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わたしとアイツと日常
7話②
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クリスマス当日。
彼氏を作ろうと思えば作れたけど、そういう気分になれなくて、今年は彼氏を作らなかった。
おかげさまで一人で虚しくクリスマスに染まった街を彷徨うことに。
お泊まりデートってウソをついたから、一日一人ぼっち。近隣全てのホテルに片っ端から電話したけど、どこも満室。少子化問題とは程遠いクリスマスのせいで、野宿が決定した。
さすがに野宿はヤバいから、夜まで適当に彷徨いて、朝まで開いてるカフェに入って時間を過ごそうと思う。
その時間つぶしのために、駅前の大きい本屋に来たんだけども……
「お姉さん、一人でしょ?」
変な男に絡まれた。
「俺も一人なんだよ。一緒に遊ばない? ってこれじゃ一昔前のナンパだよなぁ」
面白くないのに変な男は笑ってる。つまらないし興味ないしイケメンじゃないし、知らん顔で本を物色。
さて、どれにしようか。
今の気分で恋愛小説なんか読んだら、夜な夜な近隣のホテルの周辺を太鼓をリズミカルに叩きながら周回しそうなので、あまり読まないミステリー小説を選んだ。
今年のベストセラーと書いてるけど、どうなんだろう。
「なぁ、俺と遊ぼうぜ」
ナンパ男にベストセラー小説並みの面白さがあれば、暇つぶしに遊んであげてもいいのに。
「すっげぇ無視するねぇ。いいね、俺、冷たくあしらう美人なお姉さんって大好物なんだぁ」
レジをしてる最中も一人で喋りながらずっとついてくる。ナンパ男からストーカーに成り下がった男にバレないように、ため息をはいた。
この陰湿的なしつこさでナンパの成功率を上げてるんだと思う。ここまでされたら嫌でも返事しちゃうもの。でもそこが落とし穴。こういうタイプの男って喋りに自信があるから、あれやこれやと言う間に、一緒に飲みに行く流れになる。
ほんと、やり方が一昔前だわ。
「ここまで無視されたの初めてだわ。いつ返事くれるのか楽しみになってきた」
ごめん、それは絶対にない。顔面取り替えて出直して。心の中で呟きながら、駅前の本屋をあとにした。
外に出ると、いつもよりも派手なイルミネーションの中、仕事帰りのサラリーマンや、手を繋ぐカップルや家族が、幸せそうな笑顔を浮かべて歩いていた。いつもなら何とも思わないのに、この光景が心に沁みる。
悲しいかな、一人ぼっちのクリスマスは初めてだ。
そう考えるとストーカー男もかわいそうな男だ。クリスマスなのに、友だちと過ごすわけでもなく一人ぼっちで、その顔でひたすらナンパに明け暮れて。でも大丈夫。寂しくないよ。聖女のように優しい私が、仲間の所に連れて行ってあげる。
「こっちってさぁ、交番があったよな」
チッ、バレやがった。
「警察につき出すつもりかよ。俺はなーんにも悪いことしてねぇのによぉ。冤罪っていうんだぜ、そーいうの」
ずっと付きまとってる行為も犯罪の一つだと思うんだけど。
「そんな酷いことやめてさ、俺と遊びに行こうって」
交番に連れて行かれるのは嫌らしく、ここにきて強引な手段に出てきた。私の断りもなく肩を抱いてきたのだ。
一瞬で全身に鳥肌が立った。
「やめて! 離して!」
心の底から気持ち悪くて、ここまで我慢してたのに思わず声を出してしまった。これは間違いなく失策だ。
「おっ、やっと反応してくれた!」
「離しなさいよ!」
「肩を触ったくらいで怒んないでよ。お姉さんってば意外と純情なの?」
「いいから、離してよ! ウザったいわね!」
「やだよ、やっと反応してくれたんだもん。むしろ抱きついちゃったりしちゃったり?」
「やだ! やめて!」
逃げようともがいても、ストーカー男はより強い力で肩を抱く。これ以上触られると胃の中の物を吐き出しそうで、でも力じゃ全然勝てなくて。
やめてと騒ぐかわいい私を知らん顔して通り過ぎる人、痴話喧嘩だと勘違いして観察してる人、誰一人として助けてくれなくて、何かもう腹が立って、勇樹以外のこの世の雄全て滅んでしまえ!と願ったら、意外にもすんなりと叶えられた。
「何してんの?」
「あ?」
「お兄さんには聞いてねーの。お姉さまに聞いてんの」
勇樹だ。目の前に勇樹がいる。
「次の彼氏って、まさか……これ?」
首を横に振って答えた。
「……ナンパ?」
首を縦に振って答えた瞬間、勇樹の手が私の肩を掴み、強引に抱き寄せてきた。逞しい腕の中にすっぽりと収まると、すかさずぎゅうっと抱きついた。
「勇樹、勇樹! アイツしつこいの!」
「はいはい、怖かったな」
「何だよ、彼氏持ちならそう言えよ。チッ、時間を無駄にしたぜ」
もっと騒ぐかと思ったストーカー男は大人しく引いてくれた。クマのような体格の勇樹に恐れをなしたのかも。
そんなことよりも……
「なんでここに勇樹がいるの?」
「待ち合わせ場所があそこだったんだよ」
勇樹が指差した場所は少し離れた……と言ってもここから見える位置にあるレンタルDVD屋の前だった。
「お姉さまは何してんの? 一人……じゃねーよな。彼氏は?」
「あー……、その、……お手洗いに!」
「それにしても長すぎ。駅前の本屋からナンパ男と一緒だったろ?」
「見てたの!?」
「いや、たまたま見つけてさ。彼氏だと悪いから知らん顔してた。ビックリしたぜ。趣味変わったのかと思った」
「勘弁してよ! あんな男、お断りよ!」
「そんで彼氏は? つーかまたナンパされそうだし、彼氏が戻ってくるまで一緒にいるわ。電話してみろよ」
「ナンパ男がウザったくて交番目指してただけだから、そこまでしなくても大丈夫よ。本屋で私を探してるかも」
「んなら本屋まで送る」
「一人で大丈夫だから!」
「だーめ。お姉さまってすぐナンパされそうだし。ほら、行くぞ」
勇樹は私の手を取って歩き出した。困ったものでこうなると勇樹は頑固になる。私が何を言っても送るだろう。彼氏なんて居ないのに、どうやって誤魔化そう。
「なぁ」
「な、なに!?」
「俺とお姉さまって、付き合い長いよな」
「そ、そうだね!」
「その俺がお姉さまのウソを見破れねぇと思ってんの?」
「……そ、そんなこと」
「なんで彼氏がいるってウソついたの?」
駅前の本屋に着いても中に入らず、自動ドアの隣で手を繋いだまま突っ立ってる。バレてしまったものはしょうがない。変な意地を張らず大人しく家に帰ろう。
「ごめん」
「まぁ、別にいいけどさ」
「うん」
「どうする?」
「何が?」
「これから」
「ひとり者は大人しく帰るよ。ごめんね、ウソついて。でも、助けてくれてありがとう。王道展開でビックリしたけど嬉しかった」
「……なんでそうなんの……」
お礼を言っただけなのに、勇樹はもう片方の手で頭を押えた。
「らしくねぇこと言ってんじゃねえ。いつもの生意気なお姉さまらしく、相手をしろって命令すりゃいいじゃん」
「でも予定あるでしょ? さすがに私も気を使うわよ」
「ふざけんな! どんな予定であれ、咲希を優先しない理由に、何一つならねぇっつーの!」
「でも今年最後の」
「ああっ、もういい! 話にならねえ!」
「ちょっと!」
勇樹が向かった先はレンタルDVD屋で、お友達らしき人達が十数人程度集まっている。勇樹は私の手を繋いだまま、みんなに言った。
「俺、この超絶かわいいお姉さまとデートするんでキャンセルな」
何だその断り方。でも悪くないと思う私はイケナイ大人かもしれない。
「はああ!? 何だよ、くそ羨ましい!」
「チェリー集会しようって約束したじゃねーかよ!」
「……ま、まさか……チェリー卒業!?」
不敵にほほ笑む勇樹はギャーギャー騒ぐお友達に向かって一言。
「大人って、サイコーだぜ」
あんた何言ってんの。次会ったらお友達に殺されるわよっていう目を向けたけど、勇樹は不敵な笑顔のまま歩き出した。
「んじゃ、今から俺とデートしようぜ」
「いいの?」
「当たり前だろ。野郎とクリスマスを過ごすよりお姉さまと過ごす方が幸せだしぃ」
「最近シテないから溜まってるのかしら」
「そうなんだよなぁ。どっかのお姉さまがペットごときに意識しまくって、ウソついてまで距離を取ろうとするしさぁ」
「っ」
「おかげで珍しいもん見られたわ。もー、かわいすぎてかわいすぎて」
「うっさいわよ!」
「ぷぷっ、ツンデレ激かわ」
「デートするんでしょ!? さっさと案内しなさいよ! それともノープランなの? デートに誘っておいてダサくなーい?」
「うんにゃ、デート場所は……ここでーす」
たどり着いた先は懐かしい建物の前。小さい頃によく行っていた科学館だ。
「クリスマス限定でプラネタリウムやってんだってさ。星空が見たいって言ってたろ? 本物じゃねーけど、そこは勘弁してな」
「……覚えててくれたんだ」
「咲希の言ったことは全部覚えてんの。そこだけに特化した記憶力だからな」
「うっざ」
「空気読んでくれる!?」
軽口を叩きながら受付を済ませて入館。シアタールームに入ると、あまり告知をしてなかったのか、お客は数人程度だった。
勇樹と並んで椅子に腰掛ける。背もたれを倒して、まだ何も写ってないスクリーンを見てると、勇樹が小さな声で言った。
「キレイなもんでも見りゃゴチャゴチャしてるもんも落ち着くだろ」
何だ、どれもこれも全部バレてたのか。そうだよね、誰よりも近くで私だけを見てくれてたもんね。
それなのに、私は……
「おっ、始まった。久しぶりだよなぁ、プラネタリウム」
偽物の空には、偽物の美しい星たちが輝いてる。
偽物のくせに美しいことに、少し羨ましくなった。
勇樹と見る偽物の星空は嫌いじゃない。
それが答え。
いつか二人で本物の満点の星空を見られたらいいなぁって、偽物の流れ星に祈った。
彼氏を作ろうと思えば作れたけど、そういう気分になれなくて、今年は彼氏を作らなかった。
おかげさまで一人で虚しくクリスマスに染まった街を彷徨うことに。
お泊まりデートってウソをついたから、一日一人ぼっち。近隣全てのホテルに片っ端から電話したけど、どこも満室。少子化問題とは程遠いクリスマスのせいで、野宿が決定した。
さすがに野宿はヤバいから、夜まで適当に彷徨いて、朝まで開いてるカフェに入って時間を過ごそうと思う。
その時間つぶしのために、駅前の大きい本屋に来たんだけども……
「お姉さん、一人でしょ?」
変な男に絡まれた。
「俺も一人なんだよ。一緒に遊ばない? ってこれじゃ一昔前のナンパだよなぁ」
面白くないのに変な男は笑ってる。つまらないし興味ないしイケメンじゃないし、知らん顔で本を物色。
さて、どれにしようか。
今の気分で恋愛小説なんか読んだら、夜な夜な近隣のホテルの周辺を太鼓をリズミカルに叩きながら周回しそうなので、あまり読まないミステリー小説を選んだ。
今年のベストセラーと書いてるけど、どうなんだろう。
「なぁ、俺と遊ぼうぜ」
ナンパ男にベストセラー小説並みの面白さがあれば、暇つぶしに遊んであげてもいいのに。
「すっげぇ無視するねぇ。いいね、俺、冷たくあしらう美人なお姉さんって大好物なんだぁ」
レジをしてる最中も一人で喋りながらずっとついてくる。ナンパ男からストーカーに成り下がった男にバレないように、ため息をはいた。
この陰湿的なしつこさでナンパの成功率を上げてるんだと思う。ここまでされたら嫌でも返事しちゃうもの。でもそこが落とし穴。こういうタイプの男って喋りに自信があるから、あれやこれやと言う間に、一緒に飲みに行く流れになる。
ほんと、やり方が一昔前だわ。
「ここまで無視されたの初めてだわ。いつ返事くれるのか楽しみになってきた」
ごめん、それは絶対にない。顔面取り替えて出直して。心の中で呟きながら、駅前の本屋をあとにした。
外に出ると、いつもよりも派手なイルミネーションの中、仕事帰りのサラリーマンや、手を繋ぐカップルや家族が、幸せそうな笑顔を浮かべて歩いていた。いつもなら何とも思わないのに、この光景が心に沁みる。
悲しいかな、一人ぼっちのクリスマスは初めてだ。
そう考えるとストーカー男もかわいそうな男だ。クリスマスなのに、友だちと過ごすわけでもなく一人ぼっちで、その顔でひたすらナンパに明け暮れて。でも大丈夫。寂しくないよ。聖女のように優しい私が、仲間の所に連れて行ってあげる。
「こっちってさぁ、交番があったよな」
チッ、バレやがった。
「警察につき出すつもりかよ。俺はなーんにも悪いことしてねぇのによぉ。冤罪っていうんだぜ、そーいうの」
ずっと付きまとってる行為も犯罪の一つだと思うんだけど。
「そんな酷いことやめてさ、俺と遊びに行こうって」
交番に連れて行かれるのは嫌らしく、ここにきて強引な手段に出てきた。私の断りもなく肩を抱いてきたのだ。
一瞬で全身に鳥肌が立った。
「やめて! 離して!」
心の底から気持ち悪くて、ここまで我慢してたのに思わず声を出してしまった。これは間違いなく失策だ。
「おっ、やっと反応してくれた!」
「離しなさいよ!」
「肩を触ったくらいで怒んないでよ。お姉さんってば意外と純情なの?」
「いいから、離してよ! ウザったいわね!」
「やだよ、やっと反応してくれたんだもん。むしろ抱きついちゃったりしちゃったり?」
「やだ! やめて!」
逃げようともがいても、ストーカー男はより強い力で肩を抱く。これ以上触られると胃の中の物を吐き出しそうで、でも力じゃ全然勝てなくて。
やめてと騒ぐかわいい私を知らん顔して通り過ぎる人、痴話喧嘩だと勘違いして観察してる人、誰一人として助けてくれなくて、何かもう腹が立って、勇樹以外のこの世の雄全て滅んでしまえ!と願ったら、意外にもすんなりと叶えられた。
「何してんの?」
「あ?」
「お兄さんには聞いてねーの。お姉さまに聞いてんの」
勇樹だ。目の前に勇樹がいる。
「次の彼氏って、まさか……これ?」
首を横に振って答えた。
「……ナンパ?」
首を縦に振って答えた瞬間、勇樹の手が私の肩を掴み、強引に抱き寄せてきた。逞しい腕の中にすっぽりと収まると、すかさずぎゅうっと抱きついた。
「勇樹、勇樹! アイツしつこいの!」
「はいはい、怖かったな」
「何だよ、彼氏持ちならそう言えよ。チッ、時間を無駄にしたぜ」
もっと騒ぐかと思ったストーカー男は大人しく引いてくれた。クマのような体格の勇樹に恐れをなしたのかも。
そんなことよりも……
「なんでここに勇樹がいるの?」
「待ち合わせ場所があそこだったんだよ」
勇樹が指差した場所は少し離れた……と言ってもここから見える位置にあるレンタルDVD屋の前だった。
「お姉さまは何してんの? 一人……じゃねーよな。彼氏は?」
「あー……、その、……お手洗いに!」
「それにしても長すぎ。駅前の本屋からナンパ男と一緒だったろ?」
「見てたの!?」
「いや、たまたま見つけてさ。彼氏だと悪いから知らん顔してた。ビックリしたぜ。趣味変わったのかと思った」
「勘弁してよ! あんな男、お断りよ!」
「そんで彼氏は? つーかまたナンパされそうだし、彼氏が戻ってくるまで一緒にいるわ。電話してみろよ」
「ナンパ男がウザったくて交番目指してただけだから、そこまでしなくても大丈夫よ。本屋で私を探してるかも」
「んなら本屋まで送る」
「一人で大丈夫だから!」
「だーめ。お姉さまってすぐナンパされそうだし。ほら、行くぞ」
勇樹は私の手を取って歩き出した。困ったものでこうなると勇樹は頑固になる。私が何を言っても送るだろう。彼氏なんて居ないのに、どうやって誤魔化そう。
「なぁ」
「な、なに!?」
「俺とお姉さまって、付き合い長いよな」
「そ、そうだね!」
「その俺がお姉さまのウソを見破れねぇと思ってんの?」
「……そ、そんなこと」
「なんで彼氏がいるってウソついたの?」
駅前の本屋に着いても中に入らず、自動ドアの隣で手を繋いだまま突っ立ってる。バレてしまったものはしょうがない。変な意地を張らず大人しく家に帰ろう。
「ごめん」
「まぁ、別にいいけどさ」
「うん」
「どうする?」
「何が?」
「これから」
「ひとり者は大人しく帰るよ。ごめんね、ウソついて。でも、助けてくれてありがとう。王道展開でビックリしたけど嬉しかった」
「……なんでそうなんの……」
お礼を言っただけなのに、勇樹はもう片方の手で頭を押えた。
「らしくねぇこと言ってんじゃねえ。いつもの生意気なお姉さまらしく、相手をしろって命令すりゃいいじゃん」
「でも予定あるでしょ? さすがに私も気を使うわよ」
「ふざけんな! どんな予定であれ、咲希を優先しない理由に、何一つならねぇっつーの!」
「でも今年最後の」
「ああっ、もういい! 話にならねえ!」
「ちょっと!」
勇樹が向かった先はレンタルDVD屋で、お友達らしき人達が十数人程度集まっている。勇樹は私の手を繋いだまま、みんなに言った。
「俺、この超絶かわいいお姉さまとデートするんでキャンセルな」
何だその断り方。でも悪くないと思う私はイケナイ大人かもしれない。
「はああ!? 何だよ、くそ羨ましい!」
「チェリー集会しようって約束したじゃねーかよ!」
「……ま、まさか……チェリー卒業!?」
不敵にほほ笑む勇樹はギャーギャー騒ぐお友達に向かって一言。
「大人って、サイコーだぜ」
あんた何言ってんの。次会ったらお友達に殺されるわよっていう目を向けたけど、勇樹は不敵な笑顔のまま歩き出した。
「んじゃ、今から俺とデートしようぜ」
「いいの?」
「当たり前だろ。野郎とクリスマスを過ごすよりお姉さまと過ごす方が幸せだしぃ」
「最近シテないから溜まってるのかしら」
「そうなんだよなぁ。どっかのお姉さまがペットごときに意識しまくって、ウソついてまで距離を取ろうとするしさぁ」
「っ」
「おかげで珍しいもん見られたわ。もー、かわいすぎてかわいすぎて」
「うっさいわよ!」
「ぷぷっ、ツンデレ激かわ」
「デートするんでしょ!? さっさと案内しなさいよ! それともノープランなの? デートに誘っておいてダサくなーい?」
「うんにゃ、デート場所は……ここでーす」
たどり着いた先は懐かしい建物の前。小さい頃によく行っていた科学館だ。
「クリスマス限定でプラネタリウムやってんだってさ。星空が見たいって言ってたろ? 本物じゃねーけど、そこは勘弁してな」
「……覚えててくれたんだ」
「咲希の言ったことは全部覚えてんの。そこだけに特化した記憶力だからな」
「うっざ」
「空気読んでくれる!?」
軽口を叩きながら受付を済ませて入館。シアタールームに入ると、あまり告知をしてなかったのか、お客は数人程度だった。
勇樹と並んで椅子に腰掛ける。背もたれを倒して、まだ何も写ってないスクリーンを見てると、勇樹が小さな声で言った。
「キレイなもんでも見りゃゴチャゴチャしてるもんも落ち着くだろ」
何だ、どれもこれも全部バレてたのか。そうだよね、誰よりも近くで私だけを見てくれてたもんね。
それなのに、私は……
「おっ、始まった。久しぶりだよなぁ、プラネタリウム」
偽物の空には、偽物の美しい星たちが輝いてる。
偽物のくせに美しいことに、少し羨ましくなった。
勇樹と見る偽物の星空は嫌いじゃない。
それが答え。
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