〜心の翻译（ファンイー）〜

第６話：すれ違う視線、募る孤独

　８月１日。今日から夏休みが始まる。だが、登校日数を稼ぎたいのか１０日までの休みになった。私は学校から出された課題と、ニホンゴの勉強を並行して行った。
　８月１１日。教室に行くと、１人１人の席に紙が山積みにされていた。全員が揃って担任が言ったのは、休校期間延長とのこと。レイノウイルスが再び増加し続けこの国をさらに細かくした県という県独自の緊急事態宣言を発令したそう。そして、その山積みの紙は、休校期間中の課題らしい。私たちはその山積みの紙をリュックに入れて帰った。
　８月１７日。また机の上に紙が山積みにされていた。レイノウイルスはほんの１週間や２週間で治る病気じゃない。手洗い、サンミツ避ける、外出るときはマスク着用。私たちは担任から少し話を聞いて休校期間中の課題を入れて帰った。
　８月２６日、科目地学基礎。私はたぶん神様にイタズラされていると思った。だって、ユエンと席が近くなったのだから。今は、学年をかけての分散登校になっている。ユエンの隣は、千々野音鳥ちぢのねとり/チーチーイエ インニャオ。私の隣は高木樹たかぎいつき/ガオムー シュウ。
《神様ワナンデ私ニ意地悪スルノ？》
私は悲しくなった。
ーーチクリ！
胸に針状のものが刺さったような痛みがした。痛い。チクチクで痛い。
　１０月１日、地学教室。インニャオが最近、ユエンをイジっている。けどインニャオもユエンのことを『ゆっきー』と呼んでいる。担任もユエンのことゆっきーと呼んでいる。もしかして、私だけがユエンのことをゆっきーと呼んでいない。
ーーチクリ！
また、胸に針状のものが刺さったような痛みが走った。いったい、この針状のものがチクチク刺さる痛みは何だろう。私は他にユエンと話せる場を設けたかった。そして、改めて選択授業を思い出す。私とユエンが同じ選択授業は全部一緒。ジンリャンがユエンと一緒じゃないのは、地学基礎のみ。神様はジンリャンの居ない授業を逆手にとって、ジンリャンがユエンを好きなら、私はもう諦めるしかない。もう何かを巡って争いたくない。インニャオもユエンをアプローチしているし、ジンリャンももユエンにアプローチしてきている。争いを私は強く拒む。
　私はユエンを思えば、思えば思うほど、苦しくなって目がバッキバキになってになってしまう。ユエンに会いたい。けど会えない。インニャオやジンリャンがいるから会えない。胸が針に刺されたような痛みは続く。そして、目がバッキバキになって不眠症にもなった。授業中の寝ることが多かった私は１週間に一度に学校を休むようになった。ユエンに会えない。けど、どちらにしろ会えない。会えないってことはニホンゴが学べなくなる……。ユエンと話したい……