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21話
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どれほどの時間が経過したのか、僕にはもう分からなかった。
窓のない地下宮殿。そこは、ディルク殿下が僕を独占するためだけに、王城の真下に作り上げさせた「贅を尽くした牢獄」だった。
壁一面に張り巡らされた魔力水晶が、淡く青白い光を放ち、不気味なほどに静まり返った室内を照らしている。
記憶を失った僕は、巨大な天蓋付きのベッドの上で、ただぼんやりと天井を見つめていた。
手首には、重さを感じさせないほど細く、それでいて決して壊すことのできない「魔力の枷」が嵌められている。
「……おはよう、レアン。気分はどうだい?」
重厚な扉が開き、ディルク殿下が入ってきた。
彼は甲斐甲斐しく、僕のために用意された豪奢な食事を運び、僕の隣に腰を下ろす。
記憶のない僕にとって、彼は「唯一僕を知っている、美しくも恐ろしい支配者」でしかなかった。
「……殿下。……僕は、いつになったらここを出られるんですか?」
僕が怯えながら問いかけると、殿下は悲しげに目を細め、僕の頬を指の背でなぞった。
その瞬間、彼の『本音』が津波のように僕の脳内へ流れ込んでくる。
『……出られるはずがないだろう。……ここは、君を汚すあらゆる雑音から君を守るための、聖域なのだから。……記憶なんて戻らなくていい。……君の空っぽの心に、私への依存だけを詰め込んであげよう。……ああ、その不安に揺れる瞳も、震える唇も、すべてがたまらなく愛おしい。……君が私なしでは食事すら喉を通らない体になるまで、じっくりと飼い慣らしてやる……』
「……っ!」
僕はあまりの執着の深さに息を呑んだ。
記憶を失っても、この能力だけは僕を苦しめ続ける。
殿下は微笑みながら、一口サイズに切った果物を僕の口元に運ぶ。
「さあ、お食べ。……君の好きなイチゴだよ。……それとも、口移しの方がいいかな?」
『……食べろ。私の与えるものだけを摂取し、私の魔力でその血肉を構成しろ。……君の細胞の一つ一つが、ディルク・フォン・エトワールの所有物であることを認めるまで。……ああ、レアン。君が絶望して、私の腕の中で『愛している』と泣き崩れる顔が、早く見たくて堪らないんだ……!』
(……怖い。この人は、僕を愛しているんじゃない。……僕という存在を、自分の中に閉じ込めてしまいたいだけなんだ……!)
僕は震えながら果物を口にした。
甘いはずのイチゴは、鉄の味がした。
胸の刻印が、殿下の欲望に当てられて熱く疼く。
記憶のない僕は、この歪んだ溺愛の深淵で、刻一刻と自分を失い、彼の一部へと作り替えられていく恐怖に震えるしかなかった。
窓のない地下宮殿。そこは、ディルク殿下が僕を独占するためだけに、王城の真下に作り上げさせた「贅を尽くした牢獄」だった。
壁一面に張り巡らされた魔力水晶が、淡く青白い光を放ち、不気味なほどに静まり返った室内を照らしている。
記憶を失った僕は、巨大な天蓋付きのベッドの上で、ただぼんやりと天井を見つめていた。
手首には、重さを感じさせないほど細く、それでいて決して壊すことのできない「魔力の枷」が嵌められている。
「……おはよう、レアン。気分はどうだい?」
重厚な扉が開き、ディルク殿下が入ってきた。
彼は甲斐甲斐しく、僕のために用意された豪奢な食事を運び、僕の隣に腰を下ろす。
記憶のない僕にとって、彼は「唯一僕を知っている、美しくも恐ろしい支配者」でしかなかった。
「……殿下。……僕は、いつになったらここを出られるんですか?」
僕が怯えながら問いかけると、殿下は悲しげに目を細め、僕の頬を指の背でなぞった。
その瞬間、彼の『本音』が津波のように僕の脳内へ流れ込んでくる。
『……出られるはずがないだろう。……ここは、君を汚すあらゆる雑音から君を守るための、聖域なのだから。……記憶なんて戻らなくていい。……君の空っぽの心に、私への依存だけを詰め込んであげよう。……ああ、その不安に揺れる瞳も、震える唇も、すべてがたまらなく愛おしい。……君が私なしでは食事すら喉を通らない体になるまで、じっくりと飼い慣らしてやる……』
「……っ!」
僕はあまりの執着の深さに息を呑んだ。
記憶を失っても、この能力だけは僕を苦しめ続ける。
殿下は微笑みながら、一口サイズに切った果物を僕の口元に運ぶ。
「さあ、お食べ。……君の好きなイチゴだよ。……それとも、口移しの方がいいかな?」
『……食べろ。私の与えるものだけを摂取し、私の魔力でその血肉を構成しろ。……君の細胞の一つ一つが、ディルク・フォン・エトワールの所有物であることを認めるまで。……ああ、レアン。君が絶望して、私の腕の中で『愛している』と泣き崩れる顔が、早く見たくて堪らないんだ……!』
(……怖い。この人は、僕を愛しているんじゃない。……僕という存在を、自分の中に閉じ込めてしまいたいだけなんだ……!)
僕は震えながら果物を口にした。
甘いはずのイチゴは、鉄の味がした。
胸の刻印が、殿下の欲望に当てられて熱く疼く。
記憶のない僕は、この歪んだ溺愛の深淵で、刻一刻と自分を失い、彼の一部へと作り替えられていく恐怖に震えるしかなかった。
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