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一緒に来た元親友はなんかこう当たり障りなく過ごしているようだ。
隣のストライプ男は、浪人生とかなり仲が良かったし、たぶん幼馴染っぽかったから浪人生の付き合いで来たんだろう。
困り眉を下げた縦ストライプからは、性的な視線は感じなかった。
この縦ストライプ男に関して私は強烈に残っている記憶があり、その記憶を思い出すたびに羞恥心が芽生える。
縦ストライプ男は「池内」という名前で、クラスのほとんどが彼のことをあだ名で呼んでいた。
私も意を決して彼をあだ名で呼ぶぞ! と意気込んで「えー、と、いっくん……」と呼んだところ、後ろの席からそれを見ていた浪人男が「いっくんじゃないぞ! いっけんだ、いっけん!」とどでかい声で否定した。初めて彼のあだ名を呼んでみたつもりの私は恥入った。池をもじって読んでたのか、そんなのわかるわけない。みんないっくんと呼んでると思っていた。
浪人生と私は低学年まで仲がよかった。算数の点数で競ったり、かけっこのタイムで競ったりして切磋琢磨していた。今思えばあれは浪人男の嫉妬も含んでいたのかもしれない。なにもあんな大きな声で私と池内の会話にカットインしてこなくてもよさそうなものだからだ。
私はあだ名を呼んで彼と仲良くしようとした気持ちを見透かされたようになり、恥ずかしくて、二度と彼のあだ名を呼ぼうとはしなかったし、彼に感じていた微かな好意は羞恥心に負けた。それから彼と仲良くなろうと言う気持ちは一切芽生えなかった。優男そのものの下がった眉と、垂れ目と、ゆっくりとした速度の話し方で、明らかに引っ込み思案だった。
その呼び方間違ってる! と指摘したのは彼ではなかったが、彼もただ困ったような顔をしていただけなので同罪だと思った。
なんかいえよ。
私は恥をかかされた。
今このエセ同窓会でも彼は《いっけん》と呼ばれているが、頑なに私は池内と呼ぶ。
絶対死んでもあだ名で呼ぶことはない。
時間制だったので、2時間経ってようやくお開きになった。他のメンバーは何にも思うところはなかったのか、せっかくだからカラオケに行こうと言っていて、親友(仮)は行きたいらしく、私も一緒に行こうよと誘ってくる。
私は最悪な同窓会だが親友(仮)に最後まで付き合おうというつもりでいたから、カラオケ店へと移動する一団に着いて行く。が、歩いているうちにどっと虚無が押し寄せて来て、なんでこんなやつらと一緒にカラオケなんてしなくちゃいけないんだ、という気持ちが強くなった。
ガヤガヤと歩いている一団の背に向かって「やっぱり帰るわ!!」と大きな声で叫ぶと、踵を返して反対方向へ走った。ヒール低めの走りやすい編み上げサンダルを履いて来てよかった。ピンヒールのミュールなど履いていたら目も当てられない。
「え?」「なに?」とかいう親友(仮)の声が聞こえた気もしたがこの虚無のままで行っても楽しくないに決まっている。帰って家でテレビでも見た方がまだましだ。
つけてきていた緑の盤面の腕時計を見る。可愛いだけで時間を読みにくいのが難点だが、その読みにくさ含めて気に入っている時計だ。
脳内で家まで帰るシミュレーションをした私は、あることに気付いてはっとする。ヤバい。
隣のストライプ男は、浪人生とかなり仲が良かったし、たぶん幼馴染っぽかったから浪人生の付き合いで来たんだろう。
困り眉を下げた縦ストライプからは、性的な視線は感じなかった。
この縦ストライプ男に関して私は強烈に残っている記憶があり、その記憶を思い出すたびに羞恥心が芽生える。
縦ストライプ男は「池内」という名前で、クラスのほとんどが彼のことをあだ名で呼んでいた。
私も意を決して彼をあだ名で呼ぶぞ! と意気込んで「えー、と、いっくん……」と呼んだところ、後ろの席からそれを見ていた浪人男が「いっくんじゃないぞ! いっけんだ、いっけん!」とどでかい声で否定した。初めて彼のあだ名を呼んでみたつもりの私は恥入った。池をもじって読んでたのか、そんなのわかるわけない。みんないっくんと呼んでると思っていた。
浪人生と私は低学年まで仲がよかった。算数の点数で競ったり、かけっこのタイムで競ったりして切磋琢磨していた。今思えばあれは浪人男の嫉妬も含んでいたのかもしれない。なにもあんな大きな声で私と池内の会話にカットインしてこなくてもよさそうなものだからだ。
私はあだ名を呼んで彼と仲良くしようとした気持ちを見透かされたようになり、恥ずかしくて、二度と彼のあだ名を呼ぼうとはしなかったし、彼に感じていた微かな好意は羞恥心に負けた。それから彼と仲良くなろうと言う気持ちは一切芽生えなかった。優男そのものの下がった眉と、垂れ目と、ゆっくりとした速度の話し方で、明らかに引っ込み思案だった。
その呼び方間違ってる! と指摘したのは彼ではなかったが、彼もただ困ったような顔をしていただけなので同罪だと思った。
なんかいえよ。
私は恥をかかされた。
今このエセ同窓会でも彼は《いっけん》と呼ばれているが、頑なに私は池内と呼ぶ。
絶対死んでもあだ名で呼ぶことはない。
時間制だったので、2時間経ってようやくお開きになった。他のメンバーは何にも思うところはなかったのか、せっかくだからカラオケに行こうと言っていて、親友(仮)は行きたいらしく、私も一緒に行こうよと誘ってくる。
私は最悪な同窓会だが親友(仮)に最後まで付き合おうというつもりでいたから、カラオケ店へと移動する一団に着いて行く。が、歩いているうちにどっと虚無が押し寄せて来て、なんでこんなやつらと一緒にカラオケなんてしなくちゃいけないんだ、という気持ちが強くなった。
ガヤガヤと歩いている一団の背に向かって「やっぱり帰るわ!!」と大きな声で叫ぶと、踵を返して反対方向へ走った。ヒール低めの走りやすい編み上げサンダルを履いて来てよかった。ピンヒールのミュールなど履いていたら目も当てられない。
「え?」「なに?」とかいう親友(仮)の声が聞こえた気もしたがこの虚無のままで行っても楽しくないに決まっている。帰って家でテレビでも見た方がまだましだ。
つけてきていた緑の盤面の腕時計を見る。可愛いだけで時間を読みにくいのが難点だが、その読みにくさ含めて気に入っている時計だ。
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