無能と捨てられた聖子は隣国の狂犬皇帝に初夜を奪われ執着される~魔力が昂ぶるたびに陛下に抱かれないと壊れてしまいそうです~

たら昆布

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2話

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窓から差し込む朝陽が、豪華な寝室の床に長い影を落としていた。

「……う、ん……」

重い瞼を押し上げると、全身に走る鈍い痛みと熱。
特に、太ももの内側や腰のあたりが、ひどく熱を帯びていて、昨夜の出来事が夢ではなかったことを痛感させる。

(ああ……僕、本当に……)

あんなに激しく、何度も、知らない男の人に抱きつぶされてしまった。
思い出そうとするだけで、顔から火が出るほど恥ずかしい。
神殿の冷たい石床の上で祈るだけだった僕の身体に、昨夜、ヴォルフの熱い魔力と質量が、これでもかというほど刻み込まれたのだ。

「……起きたか、小僧」

すぐ隣から聞こえた低い声に、肩が跳ねる。
見れば、ヴォルフが肘をついてこちらを見下ろしていた。
寝起きだというのに、その瞳には鋭い光が宿り、昨夜の「狂犬」そのものの覇気を纏っている。

「へ、陛下……。おはよう、ございます……」

「……震えるな。壊しはせん。昨夜、あれほど私の下で鳴いていた男とは思えぬ殊勝さだな」

「っ……! それは、その……」

言葉に詰まり、シーツを首元まで引き上げる。
けれど、ヴォルフは無造作にその手を伸ばすと、僕の首筋を強引に指でなぞった。

「あ……」

「見ろ。綺麗に染まっている。――これは、お前が私の所有物だという証だ」

彼の指が触れているのは、昨夜、彼が牙を立てるようにして吸いついた場所。
鏡を見るまでもなく、そこにはひどく鮮やかな「痕」が残っているのが分かった。
それだけではない。
首筋から胸元、そして全身に、彼が僕を支配した証拠が点在している。

「……どうして、僕なんですか。魔力も持たない、神殿の落ちこぼれなのに……」

「まだ気づかぬのか、ユキ」

ヴォルフが顔を近づけてくる。
鼻先が触れそうな距離で、彼は低く笑った。

「お前は『無能』ではない。私の暴走する魔力を、唯一受け止め、浄化できる――極上の『器』だ。昨夜、あれほど注ぎ込んだ私の魔力が、今は跡形もなくお前の中で凪いでいる」

「……っ。僕が、陛下を癒やした……?」

「そうだ。……だが、毒を食らえば、お前自身も毒に染まる。今のお前の身体には、私の魔力が溶け込んでいる。……もう、私の許可なく私から離れることはできんぞ」

「離れない……って、ずっとここに?」

「当たり前だ。お前は私の伴侶として、この宮から一歩も出さぬ。朝から晩まで、私の目の届く場所にいろ」

その言葉は、優しさよりも強い「強制」を感じさせた。
囚われの身。
けれど、どうしてだろう。
彼にこうして見つめられ、支配されていることに、恐怖よりも深い「安らぎ」を覚えてしまうのは。

「さあ、着替えろ。……と言いたいが、その身体では動くのも億劫だろう」

ヴォルフはそう言うと、ベッドの脇にあるベルを鳴らすこともせず、自ら僕を抱き上げた。

「へ、陛下!? 自分で歩けますっ」

「黙っていろ。お前が勝手に動いて、またどこかへ消えるのではないかと気が気ではないのだ」

冗談のようには聞こえなかった。
彼の腕は、折れそうなほど強く僕を抱きしめている。

部屋の隅に置かれた大きな鏡の前に連れて行かれ、僕は自分の姿を見て絶句した。
白い肌の上に、あちこちに散る紅い痕。
そして何より、僕の瞳の奥に、昨夜まではなかった「ヴォルフと同じ緋色の光」が、小さな火種のように宿っていたのだ。

「……これが、陛下の魔力……」

「そうだ。お前が私のそばを離れれば、その火種はお前を内側から焼き尽くすだろう」

ヴォルフは満足そうに、僕の耳たぶを甘噛みした。

「愛しているとはまだ言わぬ。……だが、お前は死ぬまで私のものだ。……分かったな、ユキ?」

「……はい、陛下……」

抗う術など、最初からなかったのだ。
僕は彼の腕の中で、震える唇で肯定の言葉を漏らした。
それが、終わりのない執着の日々の、本当の始まりだとも知らずに。
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