あの日から、家族のカタチ 〜小学生の娘が母になった日〜

古波蔵くう

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序章:喪失と小さな誓い(父親)

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※ この作品の表紙画像(または、使用されている画像)はAI生成ツールを利用して作成されています。
【父親side】
 11月の第3日曜日。私の名は、神崎亮介かんざき りょうすけ。妻の葉月はづきと、娘の美咲みさき、息子の拓海たくみの4人家族で暮らしている。ごくごく普通の家庭だ。今日は世間では『家族の日』となっていた。
「今日のスーパー肉が特売じゃん!」
葉月が、今日の新聞のチラシを見て目を輝かせている。
「じゃあ、今日はすき焼きだな!」
私はソファに座ってチャンネルをコロコロ変えながら言った。
「美咲、拓海! 今日はすき焼きパーティーだよ!」
葉月が、当時小学3年生だった美咲と幼稚園の年長だった拓海に言った。
「やった! すき焼きだ!」
拓海が喜ぶ。
「ウチのすき焼きが宇宙一!」
美咲も喜んでいる。
「じゃあ、家族で買いに行くか?」
私が車の鍵を取りに行こうとすると、
「母さん1人で行くよ……」
「えっ、でも……」
「歩いて10分もしないところだから!」
「そ、そうか……」
私は少し不安があるが、葉月の言葉を信じた。
「じゃあ、すぐ戻るからね!」
「行ってらっしゃい!」
と3人は声を揃えた。
「行ってきます!」
葉月が扉を閉めて、買い物に出かけた。それが葉月の最期の姿だった。
 数十分後。知らない番号から電話が来た。でも国際電話ではない。+が無いから。
「もしもし?」
『もしもし! 神崎亮介様のお電話で間違いありませんか!』
電話をかけた人は、かなり慌てている。
「はい、そうですが?」
『葉月さんが大型トラックに撥ねられ、今心肺停止状態なんです!』
電話をかけた人は、医者だ。
「え、妻が……心肺停止……」
『今すぐ 明成総合病院あきなりそうごうびょういんに来てください!』
--プー……プー……。
病院からの電話が切れた。
「美咲、拓海……車に乗って……」
私は車の鍵を手に取って、自宅のあるから車を走らせて病院に向かう。
 葉月がいる病院。医師数名が心肺蘇生を続けている。心臓の脈が遅くなりつつあった。
「旦那様! 早く協力してください!」
「子どもたちは?」
わたくしがなんとか!」
女性の看護師が拓海と美咲を病室から外に誘導する。私と医師数名で心肺蘇生やAEDエーイーディーを試みたが、
 数分後。医師が腕時計を見て
「……ご臨終です」
妻、葉月は帰らぬ人となった。
(拓海と美咲にどう説明すればいいんだ……)
私の脳内は、妻を失った気持ちと、子どもに葉月が亡くなったことをどう説明すればいいのか、そもそも伝えていいのか分からない状況だった。
 葬儀中。遺影の葉月は笑っている。まだ若かった中学か高校の頃の写真だろうか。制服を着ている写真しかなかった。拓海は何が起きたのか分かっていないが、美咲は薄々『死』を感じていたように見える。
「この先、あの子たち……どうする気なのかしら?」
「シングルファーザーは大変よ?」
「誰かが引き取る?」
「あたいじゃ無理だよ……」
親戚たちの愚痴が聞こえる。嫌だ。聞きたくない。私は葉月が毎日付けていた白い花の形をしたヘアピンを握りしめた。葉月にプロポーズした時に渡した大切な宝物だ。
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