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33,徘徊する黒い犬
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婚約者同士の交流を兼ねたお茶会は恙なく終わりました。
フレイ兄様を頼れると良かったのですが、一応は婚約者同士でも未婚の男女である所為なのか、見張りと疑うほどに多くのメイドが配置されておりまして、内密の相談が出来る隙がありませんでした。
貴族的会話能力の高い方なら、こんな場合でも表向きは普通の会話をしつつ暗喩を繰り返してやりとりできるのでしょうね。私にはとても無理でしたので、早々に諦めることにいたしました。
とりあず今日も私は何これやるべきことはありません。
「図書室に行きましょう」
具体的に王女様と入れ替わっている現状に対してやれることもないのですが、丁度私自身にはずっと気になっていることがあります。
「図書室ですか。何をお調べになられますか? 分類に合わせて第1から第4まで図書室はございます」
「国の農産物の生産、特に生産量について知りたいの」
「それでしたら第3ですね。資料として纏められたものがございますよ」
打てば響くウィルマは物凄く有能です。これで上の役職付きではないのが不思議なものです。
「では行きましょうか」
本来客人の従者としておいでになったのに、何故か侍女をしておられるディル(仮名)さんを採用するような人事ですから、節穴どころか風穴の人事ですからね。能力に合わせた昇格人事もできていないのも十分想像がつきます。
「貴方、やはり付いてくるのね」
「護衛ですから。重い本も持てますよ」
どうあれ貴方は今は侍女でしょう。男を隠す努力ぐらいなさっては?
いえ、私はもう何も考えないことにいたしました。
「まあ、実力行使はないでしょうが、犬には気を付けてくださいね」
「ディナ様!」
あら、ウィルマはディナと呼ぶことにしたのですね。
「今は犬は離宮内に居ませんよ。王城内には犬も雑種も増えてますけど、離宮では普通に話すくらいの声でなら大丈夫です」
「そう言えば……貴方ただの変人ではありませんでしたね」
そう、侍女兼護衛の方ですよ。変人の印象が強すぎて有能な部分が普段は隠れておりますね。世の中にはこういうケースもあるのですね。
それにしても、いい加減はっきりしたいものです。
「今は居ないという犬とは何かしら? 言ってはいけない何か扱いで、私には分かりません」
レイディス様は知らない方が安全と仰いましたが、こう何度も繰り返されては気になって仕方ありません。
「オラージュ公爵からお聞きにならなかったのですか?」
ウィルマは驚いております。
状況などについての碌な説明もなく、私は王女の身代わりを始めたのですよ。
「黒犬とか狂犬という名前は聞きましたが、それだけです」
ウィルマとディル(仮名)さんが顔を見合わせました。
「これが王女を脅かす存在なのですよ。まさかその部分の説明が省略されているとは思いもよりませんでした」
はーはーうーえー!
何で省略って選択肢があったのですか。一番初めに説明するべきことでしょう!
私は瞬間的に激怒に至り、直ぐに強い疲労感に襲われました。
信じられません。
王城内に王女の命を狙う人物達が潜んでいたら、確かに差し迫った危機にあるでしょうね。慌てて私と王女の入れ替わりを進めるでしょうね。
でも、最低限伝えておくべきことでしょう!
「我々は単に犬って言ってますけど、あいつらは『黒犬の群れ』と自分達を呼んでいます。加護持ちを守る黒い犬のつもりらしいです」
「加護持ちを守るのは白い犬でしょう? 神殿でも黒い犬は見たことがないわ」
「白い犬も黒い犬も加護持ちを守る犬です。御存知ないのですか?」
だから、御存知ありません。
全く何も聞いてはおりません。
……聞いていても忘れている可能性はございますね。
「白い犬は加護持ちに侍りその身を守り、黒い犬は加護持ちを失うと禁忌を犯した者を食い殺す」
ディル(仮名)さんが仰った言葉に、私は少し動揺しました。
禁忌を犯した者を食い殺す?
同じく聞いていたウィルマには何の変化もありません。
「……それは言い伝えですか」
「子供でも知っている言い伝えというか、昔話の一種ですよ。貴女の周囲にいる人々は余程過保護なのか、非業の死を遂げた加護持ちに代わる復讐者の伝説すら耳に入れないよう努めていたのですね」
それはどちらかというと、全然過保護ではないでしょう。
他の方全員知っていることを私だけが知らなかったら、周りからどれ程馬鹿にされるのか、それこそ御存知ではないのでしょうか。
でも、聞いていても私が単に覚えてなかった可能性は高いと思うので、周囲に怒るかどうかはまだ考えた方がいいのでしょうね。
「加護持ちを守るつもりで『黒い犬』を自称しているということですか? でも、黒い方では守るべき加護持ちが亡くなっている事が前提で、縁起からしてとても悪くはないかしら」
「人間である彼らの前提は何も伝説通りである必要はありません。『禁忌を犯した者を食い殺す』部分が彼らの前提なのです。本物の王女も加護持ちと偽る禁忌を犯したから、彼らの食い殺す対象になったのですよ」
最低ですね。
「自分が執行者になったとでも考えているのかしら」
「まあ、王家の狂信者など隣国の私には分かりませんので」
隣国出身の割に本当によく御存知ね……ウィルマの貴方に向ける目は凄く呆れてますよ。
王家の狂信者、ですか。
この国の王家は、他国からも『祝福された王家』と呼ばれております。
王家には確かに他よりも加護持ちの女性が生まれやすいという不可思議な事実があり、多くの人々が祝福と呼んで讃えていると聞きます。
それは、逆に人々に加護持ちに対して過剰な信仰があると言い換えられるのではないでしょうか。
つくづく私は隔離されていたと、嫌になって参ります。
「無駄話はこれくらいにして、図書室に参りましょう」
無駄話のようで、かなり重要な情報でした。
おかげで調べるものもぐっと範囲が狭まりました。
私は『異常気象で作物が育たない』とだけ知っており、それを私の加護で解消したいと考えておりましたが、まず何故異常気象が続いているのかまでは考えが至っておりませんでした。
先日お目にかかった側妃様は、
「西の地域は見放された地域だから、貴女がどんなに頑張っても無理よ。そんな価値のない地域よ」
と仰いました。
何故あのとき、私は気がつかなかったのでしょう。
異常気象が終わらない西地域。
それはつまりは『加護のようなもの』の結果ではないでしょうか。
飽くまで加護に近く、異質で絶対に加護ではないもの。
私にはその正体自体は既に分かっております。
「真に『黒い犬』ならば、噛みつく対象を間違えないでしょうに」
小さな私の独り言は、もしかするとディル(仮名)さんには聞こえたかもしれませんが、何も仰りません。
西は、禁忌を犯したのです。
フレイ兄様を頼れると良かったのですが、一応は婚約者同士でも未婚の男女である所為なのか、見張りと疑うほどに多くのメイドが配置されておりまして、内密の相談が出来る隙がありませんでした。
貴族的会話能力の高い方なら、こんな場合でも表向きは普通の会話をしつつ暗喩を繰り返してやりとりできるのでしょうね。私にはとても無理でしたので、早々に諦めることにいたしました。
とりあず今日も私は何これやるべきことはありません。
「図書室に行きましょう」
具体的に王女様と入れ替わっている現状に対してやれることもないのですが、丁度私自身にはずっと気になっていることがあります。
「図書室ですか。何をお調べになられますか? 分類に合わせて第1から第4まで図書室はございます」
「国の農産物の生産、特に生産量について知りたいの」
「それでしたら第3ですね。資料として纏められたものがございますよ」
打てば響くウィルマは物凄く有能です。これで上の役職付きではないのが不思議なものです。
「では行きましょうか」
本来客人の従者としておいでになったのに、何故か侍女をしておられるディル(仮名)さんを採用するような人事ですから、節穴どころか風穴の人事ですからね。能力に合わせた昇格人事もできていないのも十分想像がつきます。
「貴方、やはり付いてくるのね」
「護衛ですから。重い本も持てますよ」
どうあれ貴方は今は侍女でしょう。男を隠す努力ぐらいなさっては?
いえ、私はもう何も考えないことにいたしました。
「まあ、実力行使はないでしょうが、犬には気を付けてくださいね」
「ディナ様!」
あら、ウィルマはディナと呼ぶことにしたのですね。
「今は犬は離宮内に居ませんよ。王城内には犬も雑種も増えてますけど、離宮では普通に話すくらいの声でなら大丈夫です」
「そう言えば……貴方ただの変人ではありませんでしたね」
そう、侍女兼護衛の方ですよ。変人の印象が強すぎて有能な部分が普段は隠れておりますね。世の中にはこういうケースもあるのですね。
それにしても、いい加減はっきりしたいものです。
「今は居ないという犬とは何かしら? 言ってはいけない何か扱いで、私には分かりません」
レイディス様は知らない方が安全と仰いましたが、こう何度も繰り返されては気になって仕方ありません。
「オラージュ公爵からお聞きにならなかったのですか?」
ウィルマは驚いております。
状況などについての碌な説明もなく、私は王女の身代わりを始めたのですよ。
「黒犬とか狂犬という名前は聞きましたが、それだけです」
ウィルマとディル(仮名)さんが顔を見合わせました。
「これが王女を脅かす存在なのですよ。まさかその部分の説明が省略されているとは思いもよりませんでした」
はーはーうーえー!
何で省略って選択肢があったのですか。一番初めに説明するべきことでしょう!
私は瞬間的に激怒に至り、直ぐに強い疲労感に襲われました。
信じられません。
王城内に王女の命を狙う人物達が潜んでいたら、確かに差し迫った危機にあるでしょうね。慌てて私と王女の入れ替わりを進めるでしょうね。
でも、最低限伝えておくべきことでしょう!
「我々は単に犬って言ってますけど、あいつらは『黒犬の群れ』と自分達を呼んでいます。加護持ちを守る黒い犬のつもりらしいです」
「加護持ちを守るのは白い犬でしょう? 神殿でも黒い犬は見たことがないわ」
「白い犬も黒い犬も加護持ちを守る犬です。御存知ないのですか?」
だから、御存知ありません。
全く何も聞いてはおりません。
……聞いていても忘れている可能性はございますね。
「白い犬は加護持ちに侍りその身を守り、黒い犬は加護持ちを失うと禁忌を犯した者を食い殺す」
ディル(仮名)さんが仰った言葉に、私は少し動揺しました。
禁忌を犯した者を食い殺す?
同じく聞いていたウィルマには何の変化もありません。
「……それは言い伝えですか」
「子供でも知っている言い伝えというか、昔話の一種ですよ。貴女の周囲にいる人々は余程過保護なのか、非業の死を遂げた加護持ちに代わる復讐者の伝説すら耳に入れないよう努めていたのですね」
それはどちらかというと、全然過保護ではないでしょう。
他の方全員知っていることを私だけが知らなかったら、周りからどれ程馬鹿にされるのか、それこそ御存知ではないのでしょうか。
でも、聞いていても私が単に覚えてなかった可能性は高いと思うので、周囲に怒るかどうかはまだ考えた方がいいのでしょうね。
「加護持ちを守るつもりで『黒い犬』を自称しているということですか? でも、黒い方では守るべき加護持ちが亡くなっている事が前提で、縁起からしてとても悪くはないかしら」
「人間である彼らの前提は何も伝説通りである必要はありません。『禁忌を犯した者を食い殺す』部分が彼らの前提なのです。本物の王女も加護持ちと偽る禁忌を犯したから、彼らの食い殺す対象になったのですよ」
最低ですね。
「自分が執行者になったとでも考えているのかしら」
「まあ、王家の狂信者など隣国の私には分かりませんので」
隣国出身の割に本当によく御存知ね……ウィルマの貴方に向ける目は凄く呆れてますよ。
王家の狂信者、ですか。
この国の王家は、他国からも『祝福された王家』と呼ばれております。
王家には確かに他よりも加護持ちの女性が生まれやすいという不可思議な事実があり、多くの人々が祝福と呼んで讃えていると聞きます。
それは、逆に人々に加護持ちに対して過剰な信仰があると言い換えられるのではないでしょうか。
つくづく私は隔離されていたと、嫌になって参ります。
「無駄話はこれくらいにして、図書室に参りましょう」
無駄話のようで、かなり重要な情報でした。
おかげで調べるものもぐっと範囲が狭まりました。
私は『異常気象で作物が育たない』とだけ知っており、それを私の加護で解消したいと考えておりましたが、まず何故異常気象が続いているのかまでは考えが至っておりませんでした。
先日お目にかかった側妃様は、
「西の地域は見放された地域だから、貴女がどんなに頑張っても無理よ。そんな価値のない地域よ」
と仰いました。
何故あのとき、私は気がつかなかったのでしょう。
異常気象が終わらない西地域。
それはつまりは『加護のようなもの』の結果ではないでしょうか。
飽くまで加護に近く、異質で絶対に加護ではないもの。
私にはその正体自体は既に分かっております。
「真に『黒い犬』ならば、噛みつく対象を間違えないでしょうに」
小さな私の独り言は、もしかするとディル(仮名)さんには聞こえたかもしれませんが、何も仰りません。
西は、禁忌を犯したのです。
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