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わたしとアイツと日常
8話
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この前の告白から距離は感じていた。咲希のことだから意識してんのかなと、それなら作戦は成功したと思ってた。
そう思ってしまうほど、あの時の告白に十分な手応えを感じてたから。
だから彼氏ができたって言われた時、マジでヘコんだ。慣れてるはずなのに、今さらだってのに、どうしようもなく落ち込んだ。
すぐに戻ってくると自分に言い聞かせて、でも日に日に開いてく距離がもどかしくて。ここで押したら二度と戻って来ないと、指を咥えて待つだけの日々を過ごした。
そうした結果、クリスマスの奇跡が起きたってわけだ。
お利口さんに待てして正解だった。やっぱりサンタさんはいるんだぜ。素晴らしい奇跡をありがとうございます。
これでまた十分に距離が縮んだ。
でも、もう少し、ほんのもう少し、咲希の心に近づいても、今日くらいは許してくれるだろうか。
「咲希?」
プラネタリウムが終わったのに、咲希は椅子を倒したまま。寝てんのかなと思って近づいて覗き込む。目を閉じてるだけで寝てはないらしい。
「何で寝たふりしてんの?」
「綺麗だったから余韻に浸ってんの」
「お気に召してくれたようで何よりっす」
「あんたにしては上出来よ。ほら、褒めてあげたんだからお礼を言いなさい」
「おーおー、いつもの調子が戻ったな」
「はぁ、美しかったわ」
満足そうな咲希についつい口が緩んでしまう。
「あっ! そうだ!」
この空気に便乗してプレゼントを渡そうと、昼間に買ったプレゼントをコートのポケットから取り出した。
咲希は「何よ」と返事してくれたけど、目は相変わらず閉じたまま。そのままでいてくれと願いながら、プレゼントのリボンをほどいて箱を開ける。小さなそれを手に握って、そそくさと箱をポケットに突っ込んだ。
「そういやさ、流れ星が流れてたよな」
「そうね、偽物でもテンション上がっちゃうわよね」
「俺、流れ星を掴んだぜ」
「……はい? 何を……」
「咲希に流れ星をプレゼント」
やっと目を開けた咲希の前に、小さなそれを持っていく。
「……あっ、ピアスだ!」
「ほしかったやつで合ってる?」
「合ってる! なんで分かったの!?」
「咲希がお利口にしてたから、流れ星に乗ったサンタさんがプレゼントを持って来てくれたんだぜ」
「ねぇ、さっきから恥ずかしくないの?」
「恥ずかしくなるから現実見せんな!」
「そうだ!」
咲希はカバンを漁って手鏡を取り出した。今付けてるピアスを外すとプレゼントのピアスを付ける。
「似合う?」
激かわ笑顔で聞いてくるその姿は天使そのもので、俺も笑顔で何度も頷いた。中学生に求めるプレゼントの値段じゃなかったけども、奮発して良かった。
いやほんと、小さくともダイヤって冗談抜きでも高いのね。いい社会勉強になったわ。婚約指輪のためにもまた頑張らねば。
「ありがとう!」
「うんうん、似合ってる。マジでかわいい」
「そんなこと私が一番知ってるわよ。もっと他の褒め言葉くらい言えないの? テンプレ通りでつまんない」
はっはっは、この天使激かわ生意気。アレコレして生意気でごめんなさいって言わせて泣かせてやりてえ。でも今日は特に激かわだから許してやろう。
「咲希からのプレゼントは?」
「何かほしい物でもある?」
「んー、ある。プレゼントっつーか、一つ質問があるんだけどさ」
「質問? そんなのでいいの?」
ずっと聞きたかった事がある。この流れで言うべきか悩んだけど、今しかないと思った。
「あの夏についてっつーか、……男遊びするようになったのは何で? 何が原因?」
咲希は何も言わずに立ち上がった。俺もそのあとをついていく。
あの夏から咲希はおかしくなった。親が言ってた【そういう年頃】の意味は分かるし、アイツが原因って知ってるけども、咲希の口から理由を話してほしい。俺を頼ってほしい。
「……」
外に出ても咲希は何も言わず黙って歩く。近づくにはまだ早かったと、反省しながら咲希の後ろを歩いた。
いつの間にか家の近所まで帰ってた。
この凍えた空気のまま終わるのだけは絶対に嫌だから、いつも通りのおちゃらけた空気に戻そうと思い、すぅっと息を吸った。
「あの頃」
「へは!?」
「好きな人がいたの」
いきなり喋り出すもんだから驚いたけど、小さな声で話すそれを聞き漏らさないよう、耳をすませた。
「アイツの望むことを何でもしてあげた。アイツが喜んでくれることが嬉しくて。でも……突然居なくなっちゃった。それっきり。それで終わり。それからね、人を好きになることがバカバカしく思えて、また傷つくのが怖かったの。……なんてことない、よくある話よね。ごめんね、ほんとにつまんない話で」
本当によくある失恋の話だ。
そこまで引っ張るような話でもねぇだろって思ったけど、もし俺が咲希にそんなことされたら死ぬまで引きずると思う。
そういうことだ。
それほど好きだった。
アイツのことを……
「そっか」
かける言葉が見つからない。でも言葉を求めてないのかも。言葉じゃなくて温もりで、ぽっかり空いた穴を埋めたいのかも。
自分じゃ治せねーよな、そーいう傷は。人の温もりや愛を感じてゆっくりと治っていく。……人につけられた傷だってのに。
だからこそ、難しい。
「話してくれてありがとうな」
咲希の隣に行きそっと手を繋いだ。冷たくなったそれが何とも心に沁みる。
くだらねえ嫉妬のせいだ。
俺もそんな風に想われたいと、こんなときにくそだせぇことを考えてしまう。
そういうところがガキなんだ。
もっとかっちょいい大人になって、大人の包容力で咲希の全てを受け止めたいのに。
俺にしとけって、かっこよく言えたらいいのに。
早く大人になりてえ。
「帰ったらクリスマスケーキ食べようね」
ネコみたいにすり寄る咲希に俺も体を擦り寄せた。冬の風で冷えた体に咲希の体温が溶け込んでいく。
「女体盛りしてくれんの?」
「あーんしてあげる」
「んー……上?それとも下?」
「どっちも」
「死ぬほどサイコーなクリスマスなんすけど」
このまま想いも溶け合えたらもっとサイコーなんだけど、何事も急がば回れ。待つことは慣れてる。
だから……
「一緒に寝る?」
「それはイヤ。あんたデカいし」
「つれねーなぁ」
俺の腐った純愛で、ゆっくりと傷を埋めていこうと、本物の空に輝く星に誓った。
そう思ってしまうほど、あの時の告白に十分な手応えを感じてたから。
だから彼氏ができたって言われた時、マジでヘコんだ。慣れてるはずなのに、今さらだってのに、どうしようもなく落ち込んだ。
すぐに戻ってくると自分に言い聞かせて、でも日に日に開いてく距離がもどかしくて。ここで押したら二度と戻って来ないと、指を咥えて待つだけの日々を過ごした。
そうした結果、クリスマスの奇跡が起きたってわけだ。
お利口さんに待てして正解だった。やっぱりサンタさんはいるんだぜ。素晴らしい奇跡をありがとうございます。
これでまた十分に距離が縮んだ。
でも、もう少し、ほんのもう少し、咲希の心に近づいても、今日くらいは許してくれるだろうか。
「咲希?」
プラネタリウムが終わったのに、咲希は椅子を倒したまま。寝てんのかなと思って近づいて覗き込む。目を閉じてるだけで寝てはないらしい。
「何で寝たふりしてんの?」
「綺麗だったから余韻に浸ってんの」
「お気に召してくれたようで何よりっす」
「あんたにしては上出来よ。ほら、褒めてあげたんだからお礼を言いなさい」
「おーおー、いつもの調子が戻ったな」
「はぁ、美しかったわ」
満足そうな咲希についつい口が緩んでしまう。
「あっ! そうだ!」
この空気に便乗してプレゼントを渡そうと、昼間に買ったプレゼントをコートのポケットから取り出した。
咲希は「何よ」と返事してくれたけど、目は相変わらず閉じたまま。そのままでいてくれと願いながら、プレゼントのリボンをほどいて箱を開ける。小さなそれを手に握って、そそくさと箱をポケットに突っ込んだ。
「そういやさ、流れ星が流れてたよな」
「そうね、偽物でもテンション上がっちゃうわよね」
「俺、流れ星を掴んだぜ」
「……はい? 何を……」
「咲希に流れ星をプレゼント」
やっと目を開けた咲希の前に、小さなそれを持っていく。
「……あっ、ピアスだ!」
「ほしかったやつで合ってる?」
「合ってる! なんで分かったの!?」
「咲希がお利口にしてたから、流れ星に乗ったサンタさんがプレゼントを持って来てくれたんだぜ」
「ねぇ、さっきから恥ずかしくないの?」
「恥ずかしくなるから現実見せんな!」
「そうだ!」
咲希はカバンを漁って手鏡を取り出した。今付けてるピアスを外すとプレゼントのピアスを付ける。
「似合う?」
激かわ笑顔で聞いてくるその姿は天使そのもので、俺も笑顔で何度も頷いた。中学生に求めるプレゼントの値段じゃなかったけども、奮発して良かった。
いやほんと、小さくともダイヤって冗談抜きでも高いのね。いい社会勉強になったわ。婚約指輪のためにもまた頑張らねば。
「ありがとう!」
「うんうん、似合ってる。マジでかわいい」
「そんなこと私が一番知ってるわよ。もっと他の褒め言葉くらい言えないの? テンプレ通りでつまんない」
はっはっは、この天使激かわ生意気。アレコレして生意気でごめんなさいって言わせて泣かせてやりてえ。でも今日は特に激かわだから許してやろう。
「咲希からのプレゼントは?」
「何かほしい物でもある?」
「んー、ある。プレゼントっつーか、一つ質問があるんだけどさ」
「質問? そんなのでいいの?」
ずっと聞きたかった事がある。この流れで言うべきか悩んだけど、今しかないと思った。
「あの夏についてっつーか、……男遊びするようになったのは何で? 何が原因?」
咲希は何も言わずに立ち上がった。俺もそのあとをついていく。
あの夏から咲希はおかしくなった。親が言ってた【そういう年頃】の意味は分かるし、アイツが原因って知ってるけども、咲希の口から理由を話してほしい。俺を頼ってほしい。
「……」
外に出ても咲希は何も言わず黙って歩く。近づくにはまだ早かったと、反省しながら咲希の後ろを歩いた。
いつの間にか家の近所まで帰ってた。
この凍えた空気のまま終わるのだけは絶対に嫌だから、いつも通りのおちゃらけた空気に戻そうと思い、すぅっと息を吸った。
「あの頃」
「へは!?」
「好きな人がいたの」
いきなり喋り出すもんだから驚いたけど、小さな声で話すそれを聞き漏らさないよう、耳をすませた。
「アイツの望むことを何でもしてあげた。アイツが喜んでくれることが嬉しくて。でも……突然居なくなっちゃった。それっきり。それで終わり。それからね、人を好きになることがバカバカしく思えて、また傷つくのが怖かったの。……なんてことない、よくある話よね。ごめんね、ほんとにつまんない話で」
本当によくある失恋の話だ。
そこまで引っ張るような話でもねぇだろって思ったけど、もし俺が咲希にそんなことされたら死ぬまで引きずると思う。
そういうことだ。
それほど好きだった。
アイツのことを……
「そっか」
かける言葉が見つからない。でも言葉を求めてないのかも。言葉じゃなくて温もりで、ぽっかり空いた穴を埋めたいのかも。
自分じゃ治せねーよな、そーいう傷は。人の温もりや愛を感じてゆっくりと治っていく。……人につけられた傷だってのに。
だからこそ、難しい。
「話してくれてありがとうな」
咲希の隣に行きそっと手を繋いだ。冷たくなったそれが何とも心に沁みる。
くだらねえ嫉妬のせいだ。
俺もそんな風に想われたいと、こんなときにくそだせぇことを考えてしまう。
そういうところがガキなんだ。
もっとかっちょいい大人になって、大人の包容力で咲希の全てを受け止めたいのに。
俺にしとけって、かっこよく言えたらいいのに。
早く大人になりてえ。
「帰ったらクリスマスケーキ食べようね」
ネコみたいにすり寄る咲希に俺も体を擦り寄せた。冬の風で冷えた体に咲希の体温が溶け込んでいく。
「女体盛りしてくれんの?」
「あーんしてあげる」
「んー……上?それとも下?」
「どっちも」
「死ぬほどサイコーなクリスマスなんすけど」
このまま想いも溶け合えたらもっとサイコーなんだけど、何事も急がば回れ。待つことは慣れてる。
だから……
「一緒に寝る?」
「それはイヤ。あんたデカいし」
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