24 / 107
第24話『夜ふかし』
しおりを挟む
身元のない彼女を引き受ける事を決めてからは早かった。
ここは中央ギルド、保護者申請もその場ですませられる。
元Bランクだった実績もあり保護申請は早かった。
ちょっとした書類手続きをした程度だ。
彼女について分かったことはそんなに多くはない。
中央ギルドが管理している情報には登録のない少女。
名前、出身、年齢、親、すべてが不明。
『分からない』ということだけが、分かった。
それが俺がギルドで知った彼女の全てだ。
俺は彼女を連れてこの村に帰ってきた。
ルナもユエも、彼女をあたたかく迎えてくれた。
これが俺と彼女との出会いの全てだ。
「おっさん、まだ起きてたかー?」
「おこちゃまは寝る時間でしゅよ。ルナは夜ふかしか?」
「ちゃう。おしっこー」
「さては、寝る前にお茶飲みすぎたんだろ?」
「まぁねー。そーだけどさぁ」
「ユーリさん。ルナさんは、ユエさんのお茶の試飲を手伝っているようですよ」
「仕事か。それなら、仕方ないな。えらいえらい」
「あたいの髪をわちゃっとさわるなーっ!」
こう言っているがルナは俺の手首を掴み撫でさせている。
ちょっと頭を撫でただけなのに、わちゃわちゃになってしまった。
つーか、ルナどんだけ力が強いんだよ……。
「おっさん。えーっと……この子、夜ふかしの人なのかぁ?」
「その子の名は、テミスっだ。夜ふかしの人ではない」
「あたい、ルナ。てーにゃんよろしくっ!」
「…………っ」
ルナは力強くテミスの手を握っている。
こーいう時にルナに結構助けられてる面はある。
それにしても、「てーにゃん」か。
名前の面影が「テ」しか残ってないな。
まぁ、「おっさん」よりマシと考えるか。
でも、なるほど、「テー」、か。
呼びやすい愛称ではあるか。
さっそく使ってみるか。
「テーも、そろそろ休め。夜ふかししてると、おばけがでるぞ。それとも、ルナのイビキがうるさくて眠れないか?」
テミスはふるふると首を振る。
「あたい、イビキなんてしないもんっ。そいうの、えんざいってんだーっ」
「冗談だ、怒るなっ! ルナは淑女だからイビキなんてしないもんなー」
「せやでーっ」
「おっさん、あたい、てーにゃんに仕事教えてもいいかぁー?」
「良いけど、ルナも今の仕事だけでも大変じゃないのか?」
「あたい、超だいじょーぶだよっ!」
「うむ、根拠は分からんが、いい返事だ。そんじゃ、ルナは教育長に任命だ」
「えーっ……試食大臣はぁ?」
「ルナは試食大臣から、試食超大臣に昇格。教育長と兼任してくれ!」
「やったーっ!」
ルナは俺の手首を掴み、自分の小さな頭を撫でさせる。
まぁ……ルナに掴まれなくても、頭を撫でてはいたが。
あーぁ、力任せに撫でさせるから……髪がくしゃくしゃだ。
アルテが、胸元からクシを取り、ルナの髪をとかしている。
年の離れた姉妹みたいで微笑ましくはある。
「そういうわけで、テーはしばらくはルナと一緒に行動して欲しい。構わないか?」
小さくこくりと、うなずく。
「ルナと一緒に村で過ごして、学んでくれ。ゆっくりで構わない」
少し深めに頷いている。
分かったということなのだろう。
この村にいつの間にか人が集まってきている。
……なにかがあった時のことは考えていはいる。
もちろん、なにかは起こらない。
まぁ、掛け捨ての生命保険みたいなもんだ。
俺に何かがあれば彼女たちはギルドマスターが保護する。
あの男は堅物だが、約束や契約ごとは、絶対に守る。
人生は長い。
ゆっくり学んでいけば良い。焦る必要はない。
いっぱい挑戦して、いっぱい失敗して、それでいい。
失敗の帳尻り合わせは俺《大人》にまかせておけばいい。
今は、楽しい想い出をたくさん作ればいい。
それができれば、花丸100点満点だ。
ふと想い出し、あたたかな気持ちになる、そんな。
ここは中央ギルド、保護者申請もその場ですませられる。
元Bランクだった実績もあり保護申請は早かった。
ちょっとした書類手続きをした程度だ。
彼女について分かったことはそんなに多くはない。
中央ギルドが管理している情報には登録のない少女。
名前、出身、年齢、親、すべてが不明。
『分からない』ということだけが、分かった。
それが俺がギルドで知った彼女の全てだ。
俺は彼女を連れてこの村に帰ってきた。
ルナもユエも、彼女をあたたかく迎えてくれた。
これが俺と彼女との出会いの全てだ。
「おっさん、まだ起きてたかー?」
「おこちゃまは寝る時間でしゅよ。ルナは夜ふかしか?」
「ちゃう。おしっこー」
「さては、寝る前にお茶飲みすぎたんだろ?」
「まぁねー。そーだけどさぁ」
「ユーリさん。ルナさんは、ユエさんのお茶の試飲を手伝っているようですよ」
「仕事か。それなら、仕方ないな。えらいえらい」
「あたいの髪をわちゃっとさわるなーっ!」
こう言っているがルナは俺の手首を掴み撫でさせている。
ちょっと頭を撫でただけなのに、わちゃわちゃになってしまった。
つーか、ルナどんだけ力が強いんだよ……。
「おっさん。えーっと……この子、夜ふかしの人なのかぁ?」
「その子の名は、テミスっだ。夜ふかしの人ではない」
「あたい、ルナ。てーにゃんよろしくっ!」
「…………っ」
ルナは力強くテミスの手を握っている。
こーいう時にルナに結構助けられてる面はある。
それにしても、「てーにゃん」か。
名前の面影が「テ」しか残ってないな。
まぁ、「おっさん」よりマシと考えるか。
でも、なるほど、「テー」、か。
呼びやすい愛称ではあるか。
さっそく使ってみるか。
「テーも、そろそろ休め。夜ふかししてると、おばけがでるぞ。それとも、ルナのイビキがうるさくて眠れないか?」
テミスはふるふると首を振る。
「あたい、イビキなんてしないもんっ。そいうの、えんざいってんだーっ」
「冗談だ、怒るなっ! ルナは淑女だからイビキなんてしないもんなー」
「せやでーっ」
「おっさん、あたい、てーにゃんに仕事教えてもいいかぁー?」
「良いけど、ルナも今の仕事だけでも大変じゃないのか?」
「あたい、超だいじょーぶだよっ!」
「うむ、根拠は分からんが、いい返事だ。そんじゃ、ルナは教育長に任命だ」
「えーっ……試食大臣はぁ?」
「ルナは試食大臣から、試食超大臣に昇格。教育長と兼任してくれ!」
「やったーっ!」
ルナは俺の手首を掴み、自分の小さな頭を撫でさせる。
まぁ……ルナに掴まれなくても、頭を撫でてはいたが。
あーぁ、力任せに撫でさせるから……髪がくしゃくしゃだ。
アルテが、胸元からクシを取り、ルナの髪をとかしている。
年の離れた姉妹みたいで微笑ましくはある。
「そういうわけで、テーはしばらくはルナと一緒に行動して欲しい。構わないか?」
小さくこくりと、うなずく。
「ルナと一緒に村で過ごして、学んでくれ。ゆっくりで構わない」
少し深めに頷いている。
分かったということなのだろう。
この村にいつの間にか人が集まってきている。
……なにかがあった時のことは考えていはいる。
もちろん、なにかは起こらない。
まぁ、掛け捨ての生命保険みたいなもんだ。
俺に何かがあれば彼女たちはギルドマスターが保護する。
あの男は堅物だが、約束や契約ごとは、絶対に守る。
人生は長い。
ゆっくり学んでいけば良い。焦る必要はない。
いっぱい挑戦して、いっぱい失敗して、それでいい。
失敗の帳尻り合わせは俺《大人》にまかせておけばいい。
今は、楽しい想い出をたくさん作ればいい。
それができれば、花丸100点満点だ。
ふと想い出し、あたたかな気持ちになる、そんな。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
139
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる