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18 登城再び
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今日は、パールと一緒に契約獣申請に来ている。ルーフとアルは留守番だ。
今回も陛下が直接手続きしてくれた。
「はい。できたよ。」
「陛下、ありがとうございます。」
「仕事だからね。そうだ!この後、お茶でも飲もうか?」
「陛下、仕事があります。」
お父様の顔が険しくなる。
「少しならいいだろう?」
「陛下。」
「全く、ジャックは硬いな。可愛い子と少しの休憩ぐらい良いだろう?」
「うちの娘が可愛いのは認めますが、これとそれとは違います。」
「えー。…あ、分かったよ。今日はやめよう。また今度にしよう。」
陛下は不自然に意見を変えた。
その時、
コンコンコン
ドアがノックされる。
「どうぞ。」
「父上。用事とはなんですか?」
ひとりの男の子が入ってきた。
その男の子と目が合う。
「!」
男の子はこちらを見たまま、動かなくなった。
「?」
「陛下。謀りましたね。」
「何のことか分からないな~。」
二人のそのやり取りはサリーナには聞こえていなかった。
この子、どうしたのかしら?
私が首を傾げると、男の子は勢いよく下を見た。
「私の次男、アイザックだよ。」
「失礼いたしました。サリーナ·スウィンティーでございます。」
私は礼の姿勢をとる。
「お~い!ザック、挨拶くらいしなさい。」
「あ、えーと…すみません。アイザックです。ザックと呼んでください。」
「申し訳ございません。それは、出来かねます。」
「え?」
「殿下を愛称呼びなど…。」
「その通りだな、サリーナ。」
その言葉に、お父様も肯定する。
「そ、そうですか…。」
アイザック殿下、何か悲しそうだけど。
えーと…。
どうしたらいいのか分からない私は、お父様を見た。
「さぁ、帰ろうか。門まで送るよ。」
「はい。」
「ちょっと待って。宰相は仕事があるでしょうが。ザック、サリーナ嬢を送って差し上げなさい。」
「は、はい。」
お父様は陛下を睨んでいる。陛下はそれを気にせず、にこにこしている。
「……………アイザック殿下、娘をよろしくお願いします。」
「は、はい!」
諦めた顔をしたお父様の言葉に、アイザック殿下は元気に返事をした。
この流れって…、まさかね。
サリーナとアイザックは部屋を出て、馬車の乗り場まで向かう。
「…」
「…」
ふたりは、会話なく進んで行く。
その後ろをパールがついてくる。
「そのヒョウは、サリーナ様の?」
「様は付けないでくださいませ。サリーナで結構でございます。」
王子が私に様をつけるのはおかしいでしょ。
「分かった。」
「このヒョウは、パールと言います。私の契約獣ですわ。」
「契約獣?連れている人を始めてみたよ。」
「お父様に聞きました。契約する方は少ないようです。」
「ああ。えーと…サリーナは、いくつなのかな?」
「3歳です。」
「え?僕より5つ下?」
「5つと言いますと、アイザック様はリオン兄様と同じですね。」
「ああ。ダリオンか?同じクラスだ。」
「そうなのですね。アイザック様は今日は学校ではないのですか?」
「予定があって休んだんだよ。そうか…リオンの可愛い妹君はサリーナのことか。」
お兄様、どんな話をしているの…?
少し照れくさい。
「アイザック様は予定がお有りでしたのね?送っていただいて、申し訳ございません。私、ひとりでも行けますから戻ってください。」
「大丈夫だよ。父上が言ったんだ。時間も大丈夫さ。」
「はぁ…。」
その後は、また無言になり、そのまま我が家の馬車が待つ城の入口まで来た。
「サリーナ。ま、また遊びにおいで。」
「あ、えーと、ここへ遊びに来るのは、なかなか…。」
「そ、そうか。」
「でも、兄様のいる時にでも我が家へいらしてくださ…」
「必ず行くよ!」
私の言葉に被るように返事が返ってきた。
「は、はい。お待ちしております。」
びっくりしたぁ…。
私は馬車に乗り込んだ。すると、すぐにパールが口を開いた。
「リーナ。貴方もやるわね。」
「なんの事?」
「分かっているでしょう?」
「…やっぱり、そういう事なのかな?」
「それ以外にある?」
「でも…。」
「確実に王様は、見合いを画策していたわね。王子様も満更ではない…というか、一目惚れよね!ビビッとハートに矢が刺さるのが見えたわ!」
「パール…。落ち着いて。」
「だって、恋の話って楽しいじゃない!」
「他人のを聞く分には、ね…。」
3歳と8歳の恋模様ってさぁ、どうなの?
私、中身20代後半だし複雑…。
今回も陛下が直接手続きしてくれた。
「はい。できたよ。」
「陛下、ありがとうございます。」
「仕事だからね。そうだ!この後、お茶でも飲もうか?」
「陛下、仕事があります。」
お父様の顔が険しくなる。
「少しならいいだろう?」
「陛下。」
「全く、ジャックは硬いな。可愛い子と少しの休憩ぐらい良いだろう?」
「うちの娘が可愛いのは認めますが、これとそれとは違います。」
「えー。…あ、分かったよ。今日はやめよう。また今度にしよう。」
陛下は不自然に意見を変えた。
その時、
コンコンコン
ドアがノックされる。
「どうぞ。」
「父上。用事とはなんですか?」
ひとりの男の子が入ってきた。
その男の子と目が合う。
「!」
男の子はこちらを見たまま、動かなくなった。
「?」
「陛下。謀りましたね。」
「何のことか分からないな~。」
二人のそのやり取りはサリーナには聞こえていなかった。
この子、どうしたのかしら?
私が首を傾げると、男の子は勢いよく下を見た。
「私の次男、アイザックだよ。」
「失礼いたしました。サリーナ·スウィンティーでございます。」
私は礼の姿勢をとる。
「お~い!ザック、挨拶くらいしなさい。」
「あ、えーと…すみません。アイザックです。ザックと呼んでください。」
「申し訳ございません。それは、出来かねます。」
「え?」
「殿下を愛称呼びなど…。」
「その通りだな、サリーナ。」
その言葉に、お父様も肯定する。
「そ、そうですか…。」
アイザック殿下、何か悲しそうだけど。
えーと…。
どうしたらいいのか分からない私は、お父様を見た。
「さぁ、帰ろうか。門まで送るよ。」
「はい。」
「ちょっと待って。宰相は仕事があるでしょうが。ザック、サリーナ嬢を送って差し上げなさい。」
「は、はい。」
お父様は陛下を睨んでいる。陛下はそれを気にせず、にこにこしている。
「……………アイザック殿下、娘をよろしくお願いします。」
「は、はい!」
諦めた顔をしたお父様の言葉に、アイザック殿下は元気に返事をした。
この流れって…、まさかね。
サリーナとアイザックは部屋を出て、馬車の乗り場まで向かう。
「…」
「…」
ふたりは、会話なく進んで行く。
その後ろをパールがついてくる。
「そのヒョウは、サリーナ様の?」
「様は付けないでくださいませ。サリーナで結構でございます。」
王子が私に様をつけるのはおかしいでしょ。
「分かった。」
「このヒョウは、パールと言います。私の契約獣ですわ。」
「契約獣?連れている人を始めてみたよ。」
「お父様に聞きました。契約する方は少ないようです。」
「ああ。えーと…サリーナは、いくつなのかな?」
「3歳です。」
「え?僕より5つ下?」
「5つと言いますと、アイザック様はリオン兄様と同じですね。」
「ああ。ダリオンか?同じクラスだ。」
「そうなのですね。アイザック様は今日は学校ではないのですか?」
「予定があって休んだんだよ。そうか…リオンの可愛い妹君はサリーナのことか。」
お兄様、どんな話をしているの…?
少し照れくさい。
「アイザック様は予定がお有りでしたのね?送っていただいて、申し訳ございません。私、ひとりでも行けますから戻ってください。」
「大丈夫だよ。父上が言ったんだ。時間も大丈夫さ。」
「はぁ…。」
その後は、また無言になり、そのまま我が家の馬車が待つ城の入口まで来た。
「サリーナ。ま、また遊びにおいで。」
「あ、えーと、ここへ遊びに来るのは、なかなか…。」
「そ、そうか。」
「でも、兄様のいる時にでも我が家へいらしてくださ…」
「必ず行くよ!」
私の言葉に被るように返事が返ってきた。
「は、はい。お待ちしております。」
びっくりしたぁ…。
私は馬車に乗り込んだ。すると、すぐにパールが口を開いた。
「リーナ。貴方もやるわね。」
「なんの事?」
「分かっているでしょう?」
「…やっぱり、そういう事なのかな?」
「それ以外にある?」
「でも…。」
「確実に王様は、見合いを画策していたわね。王子様も満更ではない…というか、一目惚れよね!ビビッとハートに矢が刺さるのが見えたわ!」
「パール…。落ち着いて。」
「だって、恋の話って楽しいじゃない!」
「他人のを聞く分には、ね…。」
3歳と8歳の恋模様ってさぁ、どうなの?
私、中身20代後半だし複雑…。
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