」

コヨミ様は考えるように軽く握った拳を口の近くに置き、首を傾げた。

「コヨミ様は違うんですか?」

サイリは今まだ近くに《比較対象》がいなかなったため、悪魔召喚に関しての知識はずぶの素人と同じだ。

「私の場合は召喚する際にはきちんとどの悪魔を呼ぶか決めている」

「へぇ、そんなことができるんですか。もしかして今……ちょっと場違いに強すぎる悪魔呼んじゃいましたか?」

「別に……強い分には困らないからかまわない。基本的に強い悪魔を使役するとそれなりに疲れるものだが、お前は平気なようだしな」

「さて、初仕事はうまくいったな」

コヨミ様が珍しく唇を微笑みの形にしている。
非常に上品な笑みだ。

サイリはほっと息を吐き、いつも通りにごった返す雑踏を見た。

「うまくいってよかったです」





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