好きと言えない僕と、言えない君と 〜そのナプキンは、不器用すぎる僕の純愛だった〜

古波蔵くう

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第5章:病院へ

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 数週間後、桜見坂高校教室。俺が旧校舎から星野と共に教室に帰って数分後、
「春!」
雪姉ちゃんが教室の戸を乱暴に開けて入ってきた。
「姉ちゃん!」
「いつまで、その過敏な体質を患っているつもりなの!」
「いや、俺は治っているつも……」
「病院に行くよ!」
雪姉ちゃんは、俺に有無を言わせず、腕を引いて学校を早退させる。
 ひかりヶ丘クリニック、内科・泌尿器科。俺はなぜか、雪姉ちゃんに病院へ強制連行された。
「春の病気が何年も治っていないから、今日で原因見つけて治療するよ」
「……」
「分かった?」
「……分かった」
雪姉ちゃんは、俺を従弟いとことしてではなく、血の繋がった弟のように接してくれている。俺も、雪姉ちゃんを姉ちゃん呼びしてる時点で変わらないけど。
「木下さーん! 第5診察室にお越しください」
看護師が俺を呼ぶ。
「ほら、立って……」
俺は足かせを付けられたような足取りで診察室に入った。
 第5診察室。
「木下春さんですね?」
「はい……」
近藤こんどう先生、春の過敏な体質を治してください!」
「落ち着いてください……」
泌尿器科の医師、近藤先生は冷静に俺と雪姉ちゃんを落ち着かせている。
「ナプキンがないと、この過敏な体質を抑えられないんだね?」
「……はい」
「なにか薬とか飲んでいるの?」
「いいえ……」
「分かりました……」
近藤先生の問診が続いた。問診の結果、俺は、
「手術が必要ですね」
とのこと。問診中はほとんど雪姉ちゃんが半分程度答えていたから、この問診は誤診だ。
 手術室、待合室。
「手術したら、治るから!」
「怖い……」
俺は足がガクガク震えている。俺はこの過敏な体質が重い病気なのかと思ってしまった。手術ってそれ以外、考えられない。
「木下さーん、手術室へ!」
看護師が呼ぶ。
「春! 呼ばれたから立って!」
「やっぱ、俺はいい……」
「ここまで来て何言ってるの!」
雪姉ちゃんが俺の腕を無理矢理引いて手術室に強制連行される。
 手術室。
「まず、レントゲン撮りますね……」
近藤先生率いる数人の医師が俺の手足を掴んで固定していた。レントゲンはほんの数分で終わった。
「これは……!」
近藤先生が驚いている。
「すぐ手術ですか!」
「いや、そんな……」
「近藤医師が困惑しているってことは重い病だ! すぐに手術を開始する!」
俺は力ずくで、医師の拘束を解いて
「嫌だあぁぁぁぁ!」
と逃げ出した。傍から見たら変人だ。
「ちょっと春!」
雪姉ちゃんが、呼び止めるが俺の耳には届かなかった。
「あの、木下さん?」
近藤医師が雪姉ちゃんを呼び止める。
「はい?」
「春さんの病気……完治しています……」
「え!?」
俺を拘束していた医師数名と雪姉ちゃんが声を揃えて驚いた声を出した。
「じゃあ、なんでナプキンを毎日持ち歩くの?」
「本日は、問診料だけ支払ってください……」
「分かりました……」
雪姉ちゃんは、総合受付に向かった。
 あさひヶ丘クリニック、一般用男子トイレ個室。俺が手術室逃走の果てに避難したのが、一般使用の男子トイレだ。俺が恥ずかしさと怖さで、頭を抱えていると、スマホのバイブレーションが鳴る。
LEINレインか?」
俺は無料通話アプリを開く。雪姉ちゃんからだった。
『ゆき:1階の総合受付にいる』
とのこと。俺は男子トイレの個室を出て、1階に向かった。
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