悪役令息(予定)の俺、推し騎士を愛でるために破滅フラグを全力でバキ折ることにしました。

たら昆布

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17話

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砦での決戦から数時間。
司教の残党処理はリリアーヌ様(と彼女が指揮する聖騎士団)に丸投げし、俺とアルス様は一足先に王都の屋敷へと帰還していた。

……帰還していたのだが、玄関をくぐった瞬間から俺の足は地面についていない。

「あ、アルス様。もう安全な場所ですから、降ろしてください。ルナールも見てますし……」

「……断る。貴様はさっき、自分の命を削るような魔力の使い方をした。今は一歩も歩くことは許さん」

アルス様の声は、かつてないほど低く、独占欲に満ちている。
彼は俺を「お姫様抱っこ」したまま、迷わず自分の寝室へと直行し、蹴るようにして扉を閉めた。

「キュイッ!?(締め出された!?)」

扉の外でルナールが困惑した声を上げているが、今のアルス様の耳には届かないらしい。
俺は大きなベッドにふわりと沈められ、その上からアルス様の逞しい体が覆い被さってきた。

「……セシル。怖かった。……お前が光の中に消えてしまうのではないかと、本気で生きた心地がしなかったんだ」

アルス様が俺の首筋に顔を埋め、子供のように深く息を吸い込む。
最強の騎士が、今、俺の腕の中で震えている。
その弱さが、愛おしくて堪らない。

「大丈夫ですよ、アルス様。僕はどこにも行きません。……あなたの隣が、僕の指定席(神席)なんですから」

俺が彼の背中に手を回すと、アルス様は顔を上げ、濡れたような銀色の瞳で俺を見つめた。
その瞳に宿る熱量は、司教を焼き尽くした時よりもずっと激しく、濃密だった。

「……お前のせいで、俺はもう元には戻れない。……騎士としての冷静さも、副団長としての理面も、すべてお前が壊したんだ。……責任、取ってもらうぞ」

「望むところです……っ」

唇が重なる。
今度のキスは、魔力供給なんていう言い訳が必要ないほど、ただひたすらに情熱的で、執着に満ちていた。
アルス様の手が俺のシャツを脱がせ、白銀の月光に照らされた俺の肌に、一つ一つ丁寧な「誓い」を刻んでいく。

「……ああ、セシル。お前は俺の光だ。……誰にも、一瞬たりとも触れさせたくない」

「僕も……アルス様のものなら、何をされても幸せです……」

俺の体は、アルス様の愛撫を受けるたびに熱く疼き、彼の色に染まっていく。
もはや『強制共鳴魔法』の影響など関係ない。俺の魂そのものが、アルス様という劇薬なしでは生きていけない体へと変貌していた。

翌朝。
眩しい日差しで目を覚ますと、そこには既に身支度を整え、だがどこか名残惜しそうに俺を見つめるアルス様の姿があった。

「……起きたか、愛しい俺の悪役令息」

「アルス様……。その呼び方、ちょっと恥ずかしいです」

俺が赤くなってシーツに潜り込むと、彼はクスクスと低く笑い、俺の額に柔らかなキスを落とした。

「今日、王宮へ凱旋の報告に行く。……陛下には既に、俺たちの『番』について文を送っておいた。……覚悟はいいか? 恐らく、ただの報告では済まないぞ」

「陛下にまで!? ……あはは、もう覚悟なんて、あの地下牢でアルス様に一目惚れ(再確認)した時から決まってますよ!」

俺たちは手を取り合い、誇らしげに王宮へと向かった。
もはや俺を「罪人」や「悪役」と呼ぶ者は誰もいない。
王宮の門をくぐる際、門衛たちが一斉に剣を掲げ、敬意を表した。

だが、謁見の間に待ち構えていた国王陛下が開口一番に放った言葉は、俺たちの予想を遥かに超えるものだった。

「アルス、セシル。よくぞ戻った! ……二人には、この国の『守護公爵』の位と、新しい領地を与えよう。……そして、来月には国を挙げた『婚儀』を執り行うよう、既に手配を済ませてある!」

「「……はい!?(結婚式!?)」」

国王陛下の背後で、リリアーヌ様が「やったわ! 公式公認の特大結婚式(イベント)確定よ!」とガッツポーズをしているのが見えた。

(……待って、まだ『恋人』としての時間も楽しんでないのに、いきなり国家プロジェクトの結婚式!?)

俺の破滅フラグは、いつのまにか、国中の祝福を受ける「純愛フラグ」へと大化けしていた。
アルス様は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに俺の腰を引き寄せ、陛下に向かって力強く宣言した。

「……承知いたしました。……セシルを世界で一番幸せな伴侶にしてみせます」

波乱の決戦は幕を閉じ、物語はいよいよ、甘くて騒がしい「ハッピーエンドへの花道」へと突入したのだった。
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