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ケモノはシーツの上で啼く Ⅱ
9.欲情
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軟膏を塗った指が、斎賀の後孔に入った。
柴尾の行動に、斎賀がぎょっとする。慌てて、口を押えていた手を離した。
「な……っ? 何をしている!」
大きな声を出した斎賀に驚き、柴尾は入れた指を慌てて引き抜いた。
「あ、あのっ。男は尻でも気持ちいいんだそうです。前と尻と両方すれば、インバスの熱が早く落ち着くと思って……」
手助けのつもりだったが、余計なことをしてしまっただろうか。
「………」
斎賀は言葉を失ってしまった。
「馬鹿者。だからと言って、尻に指を入れる奴があるか」
溜め息交じりに呆れられた。
確かに、男なら尻に入れられるなど考えるはずもない。
せめて承諾を得るべきだった。斎賀もさぞ驚いたことだ。
「すみません。嫌でしたか」
「当たり前だ」
不満も露わな斎賀に、しゅんとする。
快感が倍になれば早く楽になれるので、名案だと思ったのに。
本当はもっと、全身を愛したい。
しかし、この行為の目的は斎賀をインバスの熱から解放することだ。余計な場所に触れるわけにはいかない。
直接刺激を与えれば一番早いが、その場所ばかり擦られていては薄い皮膚はたちまち根を上げてしまう。他と違って鍛えようのない場所なのだから。
それまでにインバスの熱が落ち着くと良いのだけれどと、斎賀の体を心配した。
「もし擦りすぎて痛くなってきたら、言って下さい」
当初の予定通り、柴尾は斎賀自身に指を絡めた。
口淫していて、斎賀がどの部分が弱いかということも熟知した。
天を向くそれを支えながらゆっくりと動かすと、労わるように優しく裏筋を舐め上げる。もう片方の手で、震える斎賀の太腿を優しく押さえた。
「ん……、っく」
引き締まった腹筋がひくひくと動く。斎賀は堪えるように、口を塞いでいない方の手でシーツを掴んだ。
これは絶対に、今夜の夢で再現してしまうに違いない。むしろ、今夜見る夢が楽しみで待ち遠しい。
斎賀が苦しんでいるというのに、そんなことを考えてしまう柴尾は酷い男だ。
「う……っ、……っ」
斎賀の体が震えて、また達する。
口から手を離すと、斎賀は息苦しそうに荒い息を繰り返した。
「斎賀様。少し休んだ方がいいですか?」
心配になって訊ねた。
早く楽にさせたいと立て続けに攻めていたが、声を出さないように口を塞ぎ続けていては、斎賀も苦しいはずだ。少し時間を置いた方が良い気もした。
それに、柴尾自身も一度熱を解放したい。
淫らな斎賀の姿に煽られ勃ったままなせいで、発散しきれない熱が零れっぱなしになっている。
「はふ……」
空気を求めながら、斎賀はゆっくりと頷いた。
「大丈夫ですか。苦しくないですか」
心配して訊ねると、小さく頷かれる。
何だか母親と小さな子供のやり取りのようで、少し微笑ましく感じた。こんな斎賀を見るのは貴重だ。
「僕、少しシャワー室をお借りします」
すぐに戻りますからね、と付け加える。
斎賀のことだから、柴尾が姿を消した瞬間にでも服を着そうな気がしたのだ。まだ続けるのだということを、宣言しておく。
予想通りだったのか、斎賀は少し嫌そうな表情をしてから顔を逸らした。
例えひと時でも斎賀から離れることを、惜しく思う。
しかし、さすがに斎賀の前で自らを慰めるわけにはいかない。
柴尾はベッドを揺らすと、床に足を付いた。
後ろ髪を引かれる思いでベッドを離れ、部屋に備え付けられたシャワー室の扉を開けようとした。
「柴尾……」
小さく斎賀に呼ばれた。
柴尾は急いでベッドに駆け寄った。
「どうされましたか?」
斎賀を覗き込むと、黙って柴尾を見上げた。その目は何故か、少し睨んでいる。
「お前、何を塗った……?」
柴尾はきょとんとした顔を返す。
塗ったものといえば、朱貴にもらった軟膏だけだ。
「軟膏のことですか?」
「………」
斎賀が唇をきゅっと噛んだ。
「潤滑油として使えると……聞いたの……ですが……」
説明しながら、斎賀の異変に気付く。
両膝を擦り合わせるようにして、何かを我慢しているような仕草だ。体を丸めるように横向けると、銀の尾がぱさっとシーツを叩く。
「え……?」
まさか、と嫌な予感がした。
柴尾は慌ててベッドの上に乗り上げた。斎賀の体の異変を確認しようと、横を向いて隠そうとしている斎賀の中心を凝視する。
「さ、斎賀様。まさか、今の軟膏にもインバスが……っ」
「……っ」
睨まれている理由が分かり、柴尾は青褪めた。
「す、すみません! 僕は何てことを……!」
柴尾の行動に、斎賀がぎょっとする。慌てて、口を押えていた手を離した。
「な……っ? 何をしている!」
大きな声を出した斎賀に驚き、柴尾は入れた指を慌てて引き抜いた。
「あ、あのっ。男は尻でも気持ちいいんだそうです。前と尻と両方すれば、インバスの熱が早く落ち着くと思って……」
手助けのつもりだったが、余計なことをしてしまっただろうか。
「………」
斎賀は言葉を失ってしまった。
「馬鹿者。だからと言って、尻に指を入れる奴があるか」
溜め息交じりに呆れられた。
確かに、男なら尻に入れられるなど考えるはずもない。
せめて承諾を得るべきだった。斎賀もさぞ驚いたことだ。
「すみません。嫌でしたか」
「当たり前だ」
不満も露わな斎賀に、しゅんとする。
快感が倍になれば早く楽になれるので、名案だと思ったのに。
本当はもっと、全身を愛したい。
しかし、この行為の目的は斎賀をインバスの熱から解放することだ。余計な場所に触れるわけにはいかない。
直接刺激を与えれば一番早いが、その場所ばかり擦られていては薄い皮膚はたちまち根を上げてしまう。他と違って鍛えようのない場所なのだから。
それまでにインバスの熱が落ち着くと良いのだけれどと、斎賀の体を心配した。
「もし擦りすぎて痛くなってきたら、言って下さい」
当初の予定通り、柴尾は斎賀自身に指を絡めた。
口淫していて、斎賀がどの部分が弱いかということも熟知した。
天を向くそれを支えながらゆっくりと動かすと、労わるように優しく裏筋を舐め上げる。もう片方の手で、震える斎賀の太腿を優しく押さえた。
「ん……、っく」
引き締まった腹筋がひくひくと動く。斎賀は堪えるように、口を塞いでいない方の手でシーツを掴んだ。
これは絶対に、今夜の夢で再現してしまうに違いない。むしろ、今夜見る夢が楽しみで待ち遠しい。
斎賀が苦しんでいるというのに、そんなことを考えてしまう柴尾は酷い男だ。
「う……っ、……っ」
斎賀の体が震えて、また達する。
口から手を離すと、斎賀は息苦しそうに荒い息を繰り返した。
「斎賀様。少し休んだ方がいいですか?」
心配になって訊ねた。
早く楽にさせたいと立て続けに攻めていたが、声を出さないように口を塞ぎ続けていては、斎賀も苦しいはずだ。少し時間を置いた方が良い気もした。
それに、柴尾自身も一度熱を解放したい。
淫らな斎賀の姿に煽られ勃ったままなせいで、発散しきれない熱が零れっぱなしになっている。
「はふ……」
空気を求めながら、斎賀はゆっくりと頷いた。
「大丈夫ですか。苦しくないですか」
心配して訊ねると、小さく頷かれる。
何だか母親と小さな子供のやり取りのようで、少し微笑ましく感じた。こんな斎賀を見るのは貴重だ。
「僕、少しシャワー室をお借りします」
すぐに戻りますからね、と付け加える。
斎賀のことだから、柴尾が姿を消した瞬間にでも服を着そうな気がしたのだ。まだ続けるのだということを、宣言しておく。
予想通りだったのか、斎賀は少し嫌そうな表情をしてから顔を逸らした。
例えひと時でも斎賀から離れることを、惜しく思う。
しかし、さすがに斎賀の前で自らを慰めるわけにはいかない。
柴尾はベッドを揺らすと、床に足を付いた。
後ろ髪を引かれる思いでベッドを離れ、部屋に備え付けられたシャワー室の扉を開けようとした。
「柴尾……」
小さく斎賀に呼ばれた。
柴尾は急いでベッドに駆け寄った。
「どうされましたか?」
斎賀を覗き込むと、黙って柴尾を見上げた。その目は何故か、少し睨んでいる。
「お前、何を塗った……?」
柴尾はきょとんとした顔を返す。
塗ったものといえば、朱貴にもらった軟膏だけだ。
「軟膏のことですか?」
「………」
斎賀が唇をきゅっと噛んだ。
「潤滑油として使えると……聞いたの……ですが……」
説明しながら、斎賀の異変に気付く。
両膝を擦り合わせるようにして、何かを我慢しているような仕草だ。体を丸めるように横向けると、銀の尾がぱさっとシーツを叩く。
「え……?」
まさか、と嫌な予感がした。
柴尾は慌ててベッドの上に乗り上げた。斎賀の体の異変を確認しようと、横を向いて隠そうとしている斎賀の中心を凝視する。
「さ、斎賀様。まさか、今の軟膏にもインバスが……っ」
「……っ」
睨まれている理由が分かり、柴尾は青褪めた。
「す、すみません! 僕は何てことを……!」
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