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5話
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「……ユストスか。邪魔をするなと言っておいたはずだが」
ディルク殿下が不機嫌極まりない声を出す。
僕を抱きしめる腕の力が強まり、殿下の心の声は『今すぐユストスを辺境に飛ばしてやりたい』という殺意に近い独占欲で埋め尽くされている。
「申し訳ございません。ですが、ヴァリエール侯爵家に関する重大な証拠が見つかりました。レアン様を陥れようとしていた、第二王子の派閥の動きについてもです」
ユストスの言葉に、僕はハッとした。
それは僕が回避したかった「処刑フラグ」に関わる重要な情報だ。
「……レアン。少しだけ待っていてくれ」
ディルク殿下は名残惜しそうに僕の額にキスをすると、部屋の隅にある書斎デスクへと向かった。
ユストスが部屋に入ってくる。
彼は無表情に礼を尽くしているが、僕の脳内には彼の「本音の実況」が絶え間なく流れ込んできた。
(……ああ、レアン様。シャツがはだけて、鎖骨のあたりに殿下の付けた痕が……。なんと痛ましい、そしてなんと……扇情的な。今すぐ駆け寄って、私のマントでそのお体を隠し、どこか遠い安全な場所へ攫っていきたい。……そして、私だけのものに……。いや、私は騎士だ、落ち着け、私……!)
(騎士様、全然落ち着いてないよ! 顔は鉄仮面なのに、中身は殿下と同じくらいヤバいよ!)
僕は必死にシャツの前を合わせる。
ユストスはディルク殿下に書類を手渡しながら、時折僕の方をチラチラと見る。
「……レアン様。お怪我はございませんか」
「え、あ、はい。大丈夫です……」
「……左様ですか。何かあれば、いつでも私をお呼びください。私は、あなたの『味方』ですから」
『……味方、という名の捕食者だがな。殿下から君を奪える隙があるなら、私はいつでも牙を剥く準備ができている。……レアン様、その潤んだ瞳で私を見ないでください。理性が、理性が消えそうだ……!』
僕はそっと視線を逸らした。
味方という名の捕食者。その通りすぎて、何も言えない。
「――なるほど。第二王子はベアトリスを使って、レアンに毒を盛る計画を立てていたのか」
ディルク殿下の声が、一気に氷点下まで下がった。
心の声も『あいつら、どんな風に八つ裂きにしてやろうか』という暗い悦びに変わっている。
「ベアトリスが? そんな、彼女は……」
僕は思わず声を上げた。
だって、彼女は僕の「壁になりたい」と言っていた仲間だ。
『……ふふ、レアン。心配しなくていい。ベアトリスという娘については、すでに私の配下が押さえている。彼女は……どうやら、君の想像以上に面白い『協力者』になりそうだ』
ディルク殿下は書類を机に叩きつけると、ユストスに命じた。
「ユストス、関係者全員を地下牢へ。レアンを傷つけようとした報いは、その身で受けてもらう」
「御意に」
ユストスが退室する間際、僕にだけ聞こえる小さな声(本音)を落としていった。
『……明日の夜は、私が君の見張りを担当しよう。殿下の隙を見て、君の指先だけでも味わわせてもらうよ、レアン様……』
(もう、どこにも安全な場所がない……!)
僕はベッドの上で丸まった。
一方、ディルク殿下は再び僕の元へ戻り、ベッドの縁に腰掛ける。
「さて、レアン。邪魔者は消えた。……続きをしようか」
『……次は、君のその長い脚を、私の腰に絡ませてみようか。君がどれほど狭くて温かいか、この身で確かめてやろう。逃がさないよ、永遠に』
「ひ……あ、ああああああっ!」
王子の過激な「愛の宣言」が、再び僕の脳内を埋め尽くした。
ディルク殿下が不機嫌極まりない声を出す。
僕を抱きしめる腕の力が強まり、殿下の心の声は『今すぐユストスを辺境に飛ばしてやりたい』という殺意に近い独占欲で埋め尽くされている。
「申し訳ございません。ですが、ヴァリエール侯爵家に関する重大な証拠が見つかりました。レアン様を陥れようとしていた、第二王子の派閥の動きについてもです」
ユストスの言葉に、僕はハッとした。
それは僕が回避したかった「処刑フラグ」に関わる重要な情報だ。
「……レアン。少しだけ待っていてくれ」
ディルク殿下は名残惜しそうに僕の額にキスをすると、部屋の隅にある書斎デスクへと向かった。
ユストスが部屋に入ってくる。
彼は無表情に礼を尽くしているが、僕の脳内には彼の「本音の実況」が絶え間なく流れ込んできた。
(……ああ、レアン様。シャツがはだけて、鎖骨のあたりに殿下の付けた痕が……。なんと痛ましい、そしてなんと……扇情的な。今すぐ駆け寄って、私のマントでそのお体を隠し、どこか遠い安全な場所へ攫っていきたい。……そして、私だけのものに……。いや、私は騎士だ、落ち着け、私……!)
(騎士様、全然落ち着いてないよ! 顔は鉄仮面なのに、中身は殿下と同じくらいヤバいよ!)
僕は必死にシャツの前を合わせる。
ユストスはディルク殿下に書類を手渡しながら、時折僕の方をチラチラと見る。
「……レアン様。お怪我はございませんか」
「え、あ、はい。大丈夫です……」
「……左様ですか。何かあれば、いつでも私をお呼びください。私は、あなたの『味方』ですから」
『……味方、という名の捕食者だがな。殿下から君を奪える隙があるなら、私はいつでも牙を剥く準備ができている。……レアン様、その潤んだ瞳で私を見ないでください。理性が、理性が消えそうだ……!』
僕はそっと視線を逸らした。
味方という名の捕食者。その通りすぎて、何も言えない。
「――なるほど。第二王子はベアトリスを使って、レアンに毒を盛る計画を立てていたのか」
ディルク殿下の声が、一気に氷点下まで下がった。
心の声も『あいつら、どんな風に八つ裂きにしてやろうか』という暗い悦びに変わっている。
「ベアトリスが? そんな、彼女は……」
僕は思わず声を上げた。
だって、彼女は僕の「壁になりたい」と言っていた仲間だ。
『……ふふ、レアン。心配しなくていい。ベアトリスという娘については、すでに私の配下が押さえている。彼女は……どうやら、君の想像以上に面白い『協力者』になりそうだ』
ディルク殿下は書類を机に叩きつけると、ユストスに命じた。
「ユストス、関係者全員を地下牢へ。レアンを傷つけようとした報いは、その身で受けてもらう」
「御意に」
ユストスが退室する間際、僕にだけ聞こえる小さな声(本音)を落としていった。
『……明日の夜は、私が君の見張りを担当しよう。殿下の隙を見て、君の指先だけでも味わわせてもらうよ、レアン様……』
(もう、どこにも安全な場所がない……!)
僕はベッドの上で丸まった。
一方、ディルク殿下は再び僕の元へ戻り、ベッドの縁に腰掛ける。
「さて、レアン。邪魔者は消えた。……続きをしようか」
『……次は、君のその長い脚を、私の腰に絡ませてみようか。君がどれほど狭くて温かいか、この身で確かめてやろう。逃がさないよ、永遠に』
「ひ……あ、ああああああっ!」
王子の過激な「愛の宣言」が、再び僕の脳内を埋め尽くした。
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