生贄のオメガは孤独な黒龍に愛の刻印を刻まれる

たら昆布

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17話

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「……あああぁぁぁっ!!」

 水晶の核に触れた瞬間、僕の全身を、灼熱のマグマのような魔力が駆け巡った。
 『龍脈』――この世界の根源たるエネルギーが、僕という器を通り道にして、地上のクロム様へと流れ込んでいく。

「ナギさん! もうやめて、精神が焼き切れるわ!」

 サリアさんの制止も、今の僕には遠くかすんで聞こえる。
 魂の繋がりを通して、クロム様の痛みが僕に流れ、僕の祈りが彼に届く。
 地上の彼は、すでに満身創痍だった。美しい漆黒の鱗は剥がれ落ち、深淵の魔王が放つ漆黒の毒に蝕まれながらも、彼は一歩も引かずに神殿の入り口を守り続けている。

(……ナギ、……やめろ……。戻れ、……死んでしまう……!)

 クロム様の悲痛な叫びが、脳裏に響く。
 でも、僕は微笑んだ。

(……いいえ、クロム様。僕たちは、二人でひとつでしょう?)

 その時だった。
 腕の中に抱いていた黄金の卵が、激しく、脈打つように震えた。
 僕が龍脈から引き出した膨大な魔力が、卵の中の「御子」にも注ぎ込まれていたのだ。

 パキィィィィン――ッ!

 聖域に、清冽な音が響き渡った。
 卵の殻に、一筋の亀裂が入る。そこから溢れ出したのは、闇を一切寄せ付けない、純白に近い黄金の光だった。

「きゅう、……きゅあぁぁぁぁぁん!!」

 テトが歓喜の声を上げる。
 卵の殻が砕け散り、中から姿を現したのは、透き通るような白銀の鱗を持つ、小さな小さな龍だった。
 その仔龍は、産まれた瞬間から空中にふわりと浮き上がると、僕の頬を一度だけ愛おしげに舐め、そのまま一直線に天井を突き抜けて地上へと飛び去った。

「……あ、……あの子……っ!」

 ――地上では。
 深淵の魔王が、トドメの一撃を放とうと巨大な鎌を振り上げていた。
 クロムは薄れゆく意識の中で、ナギと子供のことだけを案じ、瞳を閉じようとしていた。

 だが、その鎌が振り下ろされる直前。
 天から降り注いだ黄金の雷が、魔王の腕を焼き飛ばした。

「……グガァァッ!? なんだ、この光は……!」

 魔王が驚愕に目を見開く。
 クロムの目の前には、白銀の光を纏った小さな命が立ちはだかっていた。
 仔龍は小さく咆哮した。それは、世界を浄化する聖なる調べ。

「……っ、……御子……? 僕の、息子なのか……?」

 クロムが震える声で呟く。
 御子が放つ光は、クロムの身体に回っていた毒を瞬時に浄化し、傷を癒していく。
 それだけではない。地下で龍脈と繋がっているナギの魔力が、御子を中継して、完全な形でクロムへと還流したのだ。

「……ふは、……ははははっ!」

 クロムが、狂気すら感じる歓喜の笑声を上げた。
 全身の鱗が再生し、以前よりもさらに鋭く、美しく光り輝く。
 
「よくやった、我が子よ。……さあ、ナギ。僕に力を貸してくれ。……僕たちの家を汚したこのゴミを、一欠片も残さず消し去ろう」

 クロムと御子、そして地下のナギ。
 三つの魂が完全に共鳴し、ひとつの巨大な『神の意志』となった。

 クロムが大きく口を開く。
 放たれたのは、漆黒と黄金が混ざり合った、万物を無に帰す究極の咆哮。

「滅べ」

 その一撃は、深淵の魔王も、群がる魔物たちも、そしてこの地を覆っていた絶望の闇さえも、跡形もなく飲み込んでいった。
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