2度と恋愛なんかしない!そう決意して異世界で心機一転料理屋でもして過ごそうと思ったら、恋愛フラグ!?イヤ、んなわけ無いな

弥生菊美

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第48話 危機

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  ソフィリアの言葉に、やはりこの少年はそうなのか……と考えてしまう。
こんな時間に子供が二人だけでうろうろしているはずもない。
身なりはごく一般的な家庭の子供といったっ感じではあったから、そんな組織に加担しているような風には見えなかった。
身なりで判断したくなかったけど……、などと今更ながら内心で言い訳をする。

「……。」

 無言で俯いている少年。
その少年に、ソフィリアが防具をカシャカシャと鳴らしながら近づいていく、ソフィリアが少年に手を伸ばそうとしたその時、バッと顔を上げた少年が脱兎のごとく走り出した。

「待ちなさい!!」

叫んで走りだそうとしたソフィリアだったが、その踏み出した足を直ぐに踏みとどめた。

「ソフィリアさん、私の事は良いですから!」

そう言葉をかければ

「んな事できるわけないでしょ!!って、って言ってるそこから……」

 ソフィリアが私の背後を見やる。
それにつられるように後ろを向けば、左右の路地から悪党を絵に描いたような男達が5人ぞろぞろと出てくる。
あぁ……これは、もう嫌な予感的中です。
私自身は自業自得……、いざとなればソフィリアさんだけでも逃げてもらうしかない。

剣を鞘から抜いて、私を自分の背後にかばうようにソフィリアさんが前に出る。

「ソフィリアさん……」

「腕に覚えはあるけれど、5人同時は分が悪いわね。
この周辺の家は空き家が多い。
逃げるなら、奴らを突破して広場まで走って逃げるしかない。
私が道を開くから、アンタは走り抜けなさい。
それくらいできるでしょ!」

「ソフィリアさんが逃げた方が「馬鹿言わないでよ!騎士が市民置いて逃げるなんて、恥も恥じよ!!」」

「すみません……」

「嬢ちゃんがた、話は終わったかい?
用があるのは後ろのお嬢ちゃんだけなんだがね。」

「良いじゃねーかこの際、この気の強そうな騎士様もなかなかのベッピンじゃねーか、こりゃ高値で売れるぜ」

 剣を肩に乗せ、ガラの悪い男どもがこちらへとジリジリと近寄ってくる。
自分で招いた事なのに、怖くて足が震えそうになる。
逃げられるのだろうか、走りだせるのだろうか?
馬鹿な自分のせいで、また迷惑を掛けてしまうと思うと、薄っすらと目に涙が溜まる。

「自らが誘拐組織の一味だと名乗るとは、ずいぶんと余裕だな貴様ら、教会の放火も騎士団の気をそらす為の策というわけか」

「その通りだ。
そろそろこの国での仕事も潮時なんだがな、最後にどうしても後ろの嬢ちゃんを買いたいって変態野郎がいてな、まぁーこれが気前が良いのなんのって、目の前に金貨つまれりゃ、そりゃ最後に一仕事してやろうかって思う気にもなるってもんよ」

「屑どもがっ!!
貴様らのアジトは割れている。
すでに騎士団の一部が突入しているはずだ。
一仕事する前にとっとと失せた方が身のためだぞ」

「さすがは騎士様、吠えるねー。
あれだろ、逃げた女の話だろ?ありゃ確かに、惜しいことをしちまった。
馬鹿が一人とちったせだが、すでに手は打ってある。
アジトはもぬけの殻だろうな、残念だったな騎士様?
さぁ、話は終いだ。
さっさとどきな!」

そう言って、男たちが剣や斧を手にしてさらに距離を詰めてくる。

このままだと、私のせいでソフィリアさんがっ……、そう思っているとふと頬にふわりとした感触が伝わり、リンちゃんの存在を思い出す。
みれば、肩で小さいながら毛を逆立てて必死に威嚇している。

「リンちゃんお願い!
ソフィリアさんを助けて!もしダメなら私を置いて行っていいから、皆にこのことを知らせて!」

そう伝えれば、リンちゃんが驚いたようにこちらを見る。
正直、リンちゃんにどんな力があるかは知らない。
でも、いつも狐鈴さんがリンちゃんに私を守るように言ってくれるという事は、何かあるのかもしれない。
リンちゃんがキューンと小さな声で鳴きながら首を振る。
まるで、置いていけないと言っているように聞こえた。

「お願いリンちゃん、私のせいでこの世界の大切な友人を傷つけたくないの」

そう伝えると、つぶらな瞳がユラリと揺らいだ気がした。
シューちゃんの大切な世界、私のせいで……私の身勝手な行動で傷つけたくはない。
きっと、これは自己保身であるのかもしれない。
そんなバカみたいな自分の自己保身のために、リンちゃんに辛い決断をさせようとしている。
なんて最悪なんだろう私って…なりたく無い最悪のバカ女だ……。

「青葉!アンタこの非常時に何一人でブツブツ言ってんの!!
今がどういう状況か分かってんの!?」

そう叫ぶソフィリアさんを横目に、リンちゃんがトンと私の肩からソフィリアさんの肩へと飛び移る。

「リンちゃん……、ありがとう」

そうつぶやくと同時に、ソフィリアさんの体が光ったと思うと一瞬で視界からソフィリアさんの姿が消えた。

「うわぁっ!?」
「なんだ!?何が起こった!?」
「騎士が消えた!?はぁ??」

 動揺する男達、その姿を見てふと体から力が抜けて地面にへたり込む、良かった……。
これから自分がどうなるか、想像もしたくない。けれど……よかったと思うと同時に、烈火のごとく怒り狂うソフィリアさんの姿が目に浮かび、苦笑いする。

「おい、まさかお前がやったのか?」

一人の男が、へたり込んでいる私の胸倉を掴んで無理やり上を向かせる。

「……違います…出来たら自分が逃げてますよ
エシュテル神の加護では?」

ハハッと、自分でも驚くくらい投げやりな乾いた笑いが口から洩れた。

「馬鹿にしやがってこの女!!」

殴りかかろうとする男をみて、思わずギュっと目を瞑る。
が、パシリとその手を、先ほど流暢にソフィリアとしていた男が止めた。

「馬鹿が止めろ!
傷一つつけるなと言われているだろ!」

「チッ」

「おいさっさとしろ、だれか来るかもしれねーだろ」

「おい!だれか、シクじったあのクソガキ探してこい。」

どうやら、この男はリーダーなのかもしれない。
掴まれた胸倉を乱暴に離されて、また地面に這いつくばるように倒れこんだ。

「嬢ちゃん、恨むなら依頼主のあの変態を恨むんだな」

そう言い終わると同時に、頭に強い衝撃を受ける。

皆、本当にゴメンンなさい……。

そう思ったところで意識が途切れた。







後書ーーーーーーー
以下、後書に今後の展開について触れますので知りたく無い!と言う方は、目を通されませんようご注意下さい。








さて、今後の事につきましてお話しさせて頂きたいと思います。
もしかしたら、読者様の中には「あれ?作者、終わらせに掛かってる?」と、感じている方もいらっしゃるかもしれませんが…お察しの通り、あと2話程で完結予定です。
ですが、逆ハーレム、乙女ゲーよろしく、最後の1話は各キャラごとのENDを用意しております。
物語の登場順に、レイ、ゴコク、エリティナ、狐鈴、ハイルの予定です。
今まで通りの週1ペースでのアップとなります。
感想、レビューの解放は、レイ編のENDをアップした時点での開放を予定しております。
そして、最後のハイルが書き終わった時点で、小説の設定を「完結設定」とさせて頂きます。

それでは、引き続きお付き合いの程
何卒よろしくお願い申し上げます。
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