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第15話 松梅コンビ再び
しおりを挟む試験も終わって今日は何の予定もないし、家に帰って勉強しなきゃ……って、試験終わったばかりなのに医学部生は辛い……。と思いながら駐輪場に向かっていると
「佐倉さん!」
突然背後から声をかけられて、思わずビクリと肩が揺れる。
「急にでかい声出すな」
振り返れば、お梅君がお松君の脇腹を突っついているところだった。
「ごめんごめん、その後怪我の方はどう?」
「痣もちょっと薄くなったな」
「うん、おかげさまで痛みも全然ないよ。
骨もヒビとか入ってなかったし、丈夫な体に生んでくれた親に感謝だよ」
「よかったー、じゃぁ早速本題!この後時間あるかな?」
「早速だな、誘い方が下手なナンパ野郎みたいだ。」
「ナンパじゃない!…いや、誘う時点でナンパになるのか?」
「そこを掘り下げるなよ…。
ほんとゴメン佐倉、この前の佐倉のオカルト体験話を詳しく聞きたいんだってさ、これでも我慢してた方なんだ。試験が終わるまではって、こいつなりに…。
嫌だったら断ってもいいし、何なら学事務に通報してくれていいから」
申し訳なさそうにお梅君が謝罪するのを大丈夫だからと、止めつつ少し考える。
ちょっとな…怖くて思い出したくない気持ちもある。けど、誰かに聞いてほしい気持ちもある。ほんの数秒考えて
「いいよ、と言っても気のせいで片付いちゃうような話だけど…」
「ほんと!!!?ありがとう佐倉さん!!!」
お松君が勢いよく私の両手を取ると、ブンブンと上下に振るので腕が抜けそう!!
「だから!やめろって!」
そう言うとお梅君の大きな掌がお松君の頭をガシりと掴み、ギリギリと掴み上げる。
「痛っ!!いだだだだだっ!!ストップ!ストップぅぅぅ!頭頂骨が砕けるっ!!」
騒ぐお松君を、他の学生たちがくすくす笑いながら通り過ぎていく、はっ恥ずかしい…早くここから離れたくて、二人を止めながら口を開く
「とっ、ともかく場所移動しよう!何処が良いかな?」
「いてて…それならよい場所があるよ」
そう言いながら掴まれていた頭をさすり、涙目のお松君が付いて来てと回れ右をする。
やれやれ、と言った顔をしたお梅君と共にその後を追う。
一号館の中に入るとエントランスを突っ切り、ずらりと並んだ研究室も通り過ぎていく、もしかして……奥まったところにある地下へと続く階段へと向かっているような…。てっきり、オカルトサークルの部室にでも行くのかと思ったのに、私のソワソワしたのを察したのかお松君がこちらを振り返る。
「お察しの通り、向かうのはこの前の部屋だよ」
「お前…」
「おおおおお松君!?流石にそれは…確かにこの前は何もなかったけど、心霊現象で有名な地下1階だよ!?私の友達も、歌が聞こえたって…女の人の声で…」
するとお梅君が「あぁ…」と言いながら少し考えながらと言うような感じで口を開く
「その女の人見たとか、歌聞こえたとか心霊現象の話をよく聞くけど、今思うとそれ全部、桜井先生なんじゃないか?」
「はっ!?」
お梅君の言葉に、確かに……と納得する。あれ全部、桜井先生がコソコソあの地下に出入りしてて目撃されてただけなのでは!?
「ロマンの欠片もないことを無いことを言うもんじゃないよ、お梅君!」
今度はお松君がやれやれとい言わんばかりにお梅君を見る。
「オカルトにロマンも減ったくりもないだろ!」
そんなやり取りをしながら、地下への階段を下りる。蛍光灯を交換してもすぐに切れてしまうという地下一階は、下に下れば下るほど闇に包まれていく、かろうじて一階の明るさが届いているので階段周りは明るいが、長い廊下の先は吸い込まれるような闇だ。この前は痛みで辺りを気にする余裕がなかったが、改めてくると怖くて思わず息をのむ。それと同時に、よく桜井先生はこんなところを1人で出入りできるなとも思ってしまう。恐怖感とかないのかな?
何処から取り出したのか、お松君がカチッと音を立てて銀色の懐中電灯に光をつける。
「準備良すぎだろ」
すかさずお梅君が突っ込みを入れる。
「あれから何度も一人で来てるからね。」
ここにもいた…恐怖感ない人……。
えぇぇ…と、お梅君と共にお松君を冷めた目で見てしまう。
「そういえば、オカルト研究部ってお松君とお梅君の他にも部員いるの?」
「俺は部員じゃない…。付き合わされてるだけだ。」
「またまたー、嫌いじゃないくせにー」
「俺が嫌いなのはお前だ」
「酷いっ!!」
幽霊が出ると言われる地下一階の闇の中でも、2人の漫才のような掛け合いのおかげで恐怖が和らぐ
「冗談はさておき、オルト部員は3人いたんだけど上の先輩方が卒業しちゃって、今は僕一人だよ、部室は汚すぎて女性を通せるような環境じゃなくて……。」
「男やもめに蛆がわくってやつだもんな、蛆じゃなくてゴキブリだけどさ」
「うっ……。少しずつ掃除してるんだって!」
「何年かかる事やら」
やんや言いながら歩いているうちに、この前の部屋の前にたどり着くとガラリと木製の引き戸を開け中に入っていった。
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