聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布

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18話

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 幼児化の呪いは解けたものの、強力な魔法には往々にして「副作用」が伴う。
 アキの場合、それは『感情が高ぶると、一時的に手懐けた聖獣の性質が混ざる』という、なんとも厄介なものだった。

「……だんじょー。なんだか、頭のあたりがムズムズします」

 朝食の席でアキが首を傾げた瞬間、ふわふわの茶髪の間から、ルルと同じような「白いウサギの耳」がひょこっと飛び出した。

「なっ……!?」

 正面に座っていたゼクスが、持っていた銀のスプーンを握りつぶした。
 青い瞳が大きく見開かれ、獲物を見つけた猛獣のような熱を帯びる。

「……アキ。貴様、それは何のつもりだ。私を……私を悶え死にさせるつもりか?」

「えっ、あ、耳ですか!? うわ、本当だ……。ルル、これどうしたら治るの?」

『知らん。我への愛が溢れ出した証拠だろう。誇りに思うが良い』
 
 ルルは得意げだが、アキ本人は大慌てだ。しかも、耳が出ている間はなぜか「誰かに構ってほしい」という強烈な欲求が湧き上がってくる。
 アキは無意識のうちに、隣に座るゼクスの袖をクイクイと引っ張った。

「……あの、団長。なんだか落ち着かなくて……。……よしよし、してくれませんか?」

 上目遣いで、プルプルと震えるウサ耳。
 アキ本人は至って真面目に「落ち着くための処置」を求めているのだが、ゼクスにとっては最高級の誘惑(ハニートラップ)でしかなかった。

「……いいだろう。だが、場所を変える。……ここでは、他の騎士たちの目に触れる」

 ゼクスは低い声で告げると、アキを横抱き(お姫様抱っこ)にして、そのまま奥の寝室へと連れ去った。

「わっ、団長!? 歩けますって!」

「黙れ。今の貴様は、外に出すと国中の男を狂わせる。……私の腕の中だけで、大人しく甘えていろ」

 寝室のベッドに下ろされると、ゼクスはアキを閉じ込めるように両手を突き、じりじりと顔を近づけた。
 大きな手がアキの耳の付け根を優しく撫でると、アキは「ひゃんっ」と可愛らしい声を漏らして、ゼクスの胸に顔を埋める。

「……アキ。貴様が私を頼るなら、私も相応の覚悟を決めるぞ。……もう、単なる『騎士と聖獣番』の距離では満足できん」

 ゼクスの熱い指先が、アキの頬をなぞり、唇に触れる。
 いつもはコメディ調のゼクスだが、今の彼は、一人の男としてアキを「愛で尽くそう」とする熱情に満ちていた。

 アキの心臓が、耳の動きと連動するように激しく鼓動する。
(……どうしよう。団長の顔が、かっこよすぎて直視できない……)

 その時、部屋の扉の外で「ぎゃああああ! ケモ耳受け! 独占欲攻めによる寝室お持ち帰り! ページが足りない、インクを、インクを持ってきなさーーい!」と叫ぶリナの声が響き、二人の間に流れていた濃密な空気が霧散した。

「…………リナ殿。後で、重い訓練メニューを課しておこう」

「あはは……。まあ、団長。耳、引っ込みましたよ」

 ゼクスは悔しそうに舌打ちをしたが、アキの顔が真っ赤になっているのを見て、わずかに口角を上げた。
 
「……まあいい。アキ、耳がなくても、私への『おねだり』はいつでも受け付けてやる。……次は、逃がさんぞ」

 ゼクスの執着は、アキの変化をきっかけに、より深い愛へと根を張っていくのだった。
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