最強勇者パーティーの「普通」担当 〜平凡な村人の僕、伝説の英雄たちに離してもらえません!〜

たら昆布

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7話

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 隣町『ミスタ』に到着した瞬間、僕は激しい後悔に襲われていた。
 この町はナギの村よりもずっと大きく、市場も活気にあふれている。本来なら、新しい調味料や保存食の買い出しを楽しみにして歩くはずだった。

 けれど、今の僕は「公開処刑」を受けているような気分だ。

「……ねえ、あの人たち見て」
「嘘でしょ、本物の王子様じゃない? 三人とも……」
「金髪の人、眩しすぎて直視できないわ! 隣の眼鏡の人も、なんて冷たい美貌なの……」
「うわ、あっちの赤髪の人、本物の獣人だよ! あんなに立派なガタイ、見たことない!」

 市場を歩く町の人々が、モーゼの十戒のように左右に割れていく。
 その中心を、金髪のアレク様、黒髪のヴィンス様、赤髪のガイル様が悠然と歩いている。そして、その真ん中で、古びた麻袋を抱えた「あまりに普通」な僕が、縮こまって歩いているのだ。

(あああ……恥ずかしい。消えたい。穴を掘って埋まりたい……!)

 彼らが一歩歩くたびに、キラキラとしたエフェクトが周囲に散っている気がする。いや、ヴィンス様に至っては、本当に何かの魔術的な演出で光を調整しているんじゃないかと思う。

「テオ。……そんなに俯いて歩いていたら、前の荷車にぶつかってしまうよ」
 アレク様がそっと僕の腰に手を添えた。その自然な動作がまた、周囲の女性たちの悲鳴を誘う。
「アレク様、お願いですから離れてください。僕、ただの荷物持ちだと思われてますから」
「荷物持ち? まさか。君は俺たちの『守るべき宝』だよ。ほら、足元に石がある。転ばないように、俺の手を掴んで」
「石くらい自分で避けます!」

 アレク様の差し出した美しい手を振り払い、僕は早足で乾物屋へ向かった。
 すると今度は、ヴィンス様がすっと僕の横に並ぶ。彼は銀縁眼鏡を指で押し上げ、市場の喧騒を不快そうに見下ろした。

「……酷い雑踏だ。テオ、人の脂(あぶら)や雑菌が君に触れるのは容認できません。私の周囲に張った空間遮断結界の中に入りなさい」
「ヴィンス様、結界って……。そんなの張ったら、お店の人と会話ができないじゃないですか」
「交渉なら私が行います。君は、ただ私の影に隠れていればいい」
「買い物くらい自分でさせてください! 主婦……じゃなくて、村人の意地があるんですから!」

 結局、ヴィンス様は僕が選んだ塩漬けの魚を「これは衛生的に……」と魔法で分析し始め、店主を震え上がらせてしまった。

「おーい、テオ! あっちに美味そうな串焼き売ってるぞ! 半分こしようぜ!」
 ガイル様が大きな声で僕を呼び、周囲の注目をさらに集める。
 彼は大きな袋を片手で軽々と持ち上げ、もう片方の手で僕の腕を掴んだ。
「ほら、食え! テオはもっと肉を食って、体を大きくしないと。俺が夜に抱っこした時、折れそうで怖いんだよ!」
「……っ! 夜に抱っことか、変な誤解を招くような言い方しないでください!」

 ガイル様は「え? 寝袋代わりにしてるだけだろ?」と首を傾げているが、周囲の奥様方の目はすでに「あらやだ、あんな可愛い子を三人で……」という桃色の好奇心に染まっている。

 買い出しが終わる頃には、僕の精神力は完全にゼロになっていた。
 伝説の勇者パーティー。その実力は魔王を倒すほどだが、彼らの最大の武器は「公共の場での破壊的な目立ちっぷり」かもしれない。

「……次は、絶対についてこないでくださいね」
「そんな寂しいことを言わないでおくれ、テオ」
「君の安全は、世界の安寧よりも優先されるべきですから」
「俺、テオがいないと町を破壊しちゃうかもしれないぞ!」

「……もう、勝手にしてください……」

 僕は重い溜息を吐きながら、夕暮れの街道を、キラキラした男たちに囲まれて歩くのだった。
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