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69.いつもとは違う
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「ん……っ」
今更、こんな初心者の口淫ごときで達するはずもない。
けれど、久しぶりの口淫は、愛する男に包まれているという喜びで、どうしようもないほど那岐の体を鋭敏にさせた。
「しょ……うっ、もう、出る……から……っあ」
敏感な先端に軽く歯を当てられて、我慢できずに那岐は達してしまった。祥月の口を離そうとしたのに、間に合わなかった。
初めて飲み込んだ精液の味に、祥月は咽た。
「ちっとも美味くないぞ」
祥月は感想を述べた。
「当たり前です。ったく、初めてのくせにそこまでしなくても」
那岐は身を起こすと、襦袢の袖で祥月の唇の端についた精液を拭った。
「いつも那岐が美味そうに飲むから、私も試したくなったのだ」
那岐は小さく笑った。
七年以上もの間、遊華楼で鍛えられてきたのだ。そう簡単に同じ境地に立たれても困る。
「そういうのは、慣れてからでいいんですよ」
今まですることがなかった分を埋めようとしてくれているようで、そんな祥月が可愛いと思えた。
那岐は祥月自身に視線を移した。硬く勃ちあがったものは辛そうだ。
「俺はもういいですから……」
ベッドに仰向けになると、那岐は祥月のために足を開けた。
少し気恥ずかしくはあったが、初めて誘いの言葉を口にする。
「い……挿れて下さい」
これまでは、自ら動き奉仕してきた。それが那岐の役目だからだ。
けれどこれからは、祥月のためだけではなく自分のためでもある。
心から、祥月に身を委ねたいと思う。祥月のしたいようにしてくれて構わない。那岐は何でも受け入れられる。
開かれた足の間に祥月が身を置いた。那岐の最奥に自身を宛がうと、那岐を見下ろす。
「そのように誘われるのもいいものだな。お前にもっとはしたない格好をさせて、乱れさせたくなる」
はしたない格好とは、どんな格好をさせられるのか。
那岐は恥ずかしくなった。
「王子様のくせに、なんでそんなこと知ってるんですか!」
「遊び仲間がしているのを見て、色々覚えた」
乱交のことだと呆れた。
「これからは、ああいう悪い遊びには行かないで下さいよ」
那岐が拗ねたように言うと、祥月は微笑んだ。
「もちろんだ」
承諾を合図にして、ゆっくりと祥月が体の中に入ってくる。中を掠める突起に、那岐の肌はぞくぞくと粟立つ。
「ん……っ」
「那岐……」
祥月が息を漏らした。那岐はシーツを掴んで祥月を見上げた。
恋人として抱き合う、初めての夜だ。
今までと同じようで、違う。
想いを知られてはならないと、妙なことを口走ってしまわないよう、最近の勤めは緊張が伴っていた。
これからは触れたくなったら触れ、口付けたくなったら口付けて良いのだ。もう我慢する必要などない。
愛しい男に無性に触れたくなり、那岐は祥月に手を伸ばした。
指先が触れると、それを合図に祥月が動き始める。
「ん、は……っあ」
ただの肉欲ではなく、那岐自身を求められているということが、祥月の目を見れば分かる。
愛人になってから散々、祥月に抱かれてきた。気持ちが変われば、同じ行為でも感じ方が変わる。祥月も今までとの違いを感じているのだろうか。
「祥……っん、あ」
体だけではなく心まで気持ちが良くて、どうにかなりそうだった。夢中になりすぎて、今まで以上に恥ずかしい姿を晒してしまいそうに思えた。
「あっ、う、んっ」
祥月の動きが、次第に早くなり始めた。ベッドが激しく揺れ、那岐の足も揺れる。
「ちょっ、もう少しゆっく……! あ……っあ、飛ばし過ぎ!」
那岐が抗議の声を上げると、祥月は速度を落とした。
「そうか、分かったぞ」
何のことかと那岐が見上げると、祥月は笑った。
「那岐の口調を普段のようにする方法だ。お前は感情が高ぶるか気持ち良すぎると、口調が変わる。ずっと快楽を与えていれば、普通に喋るのではないか?」
那岐は瞠目した。
気持ちのいいことは好きだ。だが、祥月といる間中ずっと快楽を与え続けられていたら、それこそ気がおかしくなってしまう。
那岐は顔を思いきりしかめると、本気で拒否した。
「絶対に、冗談でも嫌ですからね!」
今更、こんな初心者の口淫ごときで達するはずもない。
けれど、久しぶりの口淫は、愛する男に包まれているという喜びで、どうしようもないほど那岐の体を鋭敏にさせた。
「しょ……うっ、もう、出る……から……っあ」
敏感な先端に軽く歯を当てられて、我慢できずに那岐は達してしまった。祥月の口を離そうとしたのに、間に合わなかった。
初めて飲み込んだ精液の味に、祥月は咽た。
「ちっとも美味くないぞ」
祥月は感想を述べた。
「当たり前です。ったく、初めてのくせにそこまでしなくても」
那岐は身を起こすと、襦袢の袖で祥月の唇の端についた精液を拭った。
「いつも那岐が美味そうに飲むから、私も試したくなったのだ」
那岐は小さく笑った。
七年以上もの間、遊華楼で鍛えられてきたのだ。そう簡単に同じ境地に立たれても困る。
「そういうのは、慣れてからでいいんですよ」
今まですることがなかった分を埋めようとしてくれているようで、そんな祥月が可愛いと思えた。
那岐は祥月自身に視線を移した。硬く勃ちあがったものは辛そうだ。
「俺はもういいですから……」
ベッドに仰向けになると、那岐は祥月のために足を開けた。
少し気恥ずかしくはあったが、初めて誘いの言葉を口にする。
「い……挿れて下さい」
これまでは、自ら動き奉仕してきた。それが那岐の役目だからだ。
けれどこれからは、祥月のためだけではなく自分のためでもある。
心から、祥月に身を委ねたいと思う。祥月のしたいようにしてくれて構わない。那岐は何でも受け入れられる。
開かれた足の間に祥月が身を置いた。那岐の最奥に自身を宛がうと、那岐を見下ろす。
「そのように誘われるのもいいものだな。お前にもっとはしたない格好をさせて、乱れさせたくなる」
はしたない格好とは、どんな格好をさせられるのか。
那岐は恥ずかしくなった。
「王子様のくせに、なんでそんなこと知ってるんですか!」
「遊び仲間がしているのを見て、色々覚えた」
乱交のことだと呆れた。
「これからは、ああいう悪い遊びには行かないで下さいよ」
那岐が拗ねたように言うと、祥月は微笑んだ。
「もちろんだ」
承諾を合図にして、ゆっくりと祥月が体の中に入ってくる。中を掠める突起に、那岐の肌はぞくぞくと粟立つ。
「ん……っ」
「那岐……」
祥月が息を漏らした。那岐はシーツを掴んで祥月を見上げた。
恋人として抱き合う、初めての夜だ。
今までと同じようで、違う。
想いを知られてはならないと、妙なことを口走ってしまわないよう、最近の勤めは緊張が伴っていた。
これからは触れたくなったら触れ、口付けたくなったら口付けて良いのだ。もう我慢する必要などない。
愛しい男に無性に触れたくなり、那岐は祥月に手を伸ばした。
指先が触れると、それを合図に祥月が動き始める。
「ん、は……っあ」
ただの肉欲ではなく、那岐自身を求められているということが、祥月の目を見れば分かる。
愛人になってから散々、祥月に抱かれてきた。気持ちが変われば、同じ行為でも感じ方が変わる。祥月も今までとの違いを感じているのだろうか。
「祥……っん、あ」
体だけではなく心まで気持ちが良くて、どうにかなりそうだった。夢中になりすぎて、今まで以上に恥ずかしい姿を晒してしまいそうに思えた。
「あっ、う、んっ」
祥月の動きが、次第に早くなり始めた。ベッドが激しく揺れ、那岐の足も揺れる。
「ちょっ、もう少しゆっく……! あ……っあ、飛ばし過ぎ!」
那岐が抗議の声を上げると、祥月は速度を落とした。
「そうか、分かったぞ」
何のことかと那岐が見上げると、祥月は笑った。
「那岐の口調を普段のようにする方法だ。お前は感情が高ぶるか気持ち良すぎると、口調が変わる。ずっと快楽を与えていれば、普通に喋るのではないか?」
那岐は瞠目した。
気持ちのいいことは好きだ。だが、祥月といる間中ずっと快楽を与え続けられていたら、それこそ気がおかしくなってしまう。
那岐は顔を思いきりしかめると、本気で拒否した。
「絶対に、冗談でも嫌ですからね!」
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