終焉の召喚術師〜悪魔の蔓延る世界に立ち向かう少年たち〜

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第十九章〜終刻〜②

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その瞬間、パァン!!と、再び銃声が響き渡った。
放たれた弾丸は空気を裂き、サタンの腿を正確に撃ち抜く。

「ぐっ……!」

またも漆黒の血が飛び散り、サタンの身体が一瞬ぐらつく。
立っていられなくなったサタンが膝をついた瞬間、マリアは動いた。
床に両手をついて身体を支えながら、後方へと跳ね退いたのだ。

「ッ、けほっ……はぁ、はぁ……!」

喉を押さえながら息を荒げ、マリアは仲間たちのもとへとよろめきながら戻っていく。
その腕を、バズがすかさず支えた。

「大丈夫か!?」
「ええ……大丈夫……」

かろうじて頷いた彼女の背後で、サタンはゆっくりと顔を上げた。

「なるほど……エクソシストの『銀の弾』か。並の悪魔なら―――跡形もなく消滅する威力だな」

サタンは、冷ややかにそう言うと撃ち抜かれた腿に視線を落とした。
すると、そこからあふれていた漆黒の血が逆流し、筋肉の裂け目に吸い込まれるように戻っていったのだ。
やがて傷口は何事もなかったかのように閉じ、サタンはゆっくりと立ち上がった。

「だが……私にとっては遊びにもならんな」

その瞬間、吹き飛んだはずの腕も元通りになっており、まるで世界の摂理に逆らうような異様さを―――サタンは纏っていた。

「では……こちらからも礼を返そう」

その言葉と同時に、バールとルーインが飛び込んだ。
ルーインはノルンの力を使い、サタンの動きを読む。

(斬りかかると、サタンは右に躱す――――そこを斬る!)

ルーインは、寸分の狂いもなくサタンの動きに合わせて剣を振るった。
だが―――

「―――遅い」

サタンの声が、ルーインの意志よりも先に動いていたのだ。
いるはずのサタンの姿が、ルーイン斬撃が届く寸前に消える。

「なに……!?」

ルーインが、読めているはずなのに届かない攻撃に驚愕した直後、彼女の背後から重たい衝撃が襲いかかった。

「ぐはっ……!!」

その衝撃にルーインは吹き飛ばされ、聖堂の柱に激突してひびを走らせたのだった。

「ルーイン!!」

その様子を見たバールは軌道を変え、片腕ながらも渾身の一太刀を振り下ろす。
だが―――

「ふん。その程度か」

振り下ろされたバールの一太刀は、紙一重でサタンに避けられてしまったのだ。
その姿は、あらかじめすべてを見透かしていたかのような優雅な一歩で、バールの背筋に冷たいものが走る。

「なっ……!?」

片腕だったとはいえ、力は込めていた。
この一撃で片をつける勢いで斬りかかったはずだったのだ。
冷や汗を垂らすバールに、サタンは鼻で小さく笑う。

「まとまって来い」

その声音には、焦りも苛立ちもない。
むしろ、退屈そうな嘲りが滲んでおり、バールはルーインに目をやった。

「ルーイン、行けるか……!?」
「……もちろんです。先をよむので合わせてください……!」

バールは小さく頷くと、片腕に力を込めた。
剣に炎を纏わせ、渾身の力を込めて柄を握る。
ルーインは今一度集中し、ノルンの力を解き放つ。

(見える―――)

脳裏に浮かび上がったサタンは、バールの攻撃を躱し、その剣を手で掴んだのだ。

(掴まれる前に、私が攻撃する……!)

読み切ったルーインは呼吸を整え、バールに視線を送った。
その視線に呼応するように、バールは剣を構えサタンに向けて迫っていったのだ。

「喰らええええッ!!」

その瞬間、サタンが『避けるであろう』場所にルーインが移動する。
彼女もまた剣を振り上げ、タイミングを合わせにかかった。

(今度は完璧……!)

そう確信したルーインだったが、その核心は刹那のうちに砕かれた。
サタンは、ルーインの読み通りバールの剣を掴んだ―――が、背後から襲いかかったルーインの剣すらも逆手で受け止めたのだ。
二本の剣を止められた光景は、まさに悪夢。

「まとまってこの程度か。期待外れだな。―――いいだろう、ベルフェゴールの力を味わえ」

サタンがそう告げた瞬間、聖堂の空気が捻じれたように波打った。
そして、天を突くような凄まじい咆哮を放ち、その音が『音』を超え、圧としてバールとルーインを襲ったのだ。
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