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4話
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騎士団での生活が始まって三日。
俺の仕事は多岐にわたるが、その最重要ミッションは「アルス様の身辺のお世話」だ。
前世で何百回と見たゲーム画面。
その向こう側にいたアルス様が、今、目の前でシャツのボタンを外している。
……現実か? これは現実なのか? 視力が一気に5.0くらいまで回復しそうだ。
「……おい、セシル。いつまでそこに突っ立っている。湯が冷めるだろう」
「あ、すみません! あまりの聖なる光景に、網膜が浄化されておりました!」
アルス様は俺の言葉をため息一つで受け流し、大浴場へと向かう。
騎士団の浴場は広いが、副団長である彼は、夜のこの時間は一人で利用することが多い。
そこに「雑用係」として潜入(正当な業務)した俺。
湯煙の向こう側で、アルス様がその見事な肉体を露わにした。
鍛え上げられた大胸筋、引き締まった腹筋、そして戦士の証である数条の古傷。
(……神だ。ミケランジェロの彫刻も裸足で逃げ出すレベルの造形美。拝みたい。むしろこのお湯を瓶に詰めて『聖水』として売り出したい……!)
「セシル。突っ立っていないで、さっさと流せ」
「はっ! 喜んで! むしろ僕の全細胞を駆使して、アルス様の角質一枚残さず磨き上げます!」
俺は手桶とタオルを握りしめ、背後に回った。
間近で見る背中は、想像以上に広くて逞しい。
手が震える。推しの肌に触れる。これはファンとしての禁忌ではないのか?
いや、これは「仕事」だ。公務だ。
意を決して、泡立てたタオルをその白い肌に乗せる。
「……失礼します」
「……あ、ああ」
アルス様の声が、心なしかいつもより低い。
ゆっくりと円を描くように背中を洗っていくと、指先から伝わる彼の体温に、俺の心拍数は限界突破。
「アルス様、お肌……すごく綺麗ですね。毎日どんな徳を積んだら、こんなシルクのような質感になれるんですか?」
「……特になにもしていない。剣を振っているだけだ。……それより、お前の手……」
「僕の手がどうかしましたか!?」
「……いや。温かい、と思っただけだ」
アルス様がわずかに肩を震わせた。
その瞬間、俺の「オタクセンサー」が激しく警報を鳴らす。
え、待って。今、アルス様、ちょっと声が甘くなかったか?
これ、BLゲームでいうところの「好感度上昇SE」が鳴る場面じゃないのか!?
調子に乗った俺は、さらにグイグイと踏み込んだ。
「アルス様が良ければ、毎日でもお流ししますよ! むしろ一生僕に流させてください。僕、アルス様の専属お風呂係として、国家資格を取る勢いで頑張りますから!」
「……一生、だと?」
アルス様が不意に振り返った。
立ち込める湯気のせいで、彼の銀色の瞳がいつもより潤んで見える。
至近距離。
濡れた髪から滴る水滴が、彼の鎖骨を伝っていく。
「貴様は……俺が怖くないのか? 数日前まで、お前の首を撥ねようとしていた男だぞ」
その問いかけは、どこか切実で、少しだけ寂しそうに聞こえた。
俺はタオルを置き、真っ直ぐに彼の瞳を見つめた。
「怖くありません。だって、アルス様は自分の義務を果たそうとしただけでしょう? 僕はそんな、誠実で高潔なあなたを……心から、愛でているんですから」
『愛している』と言いかけて、『愛でている』に言い換えた。
まだ、悪役の俺が愛を囁くには早すぎる。
だが、アルス様の反応は予想外だった。
彼は俺の手首を掴むと、力強く自分の方へ引き寄せた。
「……貴様は本当に、調子を狂わせる。……責任、取ってもらうぞ」
「えっ、責任!? 何の!? 精神的苦痛の慰謝料ですか!? それとも僕の胃袋をアルス様の料理で満たしてくれるっていう契約結婚ですか!?」
「……バカか。……もういい、上がれ。のぼせているぞ」
アルス様は顔を真っ赤にして(お湯のせいだと思いたい)、俺を浴室から追い出した。
扉を閉めた後、俺はその場にへたり込んだ。
心臓が口から出そうだ。
(……今の、絶対にフラグだったよね!? 『責任取れ』って、それもうプロポーズ一歩手前のやつだよね!?)
一方、浴室の中。
アルスは一人、赤くなった顔を冷やすように顔を洗っていた。
「……愛でている、だと? ……ふざけた男だ。だが……」
彼の脳裏には、先ほど自分を見つめていたセシルの、真剣で、どこか慈しむような瞳が焼き付いて離れなかった。
殺意が執着に、蔑みが独占欲に変わるまで。
あと、ほんの少し。
俺の仕事は多岐にわたるが、その最重要ミッションは「アルス様の身辺のお世話」だ。
前世で何百回と見たゲーム画面。
その向こう側にいたアルス様が、今、目の前でシャツのボタンを外している。
……現実か? これは現実なのか? 視力が一気に5.0くらいまで回復しそうだ。
「……おい、セシル。いつまでそこに突っ立っている。湯が冷めるだろう」
「あ、すみません! あまりの聖なる光景に、網膜が浄化されておりました!」
アルス様は俺の言葉をため息一つで受け流し、大浴場へと向かう。
騎士団の浴場は広いが、副団長である彼は、夜のこの時間は一人で利用することが多い。
そこに「雑用係」として潜入(正当な業務)した俺。
湯煙の向こう側で、アルス様がその見事な肉体を露わにした。
鍛え上げられた大胸筋、引き締まった腹筋、そして戦士の証である数条の古傷。
(……神だ。ミケランジェロの彫刻も裸足で逃げ出すレベルの造形美。拝みたい。むしろこのお湯を瓶に詰めて『聖水』として売り出したい……!)
「セシル。突っ立っていないで、さっさと流せ」
「はっ! 喜んで! むしろ僕の全細胞を駆使して、アルス様の角質一枚残さず磨き上げます!」
俺は手桶とタオルを握りしめ、背後に回った。
間近で見る背中は、想像以上に広くて逞しい。
手が震える。推しの肌に触れる。これはファンとしての禁忌ではないのか?
いや、これは「仕事」だ。公務だ。
意を決して、泡立てたタオルをその白い肌に乗せる。
「……失礼します」
「……あ、ああ」
アルス様の声が、心なしかいつもより低い。
ゆっくりと円を描くように背中を洗っていくと、指先から伝わる彼の体温に、俺の心拍数は限界突破。
「アルス様、お肌……すごく綺麗ですね。毎日どんな徳を積んだら、こんなシルクのような質感になれるんですか?」
「……特になにもしていない。剣を振っているだけだ。……それより、お前の手……」
「僕の手がどうかしましたか!?」
「……いや。温かい、と思っただけだ」
アルス様がわずかに肩を震わせた。
その瞬間、俺の「オタクセンサー」が激しく警報を鳴らす。
え、待って。今、アルス様、ちょっと声が甘くなかったか?
これ、BLゲームでいうところの「好感度上昇SE」が鳴る場面じゃないのか!?
調子に乗った俺は、さらにグイグイと踏み込んだ。
「アルス様が良ければ、毎日でもお流ししますよ! むしろ一生僕に流させてください。僕、アルス様の専属お風呂係として、国家資格を取る勢いで頑張りますから!」
「……一生、だと?」
アルス様が不意に振り返った。
立ち込める湯気のせいで、彼の銀色の瞳がいつもより潤んで見える。
至近距離。
濡れた髪から滴る水滴が、彼の鎖骨を伝っていく。
「貴様は……俺が怖くないのか? 数日前まで、お前の首を撥ねようとしていた男だぞ」
その問いかけは、どこか切実で、少しだけ寂しそうに聞こえた。
俺はタオルを置き、真っ直ぐに彼の瞳を見つめた。
「怖くありません。だって、アルス様は自分の義務を果たそうとしただけでしょう? 僕はそんな、誠実で高潔なあなたを……心から、愛でているんですから」
『愛している』と言いかけて、『愛でている』に言い換えた。
まだ、悪役の俺が愛を囁くには早すぎる。
だが、アルス様の反応は予想外だった。
彼は俺の手首を掴むと、力強く自分の方へ引き寄せた。
「……貴様は本当に、調子を狂わせる。……責任、取ってもらうぞ」
「えっ、責任!? 何の!? 精神的苦痛の慰謝料ですか!? それとも僕の胃袋をアルス様の料理で満たしてくれるっていう契約結婚ですか!?」
「……バカか。……もういい、上がれ。のぼせているぞ」
アルス様は顔を真っ赤にして(お湯のせいだと思いたい)、俺を浴室から追い出した。
扉を閉めた後、俺はその場にへたり込んだ。
心臓が口から出そうだ。
(……今の、絶対にフラグだったよね!? 『責任取れ』って、それもうプロポーズ一歩手前のやつだよね!?)
一方、浴室の中。
アルスは一人、赤くなった顔を冷やすように顔を洗っていた。
「……愛でている、だと? ……ふざけた男だ。だが……」
彼の脳裏には、先ほど自分を見つめていたセシルの、真剣で、どこか慈しむような瞳が焼き付いて離れなかった。
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あと、ほんの少し。
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