カオス・ティアーズ

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真実と裏切り【3】

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(何かが、おかしい…。

一体、何がどうなってるんだ?)


明らかに何かが違っていた。


周囲が妙に慌ただしい様に感じる。


何か不測の事態でもあったのだろうか?


僕は胸騒ぎを感じ研究室を出た。


後は、ほぼ最終調整と言うべき作業のみ。


設定と調整のみであれば他のメンバーでも、可能であろう。


つまり僕や癒美奈さんでなくても、進める事は出来る範囲と言う事になる。


それ故に、僕は後の調整を研究チームの皆に任せ、癒美奈さんを捜しに出た。


やはり最後は研究チーム副主任である癒美奈さんが、居なければ始まらない。


主任である僕が、癒美奈さんを捜しに行く事を告げるとチームの皆は「主任、早く副主任を捜しに行ってください。」


「本当そうですよ全員、揃わないで結果だけ伝えるなんて虚しいですからね?」


「余り長くは待てませんよ?

だから彼方主任はさっさと、果具螺副主任を呼んできてくださいよ?」


等々、大体が主任を主任とも思われぬ叱咤に等しき、口の悪い言葉の数々が放たれる。


だが、それは決して僕が、嫌われているが故に放たれたものではない。


皆、口は悪いが根は優しい者ばかりである。


が、恥ずかしがり屋が多いが故に素直な一言が少ない…。


ただ、それだけの事なのだ。


彼らもまた不遇なる境遇故に、そんな在り方しか出来ないのは仕方がない事かも知れない。


だが、そんな痛みを知る彼らとだからこそ、この過酷な条件の研究を共に補い合いやってこれたのである。


そう…彼らの惜しみない協力があったからこそ、この研究はここまで辿り着けたのだ。


だから彼らは只の同僚などではない。


彼らは苦楽を共に過ごした言うなれば、第二の家族と言うべき人達だった。


そして、それは彼らにとっても同じであろう。 


だから彼らは僕同様、癒美奈さんが来るのを心待ちにしているのだ。


(何か皆、目が血走ってたな?

これは、さっさと癒美奈さんを連れ帰らないと色々と理由をつけてまた、イッキ飲みやら激辛い料理とかの餌食にされかねないな…。)


正直、幾らなんでも、それは御免である。


そんな事になったら、また吐きまくる為にトイレにかじりついていなければならなくなるからだ。


(あの時の再現は、冗談抜きで笑えないな…?)


僕は過去の悪夢をふと思い出し、思わず顔をしかめた。


あの時は、泥酔した神奈宮【かなみや】さんの気分を損ねて、酒をイッキ飲みさせられたのだが…。


今のままだと恐らく神奈宮さん中心にシラフでも、そんな事をやらかしかねない…。


神奈宮さんはノリや気分で、そんな事をやり出す少し困った所のある女性である。


だが彼女は、面倒見は良く頼れるお姉さんと言う側面も持ち合わせていた。


そして、そんな彼女だからこそ、癒美奈さんと並んでムードメーカーの役割を担ってくれていたのである。


何より彼女は癒美奈さんとは妙に、気が合う。


そのお陰で、お酒を飲んだ時に運悪くどちらかの気分を損ねると、二人は徒党を組み災難が二倍に膨れ上がるのである。


そうなってしまったら正直、最悪としか言うようがないのだが…それを見てるが故に、二人が如何にお互いを思いやっているかが僕にも分かった。


だから特に彼女は癒美奈さんの姿が見えない事に多少なりとも、不安を感じているだろう。


何せ、これだけ周囲がバタバタしているのだから、当然である。


僕とて家族の状況は気になるが、先ずは癒美奈さんを探す事が優先であろう。


勿論、研究最終段階での立ち会いと言う理由で彼女を捜してはいるが、それ以上にーー。


ーー正直言うと、何か悪い予感がしてならなかったのである。


だからなのかも知れない。


三十分としない内に僕は彼女を必死になって探していた。


(くっ……。

おかしいぞ……研究エリアは、これで全部探した筈だ…?

だとしたら、後は封鎖エリアぐらいしか…?)


その時、僕の脳裏に良からぬ考えが過る。


癒美奈さんが居るのは、封鎖エリアなのではないかと言う考えだ。


だが、封鎖エリアは危険判断された研究サンプルや、研究結果を安全の為に隔離処理する為のエリアである。


普通に考えて、そんな所に行く理由は癒美奈さんには無い筈…。


が……もし、この警戒態勢が封鎖エリアや癒美奈さんと関係ある事ならば、この慌ただしさは頷けた。


ならば僕が行くべき場所は、もうそこしかあるまい。


状況を考えたら迷っている時間はなかった…。


何が起こっているのかまでは見当もつかないが、少なくとも癒美奈さんがこの騒動に十中八九の確率で関わってしまっている事だけは確かだろう。


(兎に角、急いで癒美奈さんを見つけないと…!)


状況は癒美奈さんから聞けばいいのだ。


だから今は、考える必要はない。


全ては、癒美奈さんを見つけてからの話なのだから。


だが、そんな中でただ一つだけ確信にも似た直感が僕の中には存在していた。


その直感とは癒美奈さんは恐らく、窮地に立たされている。


そんな直感。


そして、それ故に急がねばならなかった。


彼女が居るであろう封鎖エリアへーー。










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