〜心の翻译(ファンイー)〜

古波蔵くう

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第10話:屋上の告白、未来への約束

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 屋上。空は鼠色に曇っていて、少しばかり雪が降り始めている。ユエンがマフラーと手袋をして待っていた。私はユエンに近付く。
「ミリ……今から俺の質問にシー不是ブーシーで答えて」
と言った。たぶん『是(shì)か不是(bú shì)で答えて』つまり『で答えて』って意味だ。発音は初めて話した時と変わらず、四声を無視している。変わっていない。すると、ユエンは紙を取り出した。曇ってはいたが、少しばかり陽が差して、ユエンの持っている紙が透かされた。
这学期你不理我、我很孤单……可是、我还是最想和你在一起ジェ シュエチー ニー ブー リー ウォー、ウォー ヘン グーダン……クーシー、ウォー ハイシー ズイ シィァン フー ニー ザイ イーチー
『这学期你不理我,我很孤单。可是,我还是最想和你在一起。(Zhè xuéqī nǐ bù lǐ wǒ, wǒ hěn gūdān. Kěshì, wǒ háishì zuì xiǎng hé nǐ zài yīqǐ./ジェ シュエチー ニー ブー リー ウォー、ウォー ヘン グーダン。クーシー、ウォー ハイシー ズイ シィァン フー ニー ザイ イーチー):今学期、君が僕を無視して、僕はとても孤独だった。でも、それでもやっぱり一番一緒にいたいのは君なんだ。』と紙に書いてある。私だってユエンと話せなくて、ホントのところ苦しかった。寂しかった。ユエンと何ヶ月も話せなかった。喜欢人シーファンレンと話せない寂しさを言葉で表現なんてできない。……。私は思わず、ユエンを抱きしめて
「……是……是……我喜欢你ウォー シーファン ニー
『私はあなたが好き』と答えた。ユエンは嫌がることなく抱きしめ返した。私の目から涙が溢れている。これが喜欢好きと言う気持ちの表れなんだ。
「あと……ミリ……」
「エ? ナニ?」
「俺のこと……ユエンじゃなくて、ゆっきーって呼んでくれない?」
ユエ……いや、ゆっきーが呼称を変えて欲しいとのこと。
「ナ、ナンデ?」
「ユエンって、さっき調べたら俺の苗字だろ? ゆっきーで呼んだ方が反応しやすい」
と。ゆっきーは答える。確かにユエンって呼んでいるのは、私だけだった。ゆっきーと今さら呼び変えるのはちょっと難しい。
「時間カカルケド?」
「それでもいい……」
私は時間をかけて、ユエンをゆっきーと呼べるように努力する。
「ジャア、ユエン モウォーヲ ミリ ジャナクテ魅凜メイリン ト呼べルヨウニ」
と答えた。ゆっきーが呼称を変えるなら、私も呼称を変えさせる。
「俺も時間かけなきゃな……」
ゆっきーは、頭をかく。
 放課後。ゆっきーが私に話しかける。
「メイリン……進路とか決まった?」
と。まだ私の苗の拼音つけるのは、難しいのか。
「シンロ?」
「あぁ……高級中学卒業後どうするか? 職業に就くか、高校に行くか、センモンガッコウに行くか」
ゆっきーは、私が中国人だから学校の名称も中国語で話してくれた。高級中学は日本でいう高校のこと。日本の高校は中国では大学を意味する。センモンガッコウは职业学校ジーイエ シュエシャオ、職業学校のことだろう。職業に就くは、就业ジウイエ、就業のことだろう。
「ユエ……ユッキー ハ?」
私は呼称がいつも通りになる。
「俺は、ここに行くつもり……」
ゆっきーの見せてくれたパンフレットは
琉球国際大学りゅうきゅうこくさいだいがく Ryukyu International University』
と書いてある。
「ナ……ナンテ読ムノ?」
私は和製漢字が読めない。
「りゅうきゅうこくさいだいがく……日本では大学を高校って呼ばないんだ」
ゆっきーは、教えてくれる。
「ナンデ、ココナノ?」
「ここは、英語以外の外国語が学べるんだ……今まで、独学で中国語を話せるようにしたけど、ちゃんとした講義で中国語を学びたいと思ったんだ! そして日本語教師になる!」
ゆっきーは将来の夢を語る。
「ジャア、我モココニシヨウカナ……ニホンゴ……ウマク話シタイ」
私はゆっきーと同じ進学先にする。ゆっきーはこの後、子どもみたいに飛び跳ねていた。
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