【完結】朝になれば同級生なんか他人だからさ

染西 乱

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別になにも聞いていないのに、池内は必死になって言い訳をしている。
焦りが出ているのか身振り手振りが大きい。
私はあのいつもおっとりとした池内が焦って早口で言い訳をしていることに驚く。大抵のことにはぼんやり笑っているだけで、自分の意見なんてほとんどなく、主張することも、なんなら大人数になるとほぼ言葉を発することすらもない事なかれ主義の極まった池内が……。


私は手に持ったコンドームの箱と池内を交互に見る。
このサイズLというのは大きさだよなと思い、思わず池内の股間を見る。
ふむ、Lっていうのは大きいのか? 
Lという響きからすれば大きそうではある。
それとも普通サイズはL表記で、Mサイズが小さい人という、男の心を守るようなサイズ設定なのかな、などと考える。
池内は私がなにも言わずにコンドームの箱を見て黙りこくっているからか、所在なげにそわそわもそもそ身体を動かしてて心の平穏を保とうとしているようだ。池内の優しそうな顔はお酒を飲んだ時よりも真っ赤で、耳まで赤くなってしまっている。

……池内にも《性欲》ってあったんだなと当たり前のことにも驚いた。
今日の同窓会だってそんなの興味ありませんって顔していたくせに?
浪人男と仲が良いのに、浪人男の彼女ほしい! という欲望の声に賛同するわけでもなく、ただいつもどおりほんのり微笑みながら唐揚げをつまんでいたくせに。

いや、待てよ?
もしかしたら彼女は別に欲しくないのかもしれない。
執着の薄そうな男だし、ただ経験としてそれをしてみたいのでは?
かくいう私もセックスはしたことがないので、経験として興味はある。気持ちいいのか、痛いのか。
目の前の池内ならば、今後気まずくなって生活に支障をきたすこともないし、身元もしっかりしていて、なんなら実家の場所までわかっているし、中学まで同じ学校に通っていたので、うすぼんやりと人となりはわかっている。
この条件は池内にとっての私としてみても同じことだ。いわゆるワンナイト一夜限りの経験値稼ぎにはまたとないシチュエーションだ。
例えるならゴールドモンスター的な感じ……

私は西田の彼女のことを思い出す。なるほどあの子が西田を彼氏にしたのも似たような条件を鑑みてのことかもしれない。

「これ、使いたい?」

私は気を取り直して、お茶を取り出してコップに継ぎ足した。透明なグラスはたちまちお茶で満たされて、薄緑色になる。

「え?」

池内はなにを聞かれたのかわからないという様子でぽかんとしている。
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