朝になれば同級生なんか他人だからさ

染西 乱

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「こんなところでバイトしてたのか」

中学の時の面影のままの男が立っていた。あいかわらず背が低い。女としても背が低めの私よりわずかに高いぐらいということは男としてはかなり背が低い方だろう。太めのジーパンを履いていて余計に背が低く見える。が脚がとてつもなく短く見えるが本人はおしゃれしているつもりだろうなと思った。なんだか滑稽だと真顔になる。
今までも知り合いが客として来ていたことはあったが、声をかけられたのは初めてだ。同級はAVを借りていることが後ろめたいのか、皆一様にしらんぷりを決め込んでいた。しかし登録されている名前を見ると完全に同級生だった。
別にこちらはAVをかりるぐらいなんとも思わないのに、不思議だ。それともこちらが知らんぷりしているから向こうも同じようにしていただけか。
同級生の名前など忘れたと思っていたが、案外あっさりとそいつの名前は頭に浮かんだ。
確か西田という名前だ。
私の名前は胸元についた名札でわかるだろう。

「あぁ、うん……」

私はめんどくささに閉口した。なんで仲良くもないのに話しかけてくるんだよ。
昔からダウナーな感じはあったので、自分のテンションが低くても相手は気にしないだろう。しかもバイト中で、大っぴらに私語するわけにもいかない。
昔は三軍ぐらいの位置にいたそいつは、やけに自信に溢れている。おおかた大学生になって彼女でも出来て自信でもつけたのか。
話し方もどこか押し付けがましく、陽気な雰囲気を出している。
何をいきがってんだ、おまえは三軍だろ、という気持ちのまま、私は仕事中だからという感じで、当たり障りのない態度を取った。懐かしいとは感じさえすれ、どうでもいいと思っていたからだ。

中学時に仲良くしていた友達とも一切連絡を取っていない。結果からいえば、彼女たちは友達ではなく、学校の中で一緒に行動することの多い同級生ぐらいの感じだった。
なんといえばいいのか、自分にとって小学中学の思い出は、かなり優先順位の低いものと成り果てていた。

高校の友達もいれば、大学の友達もいる。

自分の偏差値、価値基準に合った友達と話すのは心底楽しい。それなりに楽しかったつもりだが、小中学校の時にはかなり無理をしていた気さえしてくる。

いや、しかし私の認識のせいかもしれないと思う。
卒業してから5年経っている。今話せば皆成熟した精神の元、気の合う友達になれるかもしれないなどと思う。

要は小中の知り合いを全員切っているが故の罪悪感といえばいいのか、仲の良かったはずの友達と一人もつながっていないことへの後ろめたさみたいなものが存在していた私は同窓会に行ってみることにした。
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