7 / 20
7話
しおりを挟む
翌日の夕刻、重厚な足音と共に、部屋のドアが乱暴に開かれた。
待ちわびていた音が、静寂を切り裂く。
「……奏。私の言いつけ通り、大人しくしていたか」
その声を聞いた瞬間、奏の全身は歓喜に震えた。
レイヴンの声。それは数日間の飢餓を経て、以前よりもさらに濃密な、極上のビターチョコレートのような深みを持って奏の口内を支配した。
「閣下……っ、レイヴン様……!」
奏はベッドから転げ落ちるようにして、レイヴンの足元に縋り付いた。
レイヴンはまだ軍服を纏ったままで、その身体からは微かに硝煙と、彼自身の冷たい香りが漂っている。
「……酷い顔だ。そんなに私の声に飢えていたのか」
「はい……っ、もう、死ぬかと思いました……。あんな、泥みたいな音……二度と、聞きたくない……っ」
奏が涙ながらに訴えると、レイヴンの銀の瞳が鋭く細められた。
彼は奏の顎を掴み、強引に顔を上向かせる。
「エリオットに触れられた場所はどこだ。……ここか? それとも、ここか」
レイヴンの指先が、奏の首筋から鎖骨へと這う。
その冷徹な声が「どこだ」と問うたび、奏の脳内では痺れるような熱い衝撃が走り、口の中に甘い火がつく。
「あ、っ……そこ、です……指で、触れられて……っ」
「……汚らわしい。他人の雑音に汚されたまま、私を呼ぶなと言ったはずだ」
レイヴンの声に、低く唸るような嗜虐の色が混じる。
彼は奏を乱暴に抱き上げると、そのままベッドへと押し倒した。
圧し掛かる屈強な体躯。逃げ場のない檻。
奏の耳元で、レイヴンがわざと深く、重厚なトーンで囁きを注ぎ込む。
「今から、お前の中にある不純な音を、すべて私の声で上書きしてやる。……一滴も残さず、私という毒で塗りつぶせ」
「あ、ああ……っ! レイヴン、様……っ」
レイヴンが奏の耳朶を食む。
その感触と共に放たれる熱い吐息――。
奏の共感覚は、レイヴンの発するすべての音を「極上の美味」へと変換し、全身の神経を快楽で焼き尽くしていく。
「お前は、私の声なしでは呼吸さえままならない。そうだろ?」
「……っ、はい……っ。もっと、もっと……あなたの、声で……っ、僕を、壊して……!」
奏は自ら脚を絡め、レイヴンに縋り付いた。
レイヴンは冷酷な支配者の微笑を浮かべ、奏の敏感な箇所に唇を寄せる。
彼が愛を囁くのではない。
ただ、「お前は私のものだ」という呪いのような言葉を、奏の脳に直接刻み込んでいくのだ。
その夜、奏は何度もレイヴンの声で「絶頂」を迎え、彼の圧倒的な存在感に呑み込まれていった。
エリオットが残した泥のような不快感は、今や一欠片も残っていない。
あるのは、レイヴンの声という、一生解けない甘美な呪縛だけだ。
明け方、力尽きて眠る奏の額を、レイヴンが愛おしそうに、けれど冷徹な独占欲を込めてなぞった。
「……私の、奏。お前を誰にも渡さない。たとえお前の耳が潰れようとも、私の声だけは逃がさない」
それは、愛というにはあまりに重く、深い執着の調べだった。
待ちわびていた音が、静寂を切り裂く。
「……奏。私の言いつけ通り、大人しくしていたか」
その声を聞いた瞬間、奏の全身は歓喜に震えた。
レイヴンの声。それは数日間の飢餓を経て、以前よりもさらに濃密な、極上のビターチョコレートのような深みを持って奏の口内を支配した。
「閣下……っ、レイヴン様……!」
奏はベッドから転げ落ちるようにして、レイヴンの足元に縋り付いた。
レイヴンはまだ軍服を纏ったままで、その身体からは微かに硝煙と、彼自身の冷たい香りが漂っている。
「……酷い顔だ。そんなに私の声に飢えていたのか」
「はい……っ、もう、死ぬかと思いました……。あんな、泥みたいな音……二度と、聞きたくない……っ」
奏が涙ながらに訴えると、レイヴンの銀の瞳が鋭く細められた。
彼は奏の顎を掴み、強引に顔を上向かせる。
「エリオットに触れられた場所はどこだ。……ここか? それとも、ここか」
レイヴンの指先が、奏の首筋から鎖骨へと這う。
その冷徹な声が「どこだ」と問うたび、奏の脳内では痺れるような熱い衝撃が走り、口の中に甘い火がつく。
「あ、っ……そこ、です……指で、触れられて……っ」
「……汚らわしい。他人の雑音に汚されたまま、私を呼ぶなと言ったはずだ」
レイヴンの声に、低く唸るような嗜虐の色が混じる。
彼は奏を乱暴に抱き上げると、そのままベッドへと押し倒した。
圧し掛かる屈強な体躯。逃げ場のない檻。
奏の耳元で、レイヴンがわざと深く、重厚なトーンで囁きを注ぎ込む。
「今から、お前の中にある不純な音を、すべて私の声で上書きしてやる。……一滴も残さず、私という毒で塗りつぶせ」
「あ、ああ……っ! レイヴン、様……っ」
レイヴンが奏の耳朶を食む。
その感触と共に放たれる熱い吐息――。
奏の共感覚は、レイヴンの発するすべての音を「極上の美味」へと変換し、全身の神経を快楽で焼き尽くしていく。
「お前は、私の声なしでは呼吸さえままならない。そうだろ?」
「……っ、はい……っ。もっと、もっと……あなたの、声で……っ、僕を、壊して……!」
奏は自ら脚を絡め、レイヴンに縋り付いた。
レイヴンは冷酷な支配者の微笑を浮かべ、奏の敏感な箇所に唇を寄せる。
彼が愛を囁くのではない。
ただ、「お前は私のものだ」という呪いのような言葉を、奏の脳に直接刻み込んでいくのだ。
その夜、奏は何度もレイヴンの声で「絶頂」を迎え、彼の圧倒的な存在感に呑み込まれていった。
エリオットが残した泥のような不快感は、今や一欠片も残っていない。
あるのは、レイヴンの声という、一生解けない甘美な呪縛だけだ。
明け方、力尽きて眠る奏の額を、レイヴンが愛おしそうに、けれど冷徹な独占欲を込めてなぞった。
「……私の、奏。お前を誰にも渡さない。たとえお前の耳が潰れようとも、私の声だけは逃がさない」
それは、愛というにはあまりに重く、深い執着の調べだった。
11
あなたにおすすめの小説
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
親に虐げられてきたβが、Ωと偽ってαと婚約してしまった話
さるやま
BL
◆瑞希(受け)語り
□アキ(攻め)語り
攻め→→→→←←受け
眞鍋秋人(攻め)
優秀なα。真鍋家の次期当主。本質は狡くて狡猾だが、それを上手く隠して好青年を演じている。瑞希にはアキさんと呼ばれている。
高宮瑞希(受け)
Ωと偽っている平凡なβ。幼少期の経験からか自己肯定感が低く、自分に自信がない。自己犠牲的。
有栖蕾
花の精のように美しいと名高い美少年のΩ。アキさんの元婚約者(と言っても、正式な婚約関係になく、幼少期の口約束程度)であり、アキさんのことをまだ好いている。瑞希のことを秋人の婚約者として紹介され、許せない相手になった。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!
汀
BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる