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15話
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「……あ、……っ、あぁぁぁぁっ!!」
神殿の聖域に、僕の絶叫が響き渡る。
お腹の奥から突き上げてくる衝撃は、骨を砕き、内臓を焼き尽くすような凄まじい熱量を伴っていた。
龍の御子の誕生は、人間の出産とは根本から異なる。僕の体内にある龍の魔力が、外の世界へ出ようとして暴れ狂っているのだ。
「ナギ! ナギ、しっかりしろ! 僕の手を、僕の魂を掴むんだ!」
クロム様が、折れんばかりの力で僕の手を握りしめている。
魂を分けた彼にも、僕のこの引き裂かれるような激痛がすべて伝わっているはずだ。彼の額からも滝のような汗が流れ、真紅の瞳は苦痛に歪んでいる。
「クロム、魔力を流し続けて! ナギさんの器を維持するのよ!」
サリアさんの鋭い声が飛ぶ。彼女は幾重もの魔法陣を展開し、僕の身体が魔力の暴走で霧散しないよう必死に繋ぎ止めていた。
入り口では、ヴォルグさんが背を向けて立ち、神殿に集まってくる精霊たちの奔流を剣気で抑え込んでいる。
「……っ、いや、……だ……! クロム、さま……、くるしい……っ!」
「わかっている、僕も一緒だ! 一人にはさせない。……ナギ、僕を見ろ! 僕だけを見ていろ!」
クロム様が僕の額を合わせ、自らの魔力を強引に僕の中へと流し込んでくる。
その瞬間、視界が真っ白な光に染まった。
僕とお腹の子、そしてクロム様の意識が、魂の深淵で一つに溶け合う。
(……お父さん、お母さん)
透き通った声が、頭の中に響いた。
それは、愛おしくてたまらない、新しい命の産声だった。
「――っ、あああああぁぁぁぁっ!!!」
僕の身体から、黄金の光の柱が天を衝いて放たれた。
神殿全体が、まるで巨大な龍が産声を上げたかのように激しく震動する。
やがて光が収まり、静寂が戻った聖域。
激しい息を切らす僕の腕の中に、それはあった。
「……卵、……?」
それは、真珠のような光沢を放ち、金色の紋様が刻まれた、両手で抱えるほどの大きさの卵だった。
龍の子供は、卵で産まれ、親の魔力を浴びて孵化するのだ。
卵からは、トクン、トクンと力強く、けれど穏やかな鼓動が聞こえてくる。
「……産まれたわね。……本当によく頑張ったわ、ナギさん」
サリアさんが安堵したように膝をついた。
ヴォルグさんも静かに剣を納め、深々と頭を下げる。
僕は震える腕で、まだ温かいその卵を抱きしめた。
「……クロム、様……。僕たちの、赤ちゃん……ですよ……」
「……ああ。……ああ……」
クロム様は、僕と卵をまとめて包み込むように抱きしめた。
彼の大きな肩が、激しく震えている。
「ありがとう、ナギ。……本当に、ありがとう。……君を拾ったあの日、僕は君に救われる運命だったんだね」
クロム様の涙が、僕の頬に落ちる。
生贄として谷底へ落とされた僕。
孤独に数百年を過ごした龍神の彼。
欠けていた二つの魂が、ひとつの新しい命を紡ぎ出した。
「きゅうー! きゅうぅぅん!」
テトが僕たちの足元に駆け寄り、卵を不思議そうに覗き込んでいる。
「テト、君もお兄ちゃんだね」
僕が弱々しく笑うと、クロム様は僕の唇に、これまでにないほど優しく、深い愛を込めた口付けを贈った。
けれど、幸福に浸る僕たちの耳に、サリアの冷静な声が響く。
「感動しているところ悪いけれど、これからが本番よ。龍の卵を狙う輩は、人間だけじゃない。この光を見た古の魔物たちが、放っておくはずがないわ」
クロム様の瞳が、一瞬で鋭い守護者のものへと変わった。
「……わかっている。……ナギ、そして我が子よ。この命が尽き果てても、僕が君たちの安らぎを汚させはしない」
新しい家族の誕生。
それは、さらなる激動の運命への幕開けでもあった。
神殿の聖域に、僕の絶叫が響き渡る。
お腹の奥から突き上げてくる衝撃は、骨を砕き、内臓を焼き尽くすような凄まじい熱量を伴っていた。
龍の御子の誕生は、人間の出産とは根本から異なる。僕の体内にある龍の魔力が、外の世界へ出ようとして暴れ狂っているのだ。
「ナギ! ナギ、しっかりしろ! 僕の手を、僕の魂を掴むんだ!」
クロム様が、折れんばかりの力で僕の手を握りしめている。
魂を分けた彼にも、僕のこの引き裂かれるような激痛がすべて伝わっているはずだ。彼の額からも滝のような汗が流れ、真紅の瞳は苦痛に歪んでいる。
「クロム、魔力を流し続けて! ナギさんの器を維持するのよ!」
サリアさんの鋭い声が飛ぶ。彼女は幾重もの魔法陣を展開し、僕の身体が魔力の暴走で霧散しないよう必死に繋ぎ止めていた。
入り口では、ヴォルグさんが背を向けて立ち、神殿に集まってくる精霊たちの奔流を剣気で抑え込んでいる。
「……っ、いや、……だ……! クロム、さま……、くるしい……っ!」
「わかっている、僕も一緒だ! 一人にはさせない。……ナギ、僕を見ろ! 僕だけを見ていろ!」
クロム様が僕の額を合わせ、自らの魔力を強引に僕の中へと流し込んでくる。
その瞬間、視界が真っ白な光に染まった。
僕とお腹の子、そしてクロム様の意識が、魂の深淵で一つに溶け合う。
(……お父さん、お母さん)
透き通った声が、頭の中に響いた。
それは、愛おしくてたまらない、新しい命の産声だった。
「――っ、あああああぁぁぁぁっ!!!」
僕の身体から、黄金の光の柱が天を衝いて放たれた。
神殿全体が、まるで巨大な龍が産声を上げたかのように激しく震動する。
やがて光が収まり、静寂が戻った聖域。
激しい息を切らす僕の腕の中に、それはあった。
「……卵、……?」
それは、真珠のような光沢を放ち、金色の紋様が刻まれた、両手で抱えるほどの大きさの卵だった。
龍の子供は、卵で産まれ、親の魔力を浴びて孵化するのだ。
卵からは、トクン、トクンと力強く、けれど穏やかな鼓動が聞こえてくる。
「……産まれたわね。……本当によく頑張ったわ、ナギさん」
サリアさんが安堵したように膝をついた。
ヴォルグさんも静かに剣を納め、深々と頭を下げる。
僕は震える腕で、まだ温かいその卵を抱きしめた。
「……クロム、様……。僕たちの、赤ちゃん……ですよ……」
「……ああ。……ああ……」
クロム様は、僕と卵をまとめて包み込むように抱きしめた。
彼の大きな肩が、激しく震えている。
「ありがとう、ナギ。……本当に、ありがとう。……君を拾ったあの日、僕は君に救われる運命だったんだね」
クロム様の涙が、僕の頬に落ちる。
生贄として谷底へ落とされた僕。
孤独に数百年を過ごした龍神の彼。
欠けていた二つの魂が、ひとつの新しい命を紡ぎ出した。
「きゅうー! きゅうぅぅん!」
テトが僕たちの足元に駆け寄り、卵を不思議そうに覗き込んでいる。
「テト、君もお兄ちゃんだね」
僕が弱々しく笑うと、クロム様は僕の唇に、これまでにないほど優しく、深い愛を込めた口付けを贈った。
けれど、幸福に浸る僕たちの耳に、サリアの冷静な声が響く。
「感動しているところ悪いけれど、これからが本番よ。龍の卵を狙う輩は、人間だけじゃない。この光を見た古の魔物たちが、放っておくはずがないわ」
クロム様の瞳が、一瞬で鋭い守護者のものへと変わった。
「……わかっている。……ナギ、そして我が子よ。この命が尽き果てても、僕が君たちの安らぎを汚させはしない」
新しい家族の誕生。
それは、さらなる激動の運命への幕開けでもあった。
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