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52 お守り
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コヨミ様の執務室へと入ったサイリは壁にかけられている時計を真っ先に見る。
ふむ、ちょうど今日の業務がおわる頃合いだ。
少し前を見ると、コヨミ様も同じように時計を注視していたので、「先に失礼しますね、お疲れ様です」と言って、もう帰りますアピールをする。
今日もきちんとやり遂げた。偉い。
家に帰ってごはんを作らなければと頭の中で献立を立てはじめる。今日はお豆腐屋さんが安い日だから帰りに寄って帰って冷やっこにでもして、適当に肉と野菜を炒めればいいか……味噌汁はいつものように自家栽培しているネギでも入れておけばいい。
コヨミ様が頷いたのを見るやいやサイリは素早く動き、部屋から出ようとする。
「……サイリ、少し待て」
颯爽と部屋を後にしようとしたサイリはコヨミに呼び止められて足を止めた。
なんだろ、伝達事項があったのかな。
呼ばれれば帰るしかない。
回れ右してコヨミ様の机の前に戻ってきた。
コヨミ様は机の1番上の引き出しから、なにかを取り出した。
「……手を出せ」
「はぁ、手ですか」
言われるがまま何も考えずに手を差し出したサイリの手はコヨミ様に軽く押さえられ、手のひらを上にされる。
「近頃きなくさいからな……お守りがわりだ」
「え?」
サイリの手のひらに置かれたものは紐だった。
骨ばっているのにどこか優美なコヨミ指の白さと、紐の鮮やかな朱色を見てサイリは固まった。
神社の鳥居のような鮮やかな朱色の紐は、今サイリが使っているような太めのしっかりしたもので、左右の切れ端には美しい蛍石がついている。
「お守り、ですか」
こんなにかわいいのに。
サイリの知っているお守りといえば布袋に紙が入っているものだけだ。
「お守りらしいお守りもいいが、相手に気づかれてなんらかの対策を取られると面倒だからな……こんかいは《おまもりらしからぬ》ものにしてある。お前の場合はいつも髪を結っている紐にしておいた」
説明口調になって早口気味のコヨミ様にサイリはにこにことした心からの笑顔を向ける。
「ヘェ~! ありがとうございます! かわいいし今の紐より絶対上等じゃないですか、明日からつけてきますね!」
いかにも上機嫌になったサイリは紐の端についている蛍石をうっとりと眺めた。
濃い群青のなかに水色黄色、はたまた金色や銀色に見える澱が詰まっている。
蛍石って初めてみた。
「大事にしますね」
ふむ、ちょうど今日の業務がおわる頃合いだ。
少し前を見ると、コヨミ様も同じように時計を注視していたので、「先に失礼しますね、お疲れ様です」と言って、もう帰りますアピールをする。
今日もきちんとやり遂げた。偉い。
家に帰ってごはんを作らなければと頭の中で献立を立てはじめる。今日はお豆腐屋さんが安い日だから帰りに寄って帰って冷やっこにでもして、適当に肉と野菜を炒めればいいか……味噌汁はいつものように自家栽培しているネギでも入れておけばいい。
コヨミ様が頷いたのを見るやいやサイリは素早く動き、部屋から出ようとする。
「……サイリ、少し待て」
颯爽と部屋を後にしようとしたサイリはコヨミに呼び止められて足を止めた。
なんだろ、伝達事項があったのかな。
呼ばれれば帰るしかない。
回れ右してコヨミ様の机の前に戻ってきた。
コヨミ様は机の1番上の引き出しから、なにかを取り出した。
「……手を出せ」
「はぁ、手ですか」
言われるがまま何も考えずに手を差し出したサイリの手はコヨミ様に軽く押さえられ、手のひらを上にされる。
「近頃きなくさいからな……お守りがわりだ」
「え?」
サイリの手のひらに置かれたものは紐だった。
骨ばっているのにどこか優美なコヨミ指の白さと、紐の鮮やかな朱色を見てサイリは固まった。
神社の鳥居のような鮮やかな朱色の紐は、今サイリが使っているような太めのしっかりしたもので、左右の切れ端には美しい蛍石がついている。
「お守り、ですか」
こんなにかわいいのに。
サイリの知っているお守りといえば布袋に紙が入っているものだけだ。
「お守りらしいお守りもいいが、相手に気づかれてなんらかの対策を取られると面倒だからな……こんかいは《おまもりらしからぬ》ものにしてある。お前の場合はいつも髪を結っている紐にしておいた」
説明口調になって早口気味のコヨミ様にサイリはにこにことした心からの笑顔を向ける。
「ヘェ~! ありがとうございます! かわいいし今の紐より絶対上等じゃないですか、明日からつけてきますね!」
いかにも上機嫌になったサイリは紐の端についている蛍石をうっとりと眺めた。
濃い群青のなかに水色黄色、はたまた金色や銀色に見える澱が詰まっている。
蛍石って初めてみた。
「大事にしますね」
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