終焉の召喚術師〜悪魔の蔓延る世界に立ち向かう少年たち〜

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第十八章〜復讐劇〜③

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「……悪魔の世界を作るんだよ。我らが『闇の神』ロキの導きのもとに―――ね」

ベルゼブブは、愉悦を隠そうともしない声音で語る。
それはまるで、舞台の幕が上がるのを待っていたかのように。

「彼の仕組んだシナリオは、本当に素晴らしかった。最高神から託された『依頼』を、まさかあんなふうに逆手に取るとはね。人類転覆の土台として、申し分ないと思ったんだよ」

彼はゆっくりと一歩踏み出し、血のついた指先で唇をなぞりながら続ける。

「キミたちには感謝しなきゃね。我らが同胞を復活させるため―――そして『大悪魔サタン』を目覚めさせるために『天使たち』を集めてくれてありがとう」

その言葉に、エルクの目が見開かれた。

「……何?」
「え、知らなかった?いやいや、きっと気づいていたはずさ。自分たちが操られていたってことに―――薄々はね」

ベルゼブブは、くつくつと喉を鳴らしながら笑う。
そして、わざとらしく首をかしげ、こう続けたのだ。

「それにしても残念だったねぇ……。せっかくキミの『父親』を殺したというのに、まさかその息子が『最高神の後継者』になるなんてさ。まったくの誤算だったよ」
「……っ!」
「でも安心して?キミは父親ほど脅威にはならない。なにせ、あの人の最期は―――とびきり『滑稽』だったからね」

そう言うと、口を大きく歪ませながら笑うベルゼブブ。
だが、空気は痛いほど凍りついていた。

「それ以上……何も言うな」

エルクは、その言葉を絞り出すように言った。
聖槍グングニルを強く握りしめ、怒りで震えるほどの力がこもっている。
雷と風の力が応えるように渦巻き、青白い閃光が軋むような音を立てながら奔る。

「お前は……ここで殺す」

一歩踏み出すと同時に雷鳴が轟き、エルクは加速した。

「待て!!エルク!!」

苦痛に顔を歪めながら叫ぶバールの声は、エルクには届かない。
振り返ることなく突進する彼が狙うは―――ベルゼブブの中心部だ。

「ふふん、その程度の動き、躱せないなんてことないから」

ベルゼブブはその突進を予見していたかのように、わずかに身を引く。
その直後、エルクの放った一閃は空を斬り、風圧だけがベルゼブブの肌をかすめたのだ。

「惜しい!人間は甘いところあるからねー。一撃を入れたいなら、やっぱ人間を辞めないとね。それにキミたちはもう、チェックメイトだし?」

勝ち誇るように笑うベルゼブブだったが、次の瞬間、彼の表情は凍りついた。
ついさっきまで目の前にいたはずのエルクの姿が、まるで消えたかのように見えなくなっていたのだ。

「……え?」

戸惑いの声を漏らすベルゼブブの背後で、ピリピリと空間を揺るがす雷鳴が走る。

「こっちだ」

その声は、とても静かで怒りに満ちていた。
背中越しに聞こえた瞬間、ベルゼブブの身体が反応するより早く、雷風を纏った閃光が迫っていたのだ。

「―――っ!?ぐ……ああああッ!!」

振り返る間もなく、エルクの聖槍グングニルが背中から突き刺さる。
槍先は腹部を突き抜け、ベルゼブブの視界で血飛沫と閃光が重なった。
雷の奔流が内部を焼き、風が臓腑を引き裂くように暴れ回る。

「がはっ……っ!!」

その衝撃に膝をついたベルゼブブは、呻き声をあげながらも――――笑みを見せたのだ。

「くくっ……や、るねぇ……」

槍が突き刺さったまま、血を吐きながらもベルゼブブは口角を上げる。
愉悦を狂気が入り混じり、誰の目から見てもその光景は正気とは思えないものだった。

「これが復讐ってやつか……ああ、いいねぇ……人間らしい怒り……じつに滑稽で儚くて……哀しい」

低く笑うような声に、教会内の空気はさらに冷え込む。

「……ふざけるな。なにがそんなにおかしいんだ!?自分が殺されるってのに……!

その言葉に、ベルゼブブは槍に貫かれながらゆっくりと顔を上げた。
そして、まるでそれすら誇りであるかのように、満足げな笑みを浮かべる。

「だって……これが『役目』だから……ねぇ……」
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