転生した先がザマァ返しされた攻略相手の妹だった話

桜もみじ

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新しい生活 刺繍職人

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案内人からもらった仕事は刺繍職人。
刺し子職人と言われるものとなった。

母が。

残念ながら8歳の私に出来る仕事はほぼ無い。


女性の縫製職人は男性の職人より地位が低く、下着などの縫製が主となる。
そうなると嫁入りの持参金を貯めるどころか、食べるのにもギリギリなのだと聞いた。


母が就いた刺し子職人(刺繍職人)は
ただ衣服を縫う職人より地位が高いとされる。
貴族としての教養が役にたった形だ。

ちなみに例外的に女性の縫製職人が多いドレスの工房は紹介がないと付けない。

基本的に住み込みで、下級貴族の次女以降がつく事が多い。
宝石を縫い付けることも多いので身元の確かさを求めてられるのだ。


コンコンとノックの音が聞こえる。
「こんにちは」
「こんにちはお母さんは居るかい?」
「はいどうぞいらっしゃいませ」
仕事の元締めさんがえっちらおっちら7階迄上がってきた。
小男に内職が入った木箱を持たせている。

今暮らしているアパートメントは7階建てでもちろんエレベーターなんてものは無い。
上の階になるほど税金が安く家賃も安い。
もちろん人力で上がる
7階は辛い。


上下水道が無いので水を運ぶのも、排泄物を運ぶのも人力だ。
納得の家賃も安さ。

「お茶を、どうぞ」
2人にお茶を出す。
お茶は自分で焙煎した麦茶だ。
以外と好評。

大きいコップで、ごっくごっくっと飲み干した。
荷物を運んでくれた小男さんにはおかわりを注いであげる。

「ありがとういいお嫁さんになるね」
褒められた

頭をくりくりっと撫でて飴を一つくれた
嬉しい。


「こちらは娘が刺したのですよ」
母がハンカチを一枚差し出した。
「ほう‥なかなか上手に刺していますね‥」
刺繍を広げて元締めさん
ちょと照れるねー
お世辞でも嬉しい


母はけぶるような金の髪を緩く纏めている。
庶民の婦人らしい綿麻の古着だが、溢れる気品が怒号のようにしたたり溢れている。
簡素な衣服が逆に美しさが溢れてる。
‥溢れてる。

貴族でなくなってもたおやかでシャンと美しい。

元締めさんがわざわざ内職の職人に仕事を運ぶなんてない
必要ない
下男ですむ

でも気持ちはわかる
泥に堕ちても高嶺の花
母は美しい

いらぬ気苦労ですこしやつれた感じもまた趣きがある。


‥女子のココロにもおっさんが住んでいるのだ。


仕事の話はすぐに終わって元締めさんと母は雑談に興じている。
木箱のテーブルセットなのに母が居るだけでやたら優雅過ぎる
木箱に座ってるのに背景が王宮。
絵面ェェ


「しかしあまり見た事のない技法ですな‥」
ハンカチを見て元締めさんが言う。
「そうですの。何処から学んだのか‥変わった刺繍を刺すのですわ」
こちらのレースも‥

イザと言う時の換金用レースを見せた。
ママンだめよー今じゃないー!

この国を含めた周辺国のレースは、縫い針を使って一針づつ結んでいくタイプのレースだ
ベネチアレースやトルコのイーネオヤのようなの
繊細だが手間暇掛かる。

レースは布の宝石と呼ばれる。

見た目ボビンレース?らしいレースもあるが詳しくわからない。
ボビンレースに寄せた、かぎ針と縫い針両方を使用する、ハイブリッドなレース編みも存在するから。
魔法のある世界なのでケミカルレースが不思議のチカラで実現していても不思議ではない。

レース編みぐらいと思うだろうが織物組織図の相続や流出で殺人や貴族家の取り潰しも起こる世の中だ。

手仕事の技法は固く秘匿されている。


‥そう【秘匿】されている。



ザクザク編めるかぎ針レースのつけ襟とつけ袖を元締めに渡した。

『今じゃないー!お母様!今じゃないーー!』




元締めの目が光った。



‥貴族らしく帰属権利に疎い母により
無料で技術の提供となってしまった。

とりあえず元締めにじっっっっとりとした目を向けておいた。

元締めは噴き出る汗を拭っている。

じっっっっっと~りと眺めた。

元締めは止まらない汗を拭いている。

見ている。


‥次からはお茶出さない!!
プンスコ



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