終焉の召喚術師〜悪魔の蔓延る世界に立ち向かう少年たち〜

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第十八章〜復讐劇〜①

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ルーインたちがバール班に合流しようと動き出したころ、バールたちは教会奥にある礼拝堂付近ですでに悪魔と対峙していた。
彼らの前に現れた悪魔は、『暴食のベルゼブブ』だ。

けたたましい羽音が教会内に響き渡り、壁や床、天井の隙間からさまざまな種類の虫たちが這い出してくる。
尽きることなく湧き出すその群れは、教会内の空間を暗黒に変えていってしまう。

「くっ……来るぞ!!」

バールが叫ぶと同時に、虫の群れが一斉に襲いかかってきた。
無数の羽、脚、牙が、容赦なくエルクたちを包囲する。

「燃えろッ!」

バールは一歩踏み出し、契約神フレイの力を使って炎を生み出した。
唸りを上げて燃え上がる炎は、虫の群れを焼き払っていく。
だが―――

「くそっ……いくら焼いても無限に湧いて来る……!」

高温の火柱が駆け抜けたあと、すぐに湧き出る虫の数に誰もが眉をひそめる。
止まる気配がない状況に、バズが思わず舌打ちをした。

「キリがないな……!風で吹き飛ばしてやろう!!」

その言葉と同時に、バズの周囲に空気が集まり始めた。
教会の空間が軋むような音を立て、風の圧力が周囲を押し返す。
やがて空気の流れが一点に凝縮され、それは、次第に見える『うねり』として姿を現したのだ。

「私の風は、フィールのとは違うぞ?」

バズが口元に笑みを浮かべながら、手を軽く振る。
するとその『うねり』が一気に爆ぜ、暴風となって前方を剥ぎ払ったのだ。
高圧の風が、虫の群れを容赦なく引き裂いていき、羽音が途切れて教会内に静寂が戻る。
しかし―――

「……目の前にいる虫はどうにかできるが……新たに湧かれるぶんはどうしようもない……!」

バズが険しい目で前方を睨む。
どれだけ薙ぎ払っても、隙間からじわりと湧き出る虫の数は終わりを知らなかったのだ。
焼いても、裂いても、踏みつぶしても、終わりが見えない。

「クソッ……このままじゃジリ貧だぞ!本体を叩かないと―――!」

その言葉と同時に、バズの視線はベルゼブブへと向けられた。
そこではヴァンが、すでに狙撃の体勢に入っていたのだ。
瓦礫の上に身を伏せ、虫のあいだを抜けさせるよう、銃身を構えて狙っている。

「……今しかねぇ」

バズの風によって虫が薙ぎ払われた今、ベルゼブブの姿が視界に収まっている。
この一瞬を逃すとまた虫に覆われてしまうことから、ヴァンは呼吸を殺した。


(動くなよ……そのままでいろ……)

時間が引き伸ばされたような感覚のなかで、ヴァンはわずかに目を細めた。
そしてトリガーに指をかけ、静かに―――引き金を引いたのだ。

パァン!!と、銃声が教会に響き、閃光とともに放たれた弾丸が空気を裂いて疾走する。
風の残滓をかすめ、まっすぐベルゼブブの眉間へ―――

だが―――

「残念」

その瞬間、ベルゼブブの唇がわずかに動いたのだ。
それと同時に、どこからともなく一匹の虫が滑り込むように飛び出し、ベルゼブブの盾となるよう弾道に滑り込んでくる。

「なっ……!」

虫の硬質な外殻に弾丸が命中し、甲高い音を立てて弾かれる。
火花とともに力を失った弾が、虚しく床へと落ちる音が空間に響いた。

「クソッ……!!」
「いい狙いだったんじゃない?ま、僕に届かなきゃ意味ないけど―――ね」

嘲るような声が、ヴァンの耳に届く。
それと同時に、虫たちが再び空間を占領し始めたのだ。

「チッ……!」

ヴァンが悔しげに歯を食いしばったとき、そのすぐ横を風の音が駆け抜けた。
その風に乗って飛び出したのは―――エルクだ。

「ヴァン!もう一度撃て!!俺が虫を薙ぎ払う!!」

エルクは叫びながら、聖槍グングニルを高く構えた。
その槍の先には、まだ不慣れな雷と風が渦巻いている。

「いけるのか……!?まだ不安定なんじゃ……」
「それでもやるしかないだろ……!」

エルクの叫びと同時に、槍先の雷がバチバチと音を立てて暴れ出す。
雷光がグングニルに纏わりつき、風が旋回しながら一気に圧を増していった。

「喰らえぇぇ―――ッ!!」

エルクは地を蹴り、聖槍を突き出す。
すると虫たちは一瞬で吹き飛ばされ、焼け焦げ、裂けて視界が大きく開けたのだ。
はっきりと見えるベルゼブブの姿に、エルクは叫ぶ。

「今だ、ヴァン!!」

その声を合図に、ヴァンが再び銃を構えた。
狙いは一点―――ベルゼブブの眉間だ。

(今度こそ……!)

ヴァンは呼吸を止め、トリガーに指をかける。
エルクが作ったこの一瞬は、無駄にできないのだ。
爆風と雷光の余波がまだ残るなか、指先に力を込めた。

(絶対撃ち抜く……!)

パァン!!という銃声が教会に響いたと同時に、鮮やかな閃光が走った。
弾丸は、一直線にベルゼブブの眉間に向けて飛んでいく。

「よしっ!!」

邪魔となる虫の姿は、まだない。
開ける視界にくわえ、タイミングも完璧だった。
だが―――

「だから遅いんだって、全部」
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