18 / 24
18話
しおりを挟む
幼児化の呪いは解けたものの、強力な魔法には往々にして「副作用」が伴う。
アキの場合、それは『感情が高ぶると、一時的に手懐けた聖獣の性質が混ざる』という、なんとも厄介なものだった。
「……だんじょー。なんだか、頭のあたりがムズムズします」
朝食の席でアキが首を傾げた瞬間、ふわふわの茶髪の間から、ルルと同じような「白いウサギの耳」がひょこっと飛び出した。
「なっ……!?」
正面に座っていたゼクスが、持っていた銀のスプーンを握りつぶした。
青い瞳が大きく見開かれ、獲物を見つけた猛獣のような熱を帯びる。
「……アキ。貴様、それは何のつもりだ。私を……私を悶え死にさせるつもりか?」
「えっ、あ、耳ですか!? うわ、本当だ……。ルル、これどうしたら治るの?」
『知らん。我への愛が溢れ出した証拠だろう。誇りに思うが良い』
ルルは得意げだが、アキ本人は大慌てだ。しかも、耳が出ている間はなぜか「誰かに構ってほしい」という強烈な欲求が湧き上がってくる。
アキは無意識のうちに、隣に座るゼクスの袖をクイクイと引っ張った。
「……あの、団長。なんだか落ち着かなくて……。……よしよし、してくれませんか?」
上目遣いで、プルプルと震えるウサ耳。
アキ本人は至って真面目に「落ち着くための処置」を求めているのだが、ゼクスにとっては最高級の誘惑(ハニートラップ)でしかなかった。
「……いいだろう。だが、場所を変える。……ここでは、他の騎士たちの目に触れる」
ゼクスは低い声で告げると、アキを横抱き(お姫様抱っこ)にして、そのまま奥の寝室へと連れ去った。
「わっ、団長!? 歩けますって!」
「黙れ。今の貴様は、外に出すと国中の男を狂わせる。……私の腕の中だけで、大人しく甘えていろ」
寝室のベッドに下ろされると、ゼクスはアキを閉じ込めるように両手を突き、じりじりと顔を近づけた。
大きな手がアキの耳の付け根を優しく撫でると、アキは「ひゃんっ」と可愛らしい声を漏らして、ゼクスの胸に顔を埋める。
「……アキ。貴様が私を頼るなら、私も相応の覚悟を決めるぞ。……もう、単なる『騎士と聖獣番』の距離では満足できん」
ゼクスの熱い指先が、アキの頬をなぞり、唇に触れる。
いつもはコメディ調のゼクスだが、今の彼は、一人の男としてアキを「愛で尽くそう」とする熱情に満ちていた。
アキの心臓が、耳の動きと連動するように激しく鼓動する。
(……どうしよう。団長の顔が、かっこよすぎて直視できない……)
その時、部屋の扉の外で「ぎゃああああ! ケモ耳受け! 独占欲攻めによる寝室お持ち帰り! ページが足りない、インクを、インクを持ってきなさーーい!」と叫ぶリナの声が響き、二人の間に流れていた濃密な空気が霧散した。
「…………リナ殿。後で、重い訓練メニューを課しておこう」
「あはは……。まあ、団長。耳、引っ込みましたよ」
ゼクスは悔しそうに舌打ちをしたが、アキの顔が真っ赤になっているのを見て、わずかに口角を上げた。
「……まあいい。アキ、耳がなくても、私への『おねだり』はいつでも受け付けてやる。……次は、逃がさんぞ」
ゼクスの執着は、アキの変化をきっかけに、より深い愛へと根を張っていくのだった。
アキの場合、それは『感情が高ぶると、一時的に手懐けた聖獣の性質が混ざる』という、なんとも厄介なものだった。
「……だんじょー。なんだか、頭のあたりがムズムズします」
朝食の席でアキが首を傾げた瞬間、ふわふわの茶髪の間から、ルルと同じような「白いウサギの耳」がひょこっと飛び出した。
「なっ……!?」
正面に座っていたゼクスが、持っていた銀のスプーンを握りつぶした。
青い瞳が大きく見開かれ、獲物を見つけた猛獣のような熱を帯びる。
「……アキ。貴様、それは何のつもりだ。私を……私を悶え死にさせるつもりか?」
「えっ、あ、耳ですか!? うわ、本当だ……。ルル、これどうしたら治るの?」
『知らん。我への愛が溢れ出した証拠だろう。誇りに思うが良い』
ルルは得意げだが、アキ本人は大慌てだ。しかも、耳が出ている間はなぜか「誰かに構ってほしい」という強烈な欲求が湧き上がってくる。
アキは無意識のうちに、隣に座るゼクスの袖をクイクイと引っ張った。
「……あの、団長。なんだか落ち着かなくて……。……よしよし、してくれませんか?」
上目遣いで、プルプルと震えるウサ耳。
アキ本人は至って真面目に「落ち着くための処置」を求めているのだが、ゼクスにとっては最高級の誘惑(ハニートラップ)でしかなかった。
「……いいだろう。だが、場所を変える。……ここでは、他の騎士たちの目に触れる」
ゼクスは低い声で告げると、アキを横抱き(お姫様抱っこ)にして、そのまま奥の寝室へと連れ去った。
「わっ、団長!? 歩けますって!」
「黙れ。今の貴様は、外に出すと国中の男を狂わせる。……私の腕の中だけで、大人しく甘えていろ」
寝室のベッドに下ろされると、ゼクスはアキを閉じ込めるように両手を突き、じりじりと顔を近づけた。
大きな手がアキの耳の付け根を優しく撫でると、アキは「ひゃんっ」と可愛らしい声を漏らして、ゼクスの胸に顔を埋める。
「……アキ。貴様が私を頼るなら、私も相応の覚悟を決めるぞ。……もう、単なる『騎士と聖獣番』の距離では満足できん」
ゼクスの熱い指先が、アキの頬をなぞり、唇に触れる。
いつもはコメディ調のゼクスだが、今の彼は、一人の男としてアキを「愛で尽くそう」とする熱情に満ちていた。
アキの心臓が、耳の動きと連動するように激しく鼓動する。
(……どうしよう。団長の顔が、かっこよすぎて直視できない……)
その時、部屋の扉の外で「ぎゃああああ! ケモ耳受け! 独占欲攻めによる寝室お持ち帰り! ページが足りない、インクを、インクを持ってきなさーーい!」と叫ぶリナの声が響き、二人の間に流れていた濃密な空気が霧散した。
「…………リナ殿。後で、重い訓練メニューを課しておこう」
「あはは……。まあ、団長。耳、引っ込みましたよ」
ゼクスは悔しそうに舌打ちをしたが、アキの顔が真っ赤になっているのを見て、わずかに口角を上げた。
「……まあいい。アキ、耳がなくても、私への『おねだり』はいつでも受け付けてやる。……次は、逃がさんぞ」
ゼクスの執着は、アキの変化をきっかけに、より深い愛へと根を張っていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる