聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布

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6話

 アキが聖獣ポムを「よしよし」で手懐けてから数日。王宮には、友好国であるラズワルド王国から使節団が到着していた。

「お初にお目にかかる、麗しき聖獣番。君が噂の『万獣の友』、アキだね?」

 目の前に現れたのは、プラチナブロンドの長い髪をなびかせた、まるでお伽話から抜け出したような美青年、セレス王子だった。
 彼はアキの前に跪くと、その指先をそっと取り、うっとりと見つめてきた。

「私の国には、心を閉ざした伝説の白虎がいるんだ。君のような愛らしい人が側にいてくれたら、きっと彼も心を開く。……どうだろう、私と一緒に来ないかい? 待遇は今の十倍、いや、私の『公認の愛人』という地位も約束しよう」

「は、はい!? あいじん……?」

 あまりに直球な口説き文句に、アキがポカンと口を開けていた、その時。

 ――ドォォォォン!!

 凄まじい風圧と共に、アキとセレス王子の間に一本の巨大な魔剣が突き立てられた。
 大理石の床が粉々に砕け散り、周囲の騎士たちが悲鳴を上げて飛び退く。

「……セレス王子。我が国の『重要機密事項』にみだりに触れるのは、宣戦布告と受け取ってもよろしいかな?」

 そこに立っていたのは、全身から氷点下の魔力を撒き散らすゼクス団長だった。
 その瞳はもはや青い瞳ではなく、獲物を屠る獣のような鋭い光を放っている。

「やあ、ゼクス。相変わらず顔が怖いね。私はただ、彼をスカウトしているだけだよ」

「スカウトだと? 貴様、今『愛人』と言ったな。……聞き捨てならんな」

 ゼクスはアキの腰を強引に引き寄せると、自分の背中に隠すようにして立ちはだかった。その腕の力は、アキが「痛いっす!」と声を上げそうになるほど強い。

「アキは私の……いや、我が騎士団の所有物だ。指一本、視線一つ触れさせるわけにはいかない」

「おやおや、独占欲の塊だ。でもアキ君、こんな怖い男と一緒にいても疲れちゃうだろう? ほら、私のところへおいで」

 セレス王子が手を差し伸べると、アキの胸元からポムが顔を出し、『アキは渡さないポム! このキラキラした奴、嘘つきの匂いがするポム!』と威嚇の声を上げた。
 
 ルルもアキの肩で『そうだぞ、アキは我の抱き枕だ。人間ごときが横取りするなど万死に値する』と不機嫌そうに尻尾を振る。

「……セレス王子。返答は聖獣様たちが出したようだ」

 ゼクスは勝ち誇ったような笑みを浮かべたが、その直後、アキを抱き上げたまま、部下たちに言い放った。

「これよりアキは『最高警戒レベルの保護対象』に指定する。本日から外出を禁じ、二十四時間体制で私が直接、自室にて監視……いや、守護する!」

「えええええっ!? 団長、それって軟禁じゃないですか!?」

「黙れ。これは貴様を悪い虫から守るための、愛……いや、正当な防衛措置だ」

 ゼクスはアキを米袋のように担ぎ上げると、猛烈な勢いで自分の部屋へと連れ去っていった。
 その様子を、物陰から見ていたリナ聖女は、鼻血をダラダラと流しながら水晶に記録していた。

「……『愛人志願のライバル登場で、ついに本性を現した騎士団長の強引お持ち帰り』……。あああ、最高……! 供給が多すぎて命が足りない……っ!」

 こうして、アキの「団長室軟禁生活」がスタートしてしまった。
 恋愛感情に疎いアキも、さすがに心臓がうるさく鳴り始めるのを止められなかったが、それがゼクスの「愛」によるものだとは、まだ認めたくない自分もいた。
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