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12話
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寝室にかけられた幾重もの魔法障壁が、外部の音を完全に遮断していた。
厚いカーテンが引かれた室内には、微かな香香(こうばい)の香りと、ディルク殿下が放つ圧倒的な魔力の圧力が充満している。
月明かりさえも届かない暗闇の中で、ディルク殿下の黄金の瞳だけが、獲物を狙う獣のような鋭い光を放って僕を射抜いていた。
ベッドに押し倒された僕の体は、恐怖と、それ以上の「得体の知れない熱」で小刻みに震えていた。
殿下の逞しい体躯が僕の上に覆い被さり、逃げ場を完全に塞ぐ。
彼の手首が僕の顔の横に突かれ、シーツがギュッと音を立てて軋んだ。
「レアン……。怖いのかい? 大丈夫だ、痛みはない。ただ、君の全身が私の魔力で満たされ、私なしでは生きていけなくなるだけだよ」
殿下の表面上の声は、どこまでも優雅で、慈愛に満ちた王子のもの。
だが、僕の脳内に突き刺さる『本音』は、もはや理性のタガが外れ、真っ黒な独占欲に染まっていた。
『……ああ、指先から伝わるレアンの鼓動。これが、これほどまでに愛おしい。……今からここに、私の魂の欠片を流し込む。君の魔力回路の隅々まで、私の紋章を刻んでやるんだ。……そうすれば、セレスのような下卑た男がどんなに甘い言葉で誘惑しようと、君の体は私の魔力だけを求めて疼き出し、私以外の男の手を拒絶するようになる。……永遠に、死が二人を分かつまで、君の魂は私の檻から逃げ出せない。君の呼吸も、君の涙も、すべて私の所有物になるんだ……!』
(……魂の刻印って、やっぱり独占欲の塊じゃないか!)
「ま、待ってください、殿下! そんなことをしたら、僕は……僕はもう、自分じゃなくなってしまう気がして……っ!」
僕は必死に抵抗しようと殿下の肩を押し返したが、その手はあっさりと掴み上げられ、頭の上で固定されてしまった。
殿下の指先が、僕の胸元――ちょうど心臓があるあたりの薄いシャツを、魔法の力で静かに、だが容赦なく引き裂いていく。
「――静かに。レアン、私を信じて。君を傷つけたりはしない。ただ、愛を刻むだけだ」
殿下の唇が、僕の拒絶の言葉を飲み込むように塞いだ。
同時に、彼の指先から膨大な熱量が、僕の胸の奥へと流れ込んでくる。
それは、これまで経験したことのない、暴力的なまでの快感だった。
血管を熱い砂が流れるような、あるいは甘い毒が全身を回るような感覚。
「あ……が、はぁ……っ! あ、ああああああっ!!」
脳内に響き渡る殿下の『声』が、もはや言葉ではなく、剥き出しの「愛欲」となって僕を責め立てる。
言葉を超えた感情の奔流が、僕の魔力回路を無理やりこじ開け、書き換えていく。
『……もっと、もっと私を受け入れろ、レアン。……君の奥深く、まだ誰も触れたことのない純潔な場所まで、私の魔力で汚して、塗り潰してやる。……泣け、叫べ、私を求めて縋り付け。……君の喘ぎ声も、涙も、すべてが私の悦びになるんだ。……ああ、レアン、愛している、愛している……愛しているッ!! 君の魂の最深部に、私の名前を一生消えない傷跡として残してやる……!』
視界が火花を散らす。
僕の胸元には、複雑に絡み合う美しい紋章――エトワール王家の「星の刻印」が、淡く青白い光を放ちながら浮かび上がっていく。
皮膚が焼けるような熱さと、脳がとろけるような甘美な痺れ。
僕は意識が朦朧とする中で、自分の魂がディルク殿下の色に染められていくのを、ただ無力に受け入れるしかなかった。
「……あ、あ、ああ……っ、でん……か……」
「そうだ、レアン。それでいい。私の名前だけを呼べ。君の体は、もう私がいなければ形を保てないほど、私で満たされているんだから」
殿下は満足そうに、僕の胸に刻まれた光り輝く紋章に、優しく口づけを落とした。
その瞬間、全身を突き抜けるような衝撃が走り、僕はついに意識を手放した。
暗転する意識の最後で聞こえたのは、『これでようやく、君を私のものにできた』という、地獄の底から響くような、甘く重い王子の独白だった。
厚いカーテンが引かれた室内には、微かな香香(こうばい)の香りと、ディルク殿下が放つ圧倒的な魔力の圧力が充満している。
月明かりさえも届かない暗闇の中で、ディルク殿下の黄金の瞳だけが、獲物を狙う獣のような鋭い光を放って僕を射抜いていた。
ベッドに押し倒された僕の体は、恐怖と、それ以上の「得体の知れない熱」で小刻みに震えていた。
殿下の逞しい体躯が僕の上に覆い被さり、逃げ場を完全に塞ぐ。
彼の手首が僕の顔の横に突かれ、シーツがギュッと音を立てて軋んだ。
「レアン……。怖いのかい? 大丈夫だ、痛みはない。ただ、君の全身が私の魔力で満たされ、私なしでは生きていけなくなるだけだよ」
殿下の表面上の声は、どこまでも優雅で、慈愛に満ちた王子のもの。
だが、僕の脳内に突き刺さる『本音』は、もはや理性のタガが外れ、真っ黒な独占欲に染まっていた。
『……ああ、指先から伝わるレアンの鼓動。これが、これほどまでに愛おしい。……今からここに、私の魂の欠片を流し込む。君の魔力回路の隅々まで、私の紋章を刻んでやるんだ。……そうすれば、セレスのような下卑た男がどんなに甘い言葉で誘惑しようと、君の体は私の魔力だけを求めて疼き出し、私以外の男の手を拒絶するようになる。……永遠に、死が二人を分かつまで、君の魂は私の檻から逃げ出せない。君の呼吸も、君の涙も、すべて私の所有物になるんだ……!』
(……魂の刻印って、やっぱり独占欲の塊じゃないか!)
「ま、待ってください、殿下! そんなことをしたら、僕は……僕はもう、自分じゃなくなってしまう気がして……っ!」
僕は必死に抵抗しようと殿下の肩を押し返したが、その手はあっさりと掴み上げられ、頭の上で固定されてしまった。
殿下の指先が、僕の胸元――ちょうど心臓があるあたりの薄いシャツを、魔法の力で静かに、だが容赦なく引き裂いていく。
「――静かに。レアン、私を信じて。君を傷つけたりはしない。ただ、愛を刻むだけだ」
殿下の唇が、僕の拒絶の言葉を飲み込むように塞いだ。
同時に、彼の指先から膨大な熱量が、僕の胸の奥へと流れ込んでくる。
それは、これまで経験したことのない、暴力的なまでの快感だった。
血管を熱い砂が流れるような、あるいは甘い毒が全身を回るような感覚。
「あ……が、はぁ……っ! あ、ああああああっ!!」
脳内に響き渡る殿下の『声』が、もはや言葉ではなく、剥き出しの「愛欲」となって僕を責め立てる。
言葉を超えた感情の奔流が、僕の魔力回路を無理やりこじ開け、書き換えていく。
『……もっと、もっと私を受け入れろ、レアン。……君の奥深く、まだ誰も触れたことのない純潔な場所まで、私の魔力で汚して、塗り潰してやる。……泣け、叫べ、私を求めて縋り付け。……君の喘ぎ声も、涙も、すべてが私の悦びになるんだ。……ああ、レアン、愛している、愛している……愛しているッ!! 君の魂の最深部に、私の名前を一生消えない傷跡として残してやる……!』
視界が火花を散らす。
僕の胸元には、複雑に絡み合う美しい紋章――エトワール王家の「星の刻印」が、淡く青白い光を放ちながら浮かび上がっていく。
皮膚が焼けるような熱さと、脳がとろけるような甘美な痺れ。
僕は意識が朦朧とする中で、自分の魂がディルク殿下の色に染められていくのを、ただ無力に受け入れるしかなかった。
「……あ、あ、ああ……っ、でん……か……」
「そうだ、レアン。それでいい。私の名前だけを呼べ。君の体は、もう私がいなければ形を保てないほど、私で満たされているんだから」
殿下は満足そうに、僕の胸に刻まれた光り輝く紋章に、優しく口づけを落とした。
その瞬間、全身を突き抜けるような衝撃が走り、僕はついに意識を手放した。
暗転する意識の最後で聞こえたのは、『これでようやく、君を私のものにできた』という、地獄の底から響くような、甘く重い王子の独白だった。
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