〜幽霊の記憶〜

古波蔵くう

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5. 美咲の未練の真実: 『日記の奇跡』

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 約束終了後。俺は美咲から身体を返した。
「健太さん……美咲との約束を果たしてくれて、ありがとう」
美咲の母親が深々と頭を下げる。
「これで、肩荷が下りたよ」
父親も心のつっかえから解放されたようだ。
「いえいえ、これで娘も成仏できたと思います」
俺が、そう言うと
「でも、私まだここにいるけど?」
美咲の声が聞こえる。
「美咲? まだ俺の身体に憑依したままか?」
美咲の声は母親と父親には聞こえていないみたいだ。
「あ! そう言えば、美咲は1日の出来事を日記に残す日課をしていたわ!」
母親は、そう言うと物置部屋から美咲の遺品の中身を探る。すると、ピンク色の日記帳が出てきた。
「家族の約束の日が空白だから、この日を埋めたら良いんじゃない?」
母親が言う。俺は、その日記帳に付いていたペンを持って美咲の声を聞きながら日記を埋めた。すると、俺と美咲は鏡無しで対面した。
「健太さん……これで、私もこの世での未練はありません」
美咲が言う。
「美咲の未練が果たせて良かったよ」
俺は美咲に触れようとするが、すり抜けてしまう。
「もし、私が見えなくなっても声が聞こえなくても悲しまないで……ずっとここに居るから」
美咲は、俺の胸を指差す。
「心の中だな……分かってるよ」
俺は美咲と手を握る。もちろんすり抜けてしまう。そうして、美咲は俺の前から姿を消した。もう、鏡に写ることもない。幻聴のように声も聞こえない。
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