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7話
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「アルス様、失礼いたします。騎士団長より、本日の夜会に同行せよとの伝令が――」
執務室に飛び込んだ俺は、そこで凍りついた。
アルス様の隣に、見慣れない……いや、ゲーム画面で嫌というほど見た「美女」が立っていたからだ。
燃えるような赤髪に、自信に満ちた緑の瞳。
公爵令嬢カトリーヌ。
ゲームでは、アルス様の婚約者候補としてセシル(俺)と競い合い、最後には俺を破滅へと追い込む協力者の一人だ。
「あら、その子が噂の『狂った令息』かしら? アルス、趣味が変わったのね」
カトリーヌが扇子を広げ、クスクスと高く笑う。
その視線には、かつての俺に向けられていたような「蔑み」が混じっている。
(げっ、カトリーヌ! このタイミングで出てくるか……。ゲームだと、彼女がアルス様に近づくたびに、俺が嫉妬で嫌がらせをして自爆するんだよな)
だが、今の俺は以前のセシルではない。
中身は訓練された推しオタクだ。
「……セシル。仕事中だ、下がっていろ」
アルス様の声は冷たかったが、その瞳はどこか落ち着きがない。
俺がショックを受けていると勘違いしているのだろうか。
「いいえ、アルス様。お気になさらず! 僕はただ、カトリーヌ様の美しさに圧倒されていただけで……。アルス様の隣に並ぶと、まるで一幅の名画のようです。ああ、眼福、眼福」
「……は?」
カトリーヌの笑みが固まった。
「……貴様、嫌味を言っているの?」
「まさか! 公爵令嬢の気品と、我が推し……失礼、アルス様の剛健さ。この対比が織りなす黄金比(ゴールデンレシオ)、素晴らしいです! ぜひそのまま10分ほど静止していただけませんか? 脳内シャッターを切りますので」
俺がキラキラした目で二人を交互に眺めていると、なぜかアルス様の顔がどんどん険しくなっていった。
「セシル、ふざけるな。……カトリーヌ。貴様との話は終わったはずだ。帰れ」
「まあ、冷たいわね。お父様は、あなたとの縁談を本気で進めるつもりなのよ? 今日はこの後、一緒に食事でも――」
カトリーヌがアルス様の腕にしがみつこうとした、その時。
アルス様は、目にも留まらぬ速さでその手を払い除け、あろうことか俺の腰を抱き寄せた。
「っ……アルス様!?」
「断る。俺は今、この雑用係の教育で忙しい。……それと、カトリーヌ。二度と俺の職場に私情を持ち込むな。次はないぞ」
アルス様の体から、物理的に肌がヒリつくほどの「威圧(プレッシャー)」が放たれる。
あのカトリーヌが、恐怖で顔を青ざめさせて後ずさった。
「……な、なによ! そんな不潔な男にうつつを抜かして……後悔しても知らないわよ!」
捨て台詞を残して、カトリーヌが部屋を飛び出していく。
静まり返った執務室。
俺の腰には、依然としてアルス様の強い力がこもった腕が回されている。
「……アルス様。もう、カトリーヌ様はいませんよ? 腰、折れそうです」
「…………」
アルス様は何も言わず、俺を抱き寄せたまま、自分の顔を俺の首筋に埋めた。
熱い吐息が直接肌に触れ、背筋にゾクゾクとした震えが走る。
「……アルス、様……?」
「……なぜ、笑っていた」
「えっ?」
「あの女と俺が並んでいるのを見て、なぜ……平気な顔で笑っていたんだ。貴様は、俺が他の誰かのものになってもいいのか」
その声は、震えていた。
最強の騎士らしからぬ、弱々しくて、切実な独占欲。
「……よくありません。でも、アルス様が選んだ道なら、僕はそれを全力で応援するのがファンの……僕の役目だと」
「……黙れ」
アルス様が俺の首筋に、小さく、だが消えないほど深く噛みついた。
「痛っ……!」
「……これは罰だ。二度と、他の誰かに俺を譲るような口をきくな。……お前は、俺だけを見ていればいいんだ。わかったか」
アルス様が顔を上げると、その銀色の瞳には、今まで見たこともないような深い愛執の炎が宿っていた。
それは、処刑人の瞳ではない。
獲物を二度と離さないと決めた、捕食者の瞳だった。
(……ああ。これ、破滅フラグは折れたかもしれないけど……。代わりに、もっと逃げ場のない『監禁フラグ』が立ち上がっちゃった気がする……!)
俺は、ドクドクと波打つ自分の心臓の音を聞きながら、推しの執着という名の甘い罠に、ずぶずぶと沈んでいくのを感じていた。
執務室に飛び込んだ俺は、そこで凍りついた。
アルス様の隣に、見慣れない……いや、ゲーム画面で嫌というほど見た「美女」が立っていたからだ。
燃えるような赤髪に、自信に満ちた緑の瞳。
公爵令嬢カトリーヌ。
ゲームでは、アルス様の婚約者候補としてセシル(俺)と競い合い、最後には俺を破滅へと追い込む協力者の一人だ。
「あら、その子が噂の『狂った令息』かしら? アルス、趣味が変わったのね」
カトリーヌが扇子を広げ、クスクスと高く笑う。
その視線には、かつての俺に向けられていたような「蔑み」が混じっている。
(げっ、カトリーヌ! このタイミングで出てくるか……。ゲームだと、彼女がアルス様に近づくたびに、俺が嫉妬で嫌がらせをして自爆するんだよな)
だが、今の俺は以前のセシルではない。
中身は訓練された推しオタクだ。
「……セシル。仕事中だ、下がっていろ」
アルス様の声は冷たかったが、その瞳はどこか落ち着きがない。
俺がショックを受けていると勘違いしているのだろうか。
「いいえ、アルス様。お気になさらず! 僕はただ、カトリーヌ様の美しさに圧倒されていただけで……。アルス様の隣に並ぶと、まるで一幅の名画のようです。ああ、眼福、眼福」
「……は?」
カトリーヌの笑みが固まった。
「……貴様、嫌味を言っているの?」
「まさか! 公爵令嬢の気品と、我が推し……失礼、アルス様の剛健さ。この対比が織りなす黄金比(ゴールデンレシオ)、素晴らしいです! ぜひそのまま10分ほど静止していただけませんか? 脳内シャッターを切りますので」
俺がキラキラした目で二人を交互に眺めていると、なぜかアルス様の顔がどんどん険しくなっていった。
「セシル、ふざけるな。……カトリーヌ。貴様との話は終わったはずだ。帰れ」
「まあ、冷たいわね。お父様は、あなたとの縁談を本気で進めるつもりなのよ? 今日はこの後、一緒に食事でも――」
カトリーヌがアルス様の腕にしがみつこうとした、その時。
アルス様は、目にも留まらぬ速さでその手を払い除け、あろうことか俺の腰を抱き寄せた。
「っ……アルス様!?」
「断る。俺は今、この雑用係の教育で忙しい。……それと、カトリーヌ。二度と俺の職場に私情を持ち込むな。次はないぞ」
アルス様の体から、物理的に肌がヒリつくほどの「威圧(プレッシャー)」が放たれる。
あのカトリーヌが、恐怖で顔を青ざめさせて後ずさった。
「……な、なによ! そんな不潔な男にうつつを抜かして……後悔しても知らないわよ!」
捨て台詞を残して、カトリーヌが部屋を飛び出していく。
静まり返った執務室。
俺の腰には、依然としてアルス様の強い力がこもった腕が回されている。
「……アルス様。もう、カトリーヌ様はいませんよ? 腰、折れそうです」
「…………」
アルス様は何も言わず、俺を抱き寄せたまま、自分の顔を俺の首筋に埋めた。
熱い吐息が直接肌に触れ、背筋にゾクゾクとした震えが走る。
「……アルス、様……?」
「……なぜ、笑っていた」
「えっ?」
「あの女と俺が並んでいるのを見て、なぜ……平気な顔で笑っていたんだ。貴様は、俺が他の誰かのものになってもいいのか」
その声は、震えていた。
最強の騎士らしからぬ、弱々しくて、切実な独占欲。
「……よくありません。でも、アルス様が選んだ道なら、僕はそれを全力で応援するのがファンの……僕の役目だと」
「……黙れ」
アルス様が俺の首筋に、小さく、だが消えないほど深く噛みついた。
「痛っ……!」
「……これは罰だ。二度と、他の誰かに俺を譲るような口をきくな。……お前は、俺だけを見ていればいいんだ。わかったか」
アルス様が顔を上げると、その銀色の瞳には、今まで見たこともないような深い愛執の炎が宿っていた。
それは、処刑人の瞳ではない。
獲物を二度と離さないと決めた、捕食者の瞳だった。
(……ああ。これ、破滅フラグは折れたかもしれないけど……。代わりに、もっと逃げ場のない『監禁フラグ』が立ち上がっちゃった気がする……!)
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