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二十九.離れられない
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本当は、寂しいと思っていた。
別れることを前提で恋人になったのだから、少しずつ覚悟をしておけばその時がきてもきっと平気だと、大和は自分に言い聞かせてきた。
だが、悠仁は大和の覚悟を揺らがせることを言う。
大和が少しずつ積み上げていた覚悟を、簡単に崩そうとする。
恋人になった時とは状況が違う。今度は、結婚だ。お互いだけの問題ではないから、今度こそダメだ。
それなのに一度蜜の味を知ってしまうと、行っては捕まると分かっているのに、甘い罠に引き寄せられる虫のごとく、大和は誘惑に誘われてしまう。
「大丈夫。俺は兄さんのものだから」
大和の柔らかな髪を梳きながら、悠仁が微笑む。
それを恋人に言うなら普通は、兄さんは俺のもの、ではないのだろうか。
少しずつ近づいてくる悠仁の顔を見ながら、大和は思った。そんなところが、悠仁らしいといえばそうなのだが。
キスされるのかと思ったら、悠仁の唇は大和の頬に触れた。正確には、悠仁が好きな泣きボクロにだ。一度離れた後、体ごと近づけられて抱き締められる。
腰に硬いものが当たり、大和はぎくりとした。
「ゆ、悠仁」
今度は唇にキスをされ、そのまま咥内を愛撫される。
腰を擦り付けるように動かす悠仁に、大和は焦る。
「おい、何硬くしてんだっ」
「兄さんがそんな顔見せるから、欲情した」
俺のせいかよ、と大和は内心で文句を言う。
「今日はもうしないからな」
さっきまで愛されて体は疲れている。これ以上されると身がもたない。
大和は悠仁を突っぱねようとするが、悠仁は意にも介さない。
「もうこんなになったから無理」
悠仁は大和の手を掴むと、自身へ触れさせる。そこはすでに半勃ちどころか、しっかりと硬さをもっていた。
「さっき、俺の体のことも考えろって言ったばかりだろ。口でしてやるから」
大和の提案に、一瞬だけ悠仁は考える。
「口もいいけど、兄さんにぎゅうってされたい」
悠仁は、甘える弟の顔になる。自分の我儘が許されると分かっている顔だ。
抱き締める意味なら良いが、悠仁の言う意味は違う。
その気にならない大和に焦れたように、悠仁の手が大和の奥へと伸ばされる。まだ柔らかく解れたままのその場所は、簡単に悠仁の指を受け入れた。
「ちょっ…、や、やめ……」
「ね、少しだけだから」
悠仁の指によって、慣らされてしまった大和の体にいとも簡単に火が付く。
「あ、あっ…、も、擦んな…っ」
するつもりがないのに、指で擦るぐらいじゃなくもっと強い刺激が欲しいと、大和の腰は揺れてしまう。
すっかり抱かれ慣れた、自分の体が憎い。そして、弟を甘やかしてしまうことにも。
「兄さん、もっと可愛い声聞かせて」
両手をシーツの上に縫い留められ、指を一本一本絡ませられる。
キスをしながら、ゆっくりと悠仁が大和の中に入ってくる。大和は抵抗を諦め、悠仁が絡めてくる指に指を絡めた。
「んっ、あ……あっ」
大和は悠仁に突かれるたびに、悠仁の満足する甘い声を漏らした。
弟に溺れすぎている自分が怖い。
もしいつか、悠仁が大和への気持ちを失せてしまったら、大和はどうなってしまうのだろう。
悠仁は、まだ家族という拠り所がある。
けれど、年齢を重ねてもう新たな恋人を作れないような年齢になっていたら、大和はたった一人で放り出されてしまう。
別れるなら、悠仁の結婚のタイミングしかない。
それなのに、大和は悠仁から離れる最後の機会を失ってしまった。
「はぁっ、あ、……んっんん」
唇を塞がれ、腰をガクガクと揺さぶられる。大和は悠仁の指を強く握った。
「あっ、も……イ、クっ…! あ、あっ」
「兄…さん……っ」
悠仁が小さく呻き、達する。大和も体を弛緩させた。
すでに十分愛し合った後で、ぽたりと透明な雫が腹に零れただけだった。
「はぁ…。兄さん……」
まだ大和の中に入ったまま、悠仁が大和にキスをする。呼吸が乱れて、大和はキスに応じることすらできない。かろうじて唇だけが触れる。
中に入ったままの悠仁の熱さを感じながら、そういえばさっき終わった時にゴムを外してそのままだったんじゃ、とぼんやり大和は考えた。
中で出すなと言ってるのに、悠仁は夢中なあまり時々忘れてしまうのが困る。
「兄さん。俺から離れられると思ったら、大間違いだから。俺が兄さんを離すわけないから」
大和を見つめ、悠仁が静かに告げる。
「もし兄さんが、俺に飽きたとしたら……。俺は兄さんが感じてる負い目を利用して、兄さんを傍にいさせるから」
愛し合った直後に、怖いことを言う。
大和は悠仁を見上げた。
むしろ、飽きるのは悠仁の方かもしれないのに。
でも今は、そんないつ訪れるのかも分からないことを語るだけ、無駄だと思った。
別れることを前提で恋人になったのだから、少しずつ覚悟をしておけばその時がきてもきっと平気だと、大和は自分に言い聞かせてきた。
だが、悠仁は大和の覚悟を揺らがせることを言う。
大和が少しずつ積み上げていた覚悟を、簡単に崩そうとする。
恋人になった時とは状況が違う。今度は、結婚だ。お互いだけの問題ではないから、今度こそダメだ。
それなのに一度蜜の味を知ってしまうと、行っては捕まると分かっているのに、甘い罠に引き寄せられる虫のごとく、大和は誘惑に誘われてしまう。
「大丈夫。俺は兄さんのものだから」
大和の柔らかな髪を梳きながら、悠仁が微笑む。
それを恋人に言うなら普通は、兄さんは俺のもの、ではないのだろうか。
少しずつ近づいてくる悠仁の顔を見ながら、大和は思った。そんなところが、悠仁らしいといえばそうなのだが。
キスされるのかと思ったら、悠仁の唇は大和の頬に触れた。正確には、悠仁が好きな泣きボクロにだ。一度離れた後、体ごと近づけられて抱き締められる。
腰に硬いものが当たり、大和はぎくりとした。
「ゆ、悠仁」
今度は唇にキスをされ、そのまま咥内を愛撫される。
腰を擦り付けるように動かす悠仁に、大和は焦る。
「おい、何硬くしてんだっ」
「兄さんがそんな顔見せるから、欲情した」
俺のせいかよ、と大和は内心で文句を言う。
「今日はもうしないからな」
さっきまで愛されて体は疲れている。これ以上されると身がもたない。
大和は悠仁を突っぱねようとするが、悠仁は意にも介さない。
「もうこんなになったから無理」
悠仁は大和の手を掴むと、自身へ触れさせる。そこはすでに半勃ちどころか、しっかりと硬さをもっていた。
「さっき、俺の体のことも考えろって言ったばかりだろ。口でしてやるから」
大和の提案に、一瞬だけ悠仁は考える。
「口もいいけど、兄さんにぎゅうってされたい」
悠仁は、甘える弟の顔になる。自分の我儘が許されると分かっている顔だ。
抱き締める意味なら良いが、悠仁の言う意味は違う。
その気にならない大和に焦れたように、悠仁の手が大和の奥へと伸ばされる。まだ柔らかく解れたままのその場所は、簡単に悠仁の指を受け入れた。
「ちょっ…、や、やめ……」
「ね、少しだけだから」
悠仁の指によって、慣らされてしまった大和の体にいとも簡単に火が付く。
「あ、あっ…、も、擦んな…っ」
するつもりがないのに、指で擦るぐらいじゃなくもっと強い刺激が欲しいと、大和の腰は揺れてしまう。
すっかり抱かれ慣れた、自分の体が憎い。そして、弟を甘やかしてしまうことにも。
「兄さん、もっと可愛い声聞かせて」
両手をシーツの上に縫い留められ、指を一本一本絡ませられる。
キスをしながら、ゆっくりと悠仁が大和の中に入ってくる。大和は抵抗を諦め、悠仁が絡めてくる指に指を絡めた。
「んっ、あ……あっ」
大和は悠仁に突かれるたびに、悠仁の満足する甘い声を漏らした。
弟に溺れすぎている自分が怖い。
もしいつか、悠仁が大和への気持ちを失せてしまったら、大和はどうなってしまうのだろう。
悠仁は、まだ家族という拠り所がある。
けれど、年齢を重ねてもう新たな恋人を作れないような年齢になっていたら、大和はたった一人で放り出されてしまう。
別れるなら、悠仁の結婚のタイミングしかない。
それなのに、大和は悠仁から離れる最後の機会を失ってしまった。
「はぁっ、あ、……んっんん」
唇を塞がれ、腰をガクガクと揺さぶられる。大和は悠仁の指を強く握った。
「あっ、も……イ、クっ…! あ、あっ」
「兄…さん……っ」
悠仁が小さく呻き、達する。大和も体を弛緩させた。
すでに十分愛し合った後で、ぽたりと透明な雫が腹に零れただけだった。
「はぁ…。兄さん……」
まだ大和の中に入ったまま、悠仁が大和にキスをする。呼吸が乱れて、大和はキスに応じることすらできない。かろうじて唇だけが触れる。
中に入ったままの悠仁の熱さを感じながら、そういえばさっき終わった時にゴムを外してそのままだったんじゃ、とぼんやり大和は考えた。
中で出すなと言ってるのに、悠仁は夢中なあまり時々忘れてしまうのが困る。
「兄さん。俺から離れられると思ったら、大間違いだから。俺が兄さんを離すわけないから」
大和を見つめ、悠仁が静かに告げる。
「もし兄さんが、俺に飽きたとしたら……。俺は兄さんが感じてる負い目を利用して、兄さんを傍にいさせるから」
愛し合った直後に、怖いことを言う。
大和は悠仁を見上げた。
むしろ、飽きるのは悠仁の方かもしれないのに。
でも今は、そんないつ訪れるのかも分からないことを語るだけ、無駄だと思った。
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