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「エルヴィン。お前は俺の『宝』だ。その宝が、くすんだ布を身につけているなど許されん。……最高級の仕立て師を呼んだ。お前を、世界で一番美しい『供給体』に仕立て上げろ」
その日の午後、ゼノス様は満足げにそう告げた。
彼の言葉に、僕は思わず頬を引きつらせる。
(供給体って、堂々と言い切るんだ……)
現れた仕立て師は、体中をメジャーだらけにした、いかにもプロといった風情の小柄な男だった。
しかし、彼が差し出してきたデザイン画を見て、僕は思わず二度見した。
「あの……ゼノス様。これは……服、ですか?」
デザイン画に描かれていたのは、どう見ても『服』というよりは『飾りのついた布切れ』だった。
背中は大胆に開き、胸元は肌が透けて見えるほど薄い生地。腕は細いリボンで結ばれており、歩くたびに鈴のような飾りがチリン、チリンと鳴りそうだ。
「そうだ。美しいだろう? これは俺のエルヴィンが、どれだけ最高級の魔力供給体であるかを世界に示す、いわば『正装』だ」
「どこが正装なんですか!? これ、絶対、夜の部屋着か、どこかの踊り子さんの衣装ですよね!?」
僕が必死に抗議するが、ゼノス様は聞く耳を持たない。
それどころか、仕立て師に「この鈴の数は、もう少し増やせるか? あと、生地はさらに透けるように」などと、悪魔のような追加注文を出している。
「ゼノス様! こんな服、外に着ていけません! ていうか、着ていける場所がありません!」
「馬鹿を言うな。俺の執務室で着ていれば十分だろう。……ああ、そうだ。これで毎日俺の側で『供給』する姿を晒せば、誰もがエルヴィンに手を出せなくなる。一石二鳥だ」
(そんな目的!? 僕を人質にしてるみたいじゃないですか!)
仕立て師は困った顔で僕とゼノス様を交互に見ていたが、魔王の威圧感には逆らえないらしく、「かしこまりました」と力なく答えるしかなかった。
「これでエルヴィンの魔力も、俺の愛情も、余すところなく皆に知らしめることができる。フフフ……最高のアイデアだ」
ゼノス様は自分のセンスに酔いしれているが、僕の羞恥心は限界を迎えつつあった。
この魔王、僕を溺愛しているのはわかる。だけど、その表現方法が、どうにも変態の領域に片足突っ込んでいる気がする。
数日後、完成した衣装は、デザイン画よりもさらにけしからんものとなっていた。
背中の大きく開いた部分からは、ゼノス様がつけた噛み跡が色濃く見え、胸元の薄い生地は、僕の肌を透過して今にも弾けそうな乳首を主張している。
そして何より、歩くたびにチリン、チリンと鳴る鈴の音が、僕の存在を城中に知らしめる。
「……ゼノス様。僕、この格好で執務室には行けません」
鏡の前で呆然とする僕に、ゼノス様は背後から抱きつき、僕の首筋に顔を埋めた。
「何を言う。完璧じゃないか。……ほら、首筋のこの痕。もっと多くの者に見せつけろ。お前が誰の物であるか、刻みつけてやろう」
彼の熱い唇が、再び僕の肌を這う。
「ひゃ、やめてください……っ。また痕が増えちゃう……!」
「構わん。むしろ、もっと増やすべきだ。お前の白い肌を、俺の愛の証で埋め尽くしてやる」
(これ、愛っていうか……縄張り主張ですよね!?)
僕は、これからこの恰好でゼノス様の執務室に行き、彼が仕事をする間、ずっと鈴を鳴らしながら「供給」の準備をさせられることを想像して、遠い目になった。
この魔王の愛は、僕の人生の自由だけでなく、羞恥心まで奪っていくらしい。
その日の午後、ゼノス様は満足げにそう告げた。
彼の言葉に、僕は思わず頬を引きつらせる。
(供給体って、堂々と言い切るんだ……)
現れた仕立て師は、体中をメジャーだらけにした、いかにもプロといった風情の小柄な男だった。
しかし、彼が差し出してきたデザイン画を見て、僕は思わず二度見した。
「あの……ゼノス様。これは……服、ですか?」
デザイン画に描かれていたのは、どう見ても『服』というよりは『飾りのついた布切れ』だった。
背中は大胆に開き、胸元は肌が透けて見えるほど薄い生地。腕は細いリボンで結ばれており、歩くたびに鈴のような飾りがチリン、チリンと鳴りそうだ。
「そうだ。美しいだろう? これは俺のエルヴィンが、どれだけ最高級の魔力供給体であるかを世界に示す、いわば『正装』だ」
「どこが正装なんですか!? これ、絶対、夜の部屋着か、どこかの踊り子さんの衣装ですよね!?」
僕が必死に抗議するが、ゼノス様は聞く耳を持たない。
それどころか、仕立て師に「この鈴の数は、もう少し増やせるか? あと、生地はさらに透けるように」などと、悪魔のような追加注文を出している。
「ゼノス様! こんな服、外に着ていけません! ていうか、着ていける場所がありません!」
「馬鹿を言うな。俺の執務室で着ていれば十分だろう。……ああ、そうだ。これで毎日俺の側で『供給』する姿を晒せば、誰もがエルヴィンに手を出せなくなる。一石二鳥だ」
(そんな目的!? 僕を人質にしてるみたいじゃないですか!)
仕立て師は困った顔で僕とゼノス様を交互に見ていたが、魔王の威圧感には逆らえないらしく、「かしこまりました」と力なく答えるしかなかった。
「これでエルヴィンの魔力も、俺の愛情も、余すところなく皆に知らしめることができる。フフフ……最高のアイデアだ」
ゼノス様は自分のセンスに酔いしれているが、僕の羞恥心は限界を迎えつつあった。
この魔王、僕を溺愛しているのはわかる。だけど、その表現方法が、どうにも変態の領域に片足突っ込んでいる気がする。
数日後、完成した衣装は、デザイン画よりもさらにけしからんものとなっていた。
背中の大きく開いた部分からは、ゼノス様がつけた噛み跡が色濃く見え、胸元の薄い生地は、僕の肌を透過して今にも弾けそうな乳首を主張している。
そして何より、歩くたびにチリン、チリンと鳴る鈴の音が、僕の存在を城中に知らしめる。
「……ゼノス様。僕、この格好で執務室には行けません」
鏡の前で呆然とする僕に、ゼノス様は背後から抱きつき、僕の首筋に顔を埋めた。
「何を言う。完璧じゃないか。……ほら、首筋のこの痕。もっと多くの者に見せつけろ。お前が誰の物であるか、刻みつけてやろう」
彼の熱い唇が、再び僕の肌を這う。
「ひゃ、やめてください……っ。また痕が増えちゃう……!」
「構わん。むしろ、もっと増やすべきだ。お前の白い肌を、俺の愛の証で埋め尽くしてやる」
(これ、愛っていうか……縄張り主張ですよね!?)
僕は、これからこの恰好でゼノス様の執務室に行き、彼が仕事をする間、ずっと鈴を鳴らしながら「供給」の準備をさせられることを想像して、遠い目になった。
この魔王の愛は、僕の人生の自由だけでなく、羞恥心まで奪っていくらしい。
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