【完結】朝になれば同級生なんか他人だからさ

染西 乱

文字の大きさ
7 / 44

7-

一緒に来た元親友はなんかこう当たり障りなく過ごしているようだ。
隣のストライプ男は、浪人生とかなり仲が良かったし、たぶん幼馴染っぽかったから浪人生の付き合いで来たんだろう。
困り眉を下げた縦ストライプからは、性的な視線は感じなかった。
この縦ストライプ男に関して私は強烈に残っている記憶があり、その記憶を思い出すたびに羞恥心が芽生える。
縦ストライプ男は「池内」という名前で、クラスのほとんどが彼のことをあだ名で呼んでいた。
私も意を決して彼をあだ名で呼ぶぞ! と意気込んで「えー、と、いっくん……」と呼んだところ、後ろの席からそれを見ていた浪人男が「いっくんじゃないぞ! いっけんだ、いっけん!」とどでかい声で否定した。初めて彼のあだ名を呼んでみたつもりの私は恥入った。池をもじって読んでたのか、そんなのわかるわけない。みんないっくんと呼んでると思っていた。
浪人生と私は低学年まで仲がよかった。算数の点数で競ったり、かけっこのタイムで競ったりして切磋琢磨していた。今思えばあれは浪人男の嫉妬も含んでいたのかもしれない。なにもあんな大きな声で私と池内の会話にカットインしてこなくてもよさそうなものだからだ。
私はあだ名を呼んで彼と仲良くしようとした気持ちを見透かされたようになり、恥ずかしくて、二度と彼のあだ名を呼ぼうとはしなかったし、彼に感じていた微かな好意は羞恥心に負けた。それから彼と仲良くなろうと言う気持ちは一切芽生えなかった。優男そのものの下がった眉と、垂れ目と、ゆっくりとした速度の話し方で、明らかに引っ込み思案だった。
その呼び方間違ってる! と指摘したのは彼ではなかったが、彼もただ困ったような顔をしていただけなので同罪だと思った。
なんかいえよ。
私は恥をかかされた。
今このエセ同窓会でも彼は《いっけん》と呼ばれているが、頑なに私は池内と呼ぶ。
絶対死んでもあだ名で呼ぶことはない。
時間制だったので、2時間経ってようやくお開きになった。他のメンバーは何にも思うところはなかったのか、せっかくだからカラオケに行こうと言っていて、親友(仮)は行きたいらしく、私も一緒に行こうよと誘ってくる。
私は最悪な同窓会だが親友(仮)に最後まで付き合おうというつもりでいたから、カラオケ店へと移動する一団に着いて行く。が、歩いているうちにどっと虚無が押し寄せて来て、なんでこんなやつらと一緒にカラオケなんてしなくちゃいけないんだ、という気持ちが強くなった。
ガヤガヤと歩いている一団の背に向かって「やっぱり帰るわ!!」と大きな声で叫ぶと、踵を返して反対方向へ走った。ヒール低めの走りやすい編み上げサンダルを履いて来てよかった。ピンヒールのミュールなど履いていたら目も当てられない。
「え?」「なに?」とかいう親友(仮)の声が聞こえた気もしたがこの虚無のままで行っても楽しくないに決まっている。帰って家でテレビでも見た方がまだましだ。
つけてきていた緑の盤面の腕時計を見る。可愛いだけで時間を読みにくいのが難点だが、その読みにくさ含めて気に入っている時計だ。
脳内で家まで帰るシミュレーションをした私は、あることに気付いてはっとする。ヤバい。
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。