9 / 20
9話
しおりを挟む
エドワード王子が屈辱の中で去ってから、僕の身体の「変質」は、もう誰の目にも明らかなものとなっていた。
「……はぁ、……っ、あ、あ……様……っ」
広い執務室。
ヴォルフ陛下が険しい表情で書類に目を通す傍らで、僕は彼の膝の間に座り込み、その逞しい脚に縋りついていた。
陛下と少しでも肌が離れると、内側から氷の棘が突き刺すような悪寒に襲われる。
それを鎮める唯一の薬は、彼から溢れ出す濃密な魔力だけだった。
「……ユキ。そんなに私の脚を擦って、どうした。……誘っているのか?」
「ちが、います……っ。でも、熱が……足りなくて……もっと、奥まで……」
自分でも信じられないほど、卑しい言葉が口をついて出る。
「無能」と蔑まれていた頃の僕なら、恥ずかしさで死んでいたに違いない。
けれど今の僕は、陛下の魔力という毒なしでは、一分一秒も正気を保てなくなっていた。
「フン、可愛い奴だ。……よし、今日はこのまま謁見を行う。来い、ユキ」
「え……っ? 陛下、そんな……」
僕の当惑を無視して、陛下は僕を横抱きにすると、そのまま多くの家臣が待つ玉座の間へと歩き出した。
重厚な扉が開かれ、ずらりと並んだ貴族や騎士たちの視線が一斉に僕たちに注がれる。
皇帝が、一人の少年を抱きかかえて玉座へ向かうという異常事態。
場内には、言葉にならない動揺が走った。
「陛下……! さすがに、公式の場では……」
側近のカイン様が慌てて進み出ようとするが、ヴォルフ陛下はそれを鋭い一瞥で制した。
「構わん。ユキの体調が優れぬ。私が直々に魔力を供給せねばならんのだ。……文句がある者は、私の魔力暴走を一人で止めてみせろ。今すぐこの場を血の海にしてやろう」
陛下が放つ威圧感に、広間は一瞬で静まり返った。
陛下は玉座に深く腰掛けると、あろうことか僕をその膝の上に座らせ、自分のマントで包み込むようにして抱き寄せた。
「……ひっ、あ……」
マントの中で、陛下の大きな手が僕の腰を強く引き寄せる。
ズボンの薄い布地越しに、陛下の熱い体温が伝わってきた。
その瞬間、身体の奥がジンと痺れ、凍えていた芯がとろけるように解けていく。
「さあ、始めろ。報告を続けろ」
陛下は何事もなかったかのように、家臣たちに命じた。
けれど、マントの下で、彼の指は僕の背中を、腰を、ゆっくりと、けれど執拗になぞり続けている。
家臣たちが真剣な面持ちで国政を論じているすぐそばで、僕は声を押し殺し、陛下の体温に縋りついて震えていた。
「……んっ、……ふ、ぁ……」
「……どうした、ユキ。足りないのか?」
耳元で、陛下だけが聞こえる低音で囁かれる。
彼の手が、僕のシャツの隙間から滑り込み、熱を帯びた肌を直接愛撫した。
家臣たちの声が遠のき、世界には僕と陛下、そして触れ合っている場所の熱さだけが残る。
(だめだ……。みんなに、聞こえてしまう……)
必死で唇を噛んで耐えるけれど、陛下はわざと、僕が一番弱い場所を指先で弾く。
僕はたまらず、彼の肩に顔をうずめ、シーツを噛む代わりに彼の軍服をぎゅっと握りしめた。
「……ほう、今日のユキは積極的だな。……諸君、本日の謁見はここまでだ。あとはカインに任せる」
「へ、陛下!? まだ軍事予算の件が……!」
「黙れ。……私の『器』が、これほどまでに私を欲しているのだ。……優先順位を間違えるな」
ヴォルフ陛下は僕を抱えたまま立ち上がると、唖然とする家臣たちを残して、疾風のように玉座の間を後にした。
向かう先は、二人だけの離宮。
「ユキ。……お前が悪いのだぞ。人前だというのに、そんなに熱い吐息を私に浴びせて……」
「陛下……っ、陛下が、あんな……っ」
「……もう限界だ。お前の中に、私の魔力を残らず注ぎ込んでやる。……空っぽになるまで、私を飲み込め」
寝室に放り込まれた瞬間、昨夜よりもさらに激しい、狂気にも似た情熱が僕を襲った。
身体中の細胞が、彼の魔力を吸い込んで、歓喜に震える。
けれど、僕は気づいていなかった。
これほどまでに陛下の魔力を吸い取り続けている僕の身体が、徐々に、人間とは違う「別の何か」へと変質し始めていることに。
そして、それこそが、エデン教国の真の狙いである「人造の神」の器の完成であることを。
二人の愛欲が深まれば深まるほど、破滅へのカウントダウンは着実に進んでいた――。
「……はぁ、……っ、あ、あ……様……っ」
広い執務室。
ヴォルフ陛下が険しい表情で書類に目を通す傍らで、僕は彼の膝の間に座り込み、その逞しい脚に縋りついていた。
陛下と少しでも肌が離れると、内側から氷の棘が突き刺すような悪寒に襲われる。
それを鎮める唯一の薬は、彼から溢れ出す濃密な魔力だけだった。
「……ユキ。そんなに私の脚を擦って、どうした。……誘っているのか?」
「ちが、います……っ。でも、熱が……足りなくて……もっと、奥まで……」
自分でも信じられないほど、卑しい言葉が口をついて出る。
「無能」と蔑まれていた頃の僕なら、恥ずかしさで死んでいたに違いない。
けれど今の僕は、陛下の魔力という毒なしでは、一分一秒も正気を保てなくなっていた。
「フン、可愛い奴だ。……よし、今日はこのまま謁見を行う。来い、ユキ」
「え……っ? 陛下、そんな……」
僕の当惑を無視して、陛下は僕を横抱きにすると、そのまま多くの家臣が待つ玉座の間へと歩き出した。
重厚な扉が開かれ、ずらりと並んだ貴族や騎士たちの視線が一斉に僕たちに注がれる。
皇帝が、一人の少年を抱きかかえて玉座へ向かうという異常事態。
場内には、言葉にならない動揺が走った。
「陛下……! さすがに、公式の場では……」
側近のカイン様が慌てて進み出ようとするが、ヴォルフ陛下はそれを鋭い一瞥で制した。
「構わん。ユキの体調が優れぬ。私が直々に魔力を供給せねばならんのだ。……文句がある者は、私の魔力暴走を一人で止めてみせろ。今すぐこの場を血の海にしてやろう」
陛下が放つ威圧感に、広間は一瞬で静まり返った。
陛下は玉座に深く腰掛けると、あろうことか僕をその膝の上に座らせ、自分のマントで包み込むようにして抱き寄せた。
「……ひっ、あ……」
マントの中で、陛下の大きな手が僕の腰を強く引き寄せる。
ズボンの薄い布地越しに、陛下の熱い体温が伝わってきた。
その瞬間、身体の奥がジンと痺れ、凍えていた芯がとろけるように解けていく。
「さあ、始めろ。報告を続けろ」
陛下は何事もなかったかのように、家臣たちに命じた。
けれど、マントの下で、彼の指は僕の背中を、腰を、ゆっくりと、けれど執拗になぞり続けている。
家臣たちが真剣な面持ちで国政を論じているすぐそばで、僕は声を押し殺し、陛下の体温に縋りついて震えていた。
「……んっ、……ふ、ぁ……」
「……どうした、ユキ。足りないのか?」
耳元で、陛下だけが聞こえる低音で囁かれる。
彼の手が、僕のシャツの隙間から滑り込み、熱を帯びた肌を直接愛撫した。
家臣たちの声が遠のき、世界には僕と陛下、そして触れ合っている場所の熱さだけが残る。
(だめだ……。みんなに、聞こえてしまう……)
必死で唇を噛んで耐えるけれど、陛下はわざと、僕が一番弱い場所を指先で弾く。
僕はたまらず、彼の肩に顔をうずめ、シーツを噛む代わりに彼の軍服をぎゅっと握りしめた。
「……ほう、今日のユキは積極的だな。……諸君、本日の謁見はここまでだ。あとはカインに任せる」
「へ、陛下!? まだ軍事予算の件が……!」
「黙れ。……私の『器』が、これほどまでに私を欲しているのだ。……優先順位を間違えるな」
ヴォルフ陛下は僕を抱えたまま立ち上がると、唖然とする家臣たちを残して、疾風のように玉座の間を後にした。
向かう先は、二人だけの離宮。
「ユキ。……お前が悪いのだぞ。人前だというのに、そんなに熱い吐息を私に浴びせて……」
「陛下……っ、陛下が、あんな……っ」
「……もう限界だ。お前の中に、私の魔力を残らず注ぎ込んでやる。……空っぽになるまで、私を飲み込め」
寝室に放り込まれた瞬間、昨夜よりもさらに激しい、狂気にも似た情熱が僕を襲った。
身体中の細胞が、彼の魔力を吸い込んで、歓喜に震える。
けれど、僕は気づいていなかった。
これほどまでに陛下の魔力を吸い取り続けている僕の身体が、徐々に、人間とは違う「別の何か」へと変質し始めていることに。
そして、それこそが、エデン教国の真の狙いである「人造の神」の器の完成であることを。
二人の愛欲が深まれば深まるほど、破滅へのカウントダウンは着実に進んでいた――。
5
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる