2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな

弥生菊美

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第31話 協力体制

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 ガヤガヤと賑やかな騎士専用の食堂、その食堂に珍しく騎士団長と副団長の姿があった。
他の騎士達に挨拶をされ、夕食が漫ろになりながらもスープを口に運ぶ

「すまないなフィオン、私の我儘に付き合わせて」

「構わないさハイル、偶には食堂で食べるのも悪くない。
自室で食べると、どうしても片手に書類、片手にスプーンで食べた気がしないからな」

「ハハハ、君もそうか!
私も仕事をしながら食事をしてしまいがちでね」

同僚との対話いもない会話をしていると、後ろの席の若い騎士3人の会話が耳に入る

「えっ!?お前、青葉さんに贈り物したのかよ!?
何、何をしたんだ!?と言うかどんな反応したんだ!?」

「俺も気になる!青葉さんって、その辺の貴族の女と違って宝石とか興味なさそうじゃん!」

「はぁ…その通りだよ…。
一応、控えめな感じの方が良いだろうと、小さめのブルーサファイアのネックレスを贈ろうとしたんだ。
そしたら、後ずさる程断られた。そんな高いものは絶対に受け取れないって…。」

「後ずさる程って、ドン引きされてるじゃんお前…まぁ、でも普通は喜ばれるもんなー、宝石とか高級品ってさ」

「さすが青葉さんだな、故郷の風習かなんかであるのかな?
恋仲でもない相手から宝石は受け取れないとかさ、んで?結局どうしたのさ?」

「何なら受け取って貰えるか聞いたら、お店に来てくれるだけで十分だって…」

「本当に?」

「本当かよ?」

「うぐっ…本当だけど…それでも食い下がったら、お花とかお菓子ならって、今度持って来るって言ったら、まぁ何時もの従業員に邪魔されて、それ以上は話せなかったよ…青葉さんの親戚だっけ?あいつらのガード硬すぎ…」

「欲がないなー青葉さんは」

「この国の女だったら、男の贈り物の金額で財力と相手の気持ちを測るからなー、そんな安い物なんてまずねだらない。
と言うか、お前が恋愛対象外だから持ってこられても困る。
という、青葉さんなりのお断りの意味なのでは?」

「アハハハ!それ有り得る!」

「おいっ!!お前ら!!!好き勝手言うな!!!」

ガチャガチャと音を立てながら皿を片付け、席を立って食堂を出て行く若い兵士達




 先程の騎士達の話がハイルの頭の中をグルグルと回る。

贈り物か…。

「まったく賑やかだな若い奴らは…どうしたハイル?急に黙り込んで?」

「あっ、あぁ…すまない…少し考え事をしていて…そう言えばフィオン、君のお姉さんは茶会好きだったと思ったが…、どこか良い焼き菓子の店は知らないだろうか?」

「おいハイル…君まさか、さっきの話…「皆まで言わないでくれ…」」

「君が女性に贈り物とは…青葉って子は料理が美味いって評判の女主人だろ?まさか、女に興味がないと思っていた天下のハイル様が街娘を選ぶとは、どんな子か興味が出てきたな」

「フィオン、君は婚約したばかりだろ!
彼女は一般人、貴族のような駆け引きができる人じゃない。
変な横槍は入れないでくれ」

「ほぉー、まるでもう付き合っているみたいな口ぶりじゃないか」

 意地悪くニヤリと笑ってやれば、ハイルの頬が薄く染まる。
自分で言っといて何だが、マジかっ…貴族学校時代に付き合っていた女が居たが、1ヶ月と経たずに女の方から

「私を馬鹿にして楽しい!?お情けで付き合ってくれているなら、最初から告白の了承なんてしないでほしかった!」と、ハイルが平手打ちを貰っていた事を思い出す。

 それから、一切浮いた話が上がったことがなく、対象は男なのでは?と噂されるほどだ。

「なな何を言うんだ!付き合ってなど、そんな……彼女に認識してもらったのは、つい先日と言うレベルだ…とても付き合うなど…程遠すぎる。」

「お前の見た目なら、1度会っただけで十分だろ?
次会った時に、高い宝石の一つや二つ用意して結婚を申し込めば良いんじゃないか?
君の家族が納得するかは知らないが、女性の方は秒で頷くだろ」

 そう言うと、はぁ…と深いため息を吐くハイル、なぜため息をつく必要がある?もしや、その青葉と言う女が落ちないとでも思っているのか?
 まぁ…ハイルは見た目がいいくせにそれを最大限利用して来なかったのだ。
故にこの男の恋愛経験は先の通りほぼ皆無、しかしこの見た目なら落ちに女はいないだろ

「青葉さんは絶対に頷かない。
先程の若い騎士と同じく断られる。
我ながら不毛…いや、自分勝手だとは分かってるんだ。
自分に靡かずに僕自身を見て評価してくれる青葉さんに惹かれて…けれどそれは彼女が僕を好きにならない事と同義だと言うことを…」

 そう言って俯くハイルに、コツイ…と思わず引いてしまう。
だが、ハイルとしては本気で悩んでいるのだ。
友人として、放っておくわけにも行かない。
青葉という子がどんな子なのかは知らないが、このハイルが惚れるくらいなのだ…悪い子では無いのだろう…多分…。

「ハイル…君は、恋愛経験が無いのは分かっているが、分かっているんだけれど、その台詞を他の若い奴等の前で言ってくれるなよ、反感を買うからな…」

「…?」

「はぁーーーー、分かってないようだから説明してやる。
いいか、君以外の大抵の人間は初見で恋愛感情をを抱かれる事なんて皆無なんだ。
普通は知り合い程度の間柄から始まって、相手に好意がある事をやんわり、少しずつ伝えて距離を縮めて、そこで初めて想いを伝えて結ばれるんだ。
君の場合は会ってすぐに、相手の好意がMAXなのが当たり前で気づいていないのだろうけど、青葉さんの対応は俺達の普通なんだよ…理解できたか?」

「これが普通…」

「そうだよ、此処から君が青葉って子に少しずつ好意がある事を匂わせ、伝えて、距離を縮めて行くんだ。
君がさっき言っていた焼き菓子をプレゼントするというのも、お近づきになるには良い方法だと思う。
けれど、それじゃ靡かないんだろ?
だったら、物をプレゼントして心を引こうとするよりも、もっと別の方法を考えないとな」

そう言って笑えば、ハイルがテーブルに手をつき前のめりになる

「教えてくれ、フィオン!
恋愛経験が誰よりも多い君の助言が必要だ。」

「君に言われると、何だか複雑な気持ちだが…まぁ、良いだろう!
このフィオン!友人の恋路を成就させるために、全力で協力しようじゃないか!」

「フィオン!!」「ハイル!!」

 食堂の真ん中でガシリと抱き合う2人を見た騎士達が、騎士団長と副団長は唯ならぬ関係なのでは!?と言う噂話が瞬く間に広がり、ハイルの恋愛対象は男説は本当だった。と確信を持たれたのだった。




「えっ!?ハイル様の恋愛対象は男性なんですか!?」

「青葉ちゃんも知らなかったのねー!?
そうらしいよー、このお店に最近よくハイル様来るでしょ!
狐鈴さんか、ゴコクさんに会いに来てたりしてー」

「キャァー♡それはそれで、目の保養♡」

 デザートを頬張りながら話す宝飾店の女性店員2人が、フォークを片手にキャーキャー言っている。
この世界にも同性愛とかあるんだなー、と呑気に考える。
確かに見た目の良い人に限って対象が同性だったりする事あるし、この2人も話していたように、もしや本当にハイル様はゴコクさんと、狐鈴さんの何方かを気に入っている!?
最近よくお店に来てくれるのはそういう事!?と、思わず「はっ!?」として、口元に手を置いてカウンターを振り返れば、目のあったゴコクさんが薄く微笑み、狐鈴さんがヒラヒラと手を振って来る。

「それは確かに、きゃぁー♡って、私でも言っちゃいそうです。」

そう言って、女性店員2人の方に視線を戻せば

「進展があったら詳しく聞かせて青葉ちゃん!!」
「絶対だからね!」

「任されました!」

賑やかな店内に、凛とした青葉の声が響いたのだった。
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