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話し合おう
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「ステラに襲われたんだって?
俺の弟がごめんな。
まさか君への執着がここまでだったとはなぁ、、。
こんなもんまでつけちゃってね。
俺が外してあげたいけど、、これ無理っぽいね。
つけた本人しか外せないな。
ごめんだけどこうするのが俺でも限界だな。」
男は笑いながら俺についている魔道具をじゃらじゃらと揺らして遊ぶ。
あの、やめてくれます?
目線で訴えかけても男は楽しそうに魔道具をいじっていた。
あの後、俺はなぜかやってきたこの目の前の男につれ出されて破られた服の上から羽織れるものをかけられたあと魔道具をいじられ、体は動くようになったが魔道具は付けられたままだった。
「なぁ、どこまで襲われたの?
俺に少しくらい教えてくれてもいいだろ?
こんなふうに助けてやったんだから。」
この人はなんなんだ!?
黒髪に赤い瞳はステラにそっくりだ。
だけどなんか面影を感じるくらいで顔全体はそこまで似ていない。
「あの、あなたは誰なんですか?」
俺が聞くと男は思い出したような顔をした。
「そうだ、そうだ自己紹介を忘れてたな。
俺の名前はサラン・フェニック、ステラの兄みたいなもんだ。
まあ、実兄ではないけどな!
サランって呼んでくれて構わない。
敬称をつけられるのはあんまり好きじゃないからな。」
兄みたいなもの、、?
ああ、だからステラと仲がよさそうだったのか。
俺をこの人が連れ出そうとした時ステラは抵抗していた。
だけどこの人が、、
「これ以上リリウムのこと傷つけていいと思ってんのか?
ステラ、冷静になれ。」
と言った瞬間ステラはおとなしく俺をこの人に預けたのだ。
その時感じた上下関係は兄と弟という立場からのものだったのか。
俺が1人で納得しているとサランはまた聞いてきた。
「で、自己紹介もしたしいいだろ?
どこまで襲われたんだ?」
「襲われてないです!!」
「本当か?
絶対に嘘だな。」
本当は襲われたけど!
だけどなんかこの人、肯定したらなんかめちゃくちゃ詳しく聞かれそうで怖いのだ。
俺は今度は黙秘することに決めた。
「、、黙っちゃったか、、。
まあでも、今じゃ王宮中の噂になってるな。
マフィリア帝国の皇帝が1人の平民を朝っぱらから襲ったってね。」
「だから襲われてないです!」
ついまた反論してしまった。
俺はステラにもしかして迷惑をかけているのか?
朝から平民を襲っただなんて醜聞すぎる!!
「いやあれは誰から見ても襲われていただろう、、。
もし本当に襲っていないとしたら入ってきたメイドも護衛もみーんな勘違いしてるってことになるぞ。」
メイドと護衛?
あ!入ってきた女の人と男の人か、、。
というか誰から見てもって、、。
その瞬間俺は思い出した。
俺がその時どんな状態だったか。
体には拘束道具にしか見えない魔道具をつけ、服は破かれ肌は露出し、ステラに覆い被されていた。
うん、誰がどう見ても襲われているとしか思えない構成だ!
しかもそれを見られたなんて!
俺は一気に恥ずかしくなって顔が真っ赤になったのが自分でもわかった。
「その顔で大体わかった。
まあ、最後まで襲ってなさそうなのは最初からわかってたから言わなくてもいい。
あいつは皇帝だからな。
こういう面でのことは色々と厳しいんだ。
確認も終わったしそろそろいいだろう。
ほら、入り口でずっと見てるんじゃなくて入ってきてもいいぞ。」
何がだ?
そう思っていると音もなくステラが入ってきて俺の隣に座った。
「はあ、そんなに睨むなよ。
2人とも何か話し合うことがあるんだろ?
俺は一旦抜けるよ。」
そういうとサランは部屋から出て行った。
サランが出て行った後の部屋は静まり返っていて気まずかった。
どちらから話し合えばいいのかわからなかった。
でもわかるのは2人とも互いにものすごい勘違いをしているということだけだった。
ステラは無言で俺の拘束を解いてくれた。
感謝しようと口を開いた。
「ステラ、、、」
「ご主人様、」
2人の声が重なった。
「あ、、先言っていいぞ。」
「いえ、ご主人様こそ先にお話しください。」
「、、、じゃあ聞くけど、、ステラはまだマフィリア帝国に帰らないのか?」
核心に触れるのが怖いくせに聞きたいことがたくさんあってどうすればいいのか分からなくなり、俺は当たり障りのない質問をするのが精一杯だった。
「パレードとパーティーでアルルの帰還と、私の即位後初訪問を祝うのが表向きでしたがその後ハルバニア王国を視察するために滞在していました。」
「そうなんだ、、。
じゃあステラはなんで俺の本屋に変装までして来てたんだ?
そして、、俺に何も言ってくれなかった、、。」
「それは私はご主人様が勘当され、平民堕ちとなったことを知らなかったのです。
私は諸事情によってご主人様を迎えにいけなくなってしまったことを手紙に書き、ご主人様に出していました。
しかしあなたから返信が返ってくることはありませんでした。
ですが忙しいんだと解釈して読まれさえすればそれでもいいと思っていました。
そして帰ってきた後、私はパーティーであなたを探しました。
ご主人様は当たり前に私の帰りを王宮で待っていてくれると信じていました。
ですがいくら待ってもあなたは現れなかった。
最初は忙しくて私に会いに来れないのかと考えていましたが、、王族が現れる時、その中にあなたがいないことをまずは怪しく思いました。
そして国王に話を聞いたところあなたが平民となったことが発覚したのです。
手紙が届くわけもなく、返信が来るはずもないとやっと理解しました。
私はご主人様が仲良くしていたカルウスさんやソフィア嬢など全ての人にあなたの居場所を聞き出そうとしました。
ですが誰も教えてくれなかった、、。
私は自力で探し出すことを決めて何ヶ月もかけてあなたの居場所を探しました。
ですがご主人様はその時、、、婚約されてました、、、。」
ステラは顔を歪めた。
「それは、、」
「あなたが婚約をしたと街の人から聞いた時、私は約束を破られたのだと感じ、ひどく荒れました。
ですがあなたを見て、、それでもいいと思いこもうとした。
なのに、、私は認めたくなかったんです。
毎日あなたを見るために王都から数日間かかる道を魔法と駿馬を駆使して全力で駆け抜けて通いました。
私は皇帝という立場があったので変装をしなければなりませんでした。
あなたに正体を明かさなかった理由はあなたが他の人と幸せになろうとしている時に私が邪魔をしてはいけないと思いました。
それに、、こんなにも重い男が現れたらあなたを困らせてしまう。
それでも少しでも正体を明かさなくてもいいからそばにいたかった。
私とご主人様は契約で繋がっていて決して繋がりがないわけではないと思い込み、精神を保っていました。
ですがそんな私なあなたは契約を解除しようと言ったのです。
それを聞いた瞬間、私は冷静ではいられなかった。
その結果、、あなたを怖がらせて傷つけしまった、、。
本当に申し訳ございません、、。」
ステラは話しながらどんどん苦しそうな顔になっていった。
「ステラ、、。
俺は大丈夫だ。
傷ついてなんかいない。」
ステラは苦しながらも微笑むとまた口を開いた。
「私にも聞きたいことがあります。
婚約は嘘なんですか?」
「婚約はただのフリだ。」
俺はイバラーノ嬢とアークさんの話を一からステラに説明した。
「本当に、本当に婚約してないんですね?」
ステラがもう一回聞いてきた。
「俺は嘘なんかつかない。
本当だ!」
俺が言い切るとステラの顔に笑顔が少しだけ戻った。
「ステラは俺に会うまでの6年間一体何をしていたんだ?」
ステラは真面目な顔で話し始めた。
「私はサラン兄上と神殿で出会い、そこから共に革命の準備をしていました。
そして、戦争で混乱が生じるタイミングに合わせて反乱を起こしました。
結果的に革命はたくさんの困難にあたりましたが、成功することができました。
ですが、、私の家族のことは私が思っていたよりも深刻なままでした。
、、、私の本当の身分が何かもう知っていますよね、、?」
「ああ、、新聞に載っていた。
マフィリア帝国の第3皇子だろ?」
本当は物語で始めから知っていたが、それは言わない。
「そうです。
あなたを長年騙してしまい本当に申し訳ございません。」
「そんなことはいいんだ。
俺は騙されたと思っていない。
話を続けてくれ。」
「、、、私には2人の兄がいます。
私たちは昔はとても仲が良かったのですが、、帝国の決まりとしての後継者争いは過酷であり、誰か1人が生き残るまで続けられるというものでした。
私の母や大事な人や物の何もかもがこの争いに巻き込まれていきました。
もちろん兄達も被害者です。
私は革命中、兄達にも久しぶりに会いました。
兄達の精神はすでに崩壊していました。
1人目の兄は自分が生き残るために他を殺そうと必死になっており、とても話せるような状況ではありませんでした。
2人目の兄は殺し、殺されそうになることに怯えて自殺未遂を何度も繰り返すような状況でした。
2人とも重度な精神病に犯されていました。
そして私の父上は病にかかり余命も残り少ない状態でした。
私の革命がある程度終わり父上と話し合おうとした時、、父上は自ら亡くなりました。
遺言に私を皇帝にすることと、家族をここまで崩壊させてしまったことへの謝罪を書き残していました、、。
父上は病床にいながらも私と魔道具を通しての通信や戦争の指揮などを行っていたのです、、。
そして母の死の原因となる首謀者は兄たちのそれぞれの母親でした。
彼女たちは2人で手を組み、計画して指示を出して私の母を殺したのです。
彼女たちは今、幽閉し、終身刑を言い渡しました。
それからその後は完全にまとまってはいない国のこと、2人の兄のこと、父上の死の後の業務、母上関連の片付けなど私にはたくさんのことが積み重なり、とてもハルバニア王国に帰れる状態ではなかったのです。」
全ての話を聞いて胸が重くなった。
俺はステラのことを何も知っていなかった。
何1人で約束が破られたなどと怒っていたのだろう。
ステラはこんなに苦しい思いをしたのに、、。
自分がちっぽけな存在に思えて、嫌になった。
ステラはそんな俺を見て、優しく撫でてくれた。
撫で方はとても優しくて、一瞬で俺をあの過去の日々に戻した。
あの日々の時と同じようにステラに撫でられ、俺の心は落ち着いた。
「悲しい顔をしないでください。
今は国はまとまり、2人の兄は回復しましたから。
、、、2人の兄の回復にアルルががんばってくれました。
国民は私とアルルは惹かれあって戦争が終わったと思っていますが本当はそんなのではありません。
私はアルルを一度戦争で見かけ、とても強力な光魔法の使い手だということを知りました。
そして革命後、兄たちの精神のケアにアルルが必要だと思ったのです。
光魔法は体の傷を癒すだけでなく心の傷も癒やします。
兄たちを治療して欲しくて私はアルルを帝国に呼ぼうと思いました。
ですがマフィリア帝国はまだ革命が成功したばかりの不安定な状態であり、2人の兄の精神状態を他の国や人に漏らしてはリスクが高すぎたのです。
それで
『戦場で一目見たアルルの魔法に惹かれたのでマフィリア帝国に欲しい。
もし応じた場合は戦争を終わらせる。』
という文書をハルバニア王国に送りました。
それに噂がたくさんつき、惹かれあったという噂にまでなってしまいました。
アルルは熱心に看病をしてくれ、私も兄たちの経過を見るためにたくさん通っていたので私とアルルの過ごす時間は増えていき、それを見た周りの人々がまたさらに私とアルルについて噂をし、それが広まってしまいました。
アルルがなぜ私と結婚するという勘違いをしていたのかは分かりませんが、、とにかく私とアルルの間には何もありません。
、、、私とアルルの噂については前から少しは知っていたのですがどうでもよくてそのままにしていました。
それがご主人様を勘違いさせていたとは思いもしませんでした、、。
私はあなたにだけは勘違いされたくないです。
どうか信じてください。」
ステラが言い切ってくれたことに俺はとても安心していた。
いやむしろ喜んでしまっていた。
それを隠そうと真顔で質問した。
「詳しく教えてくれてありがとう。
でも、、そんなに俺に話して大丈夫なのか?
俺は平民だし、、それに万が一話すっていう可能性もあるし、、。」
「私はあなたを何よりも信じています。
だから大丈夫です。
そして私はあなたが平民だろうとなんだろうと気にしません。
そんなことを言うなら私は奴隷の身分ですから。
それに、、あなたを平民ではなくする方法があるので、、気にしていません。」
「平民ではなくする方法?
そんなのがあるか?」
「はい、、。
でもそれはまだ秘密にしときます。」
ステラがそのことを想像しているのか幸せそうに笑った。
俺は何か分からなかったが、ステラが幸せならいいかと俺も笑った。
「やっと、、2人で笑い合えたな、、。」
「はい、、。
やっとです。」
6年間の空白は大きかった。
だけど俺たちならまた、2人の物語を歩める気がした。
俺の弟がごめんな。
まさか君への執着がここまでだったとはなぁ、、。
こんなもんまでつけちゃってね。
俺が外してあげたいけど、、これ無理っぽいね。
つけた本人しか外せないな。
ごめんだけどこうするのが俺でも限界だな。」
男は笑いながら俺についている魔道具をじゃらじゃらと揺らして遊ぶ。
あの、やめてくれます?
目線で訴えかけても男は楽しそうに魔道具をいじっていた。
あの後、俺はなぜかやってきたこの目の前の男につれ出されて破られた服の上から羽織れるものをかけられたあと魔道具をいじられ、体は動くようになったが魔道具は付けられたままだった。
「なぁ、どこまで襲われたの?
俺に少しくらい教えてくれてもいいだろ?
こんなふうに助けてやったんだから。」
この人はなんなんだ!?
黒髪に赤い瞳はステラにそっくりだ。
だけどなんか面影を感じるくらいで顔全体はそこまで似ていない。
「あの、あなたは誰なんですか?」
俺が聞くと男は思い出したような顔をした。
「そうだ、そうだ自己紹介を忘れてたな。
俺の名前はサラン・フェニック、ステラの兄みたいなもんだ。
まあ、実兄ではないけどな!
サランって呼んでくれて構わない。
敬称をつけられるのはあんまり好きじゃないからな。」
兄みたいなもの、、?
ああ、だからステラと仲がよさそうだったのか。
俺をこの人が連れ出そうとした時ステラは抵抗していた。
だけどこの人が、、
「これ以上リリウムのこと傷つけていいと思ってんのか?
ステラ、冷静になれ。」
と言った瞬間ステラはおとなしく俺をこの人に預けたのだ。
その時感じた上下関係は兄と弟という立場からのものだったのか。
俺が1人で納得しているとサランはまた聞いてきた。
「で、自己紹介もしたしいいだろ?
どこまで襲われたんだ?」
「襲われてないです!!」
「本当か?
絶対に嘘だな。」
本当は襲われたけど!
だけどなんかこの人、肯定したらなんかめちゃくちゃ詳しく聞かれそうで怖いのだ。
俺は今度は黙秘することに決めた。
「、、黙っちゃったか、、。
まあでも、今じゃ王宮中の噂になってるな。
マフィリア帝国の皇帝が1人の平民を朝っぱらから襲ったってね。」
「だから襲われてないです!」
ついまた反論してしまった。
俺はステラにもしかして迷惑をかけているのか?
朝から平民を襲っただなんて醜聞すぎる!!
「いやあれは誰から見ても襲われていただろう、、。
もし本当に襲っていないとしたら入ってきたメイドも護衛もみーんな勘違いしてるってことになるぞ。」
メイドと護衛?
あ!入ってきた女の人と男の人か、、。
というか誰から見てもって、、。
その瞬間俺は思い出した。
俺がその時どんな状態だったか。
体には拘束道具にしか見えない魔道具をつけ、服は破かれ肌は露出し、ステラに覆い被されていた。
うん、誰がどう見ても襲われているとしか思えない構成だ!
しかもそれを見られたなんて!
俺は一気に恥ずかしくなって顔が真っ赤になったのが自分でもわかった。
「その顔で大体わかった。
まあ、最後まで襲ってなさそうなのは最初からわかってたから言わなくてもいい。
あいつは皇帝だからな。
こういう面でのことは色々と厳しいんだ。
確認も終わったしそろそろいいだろう。
ほら、入り口でずっと見てるんじゃなくて入ってきてもいいぞ。」
何がだ?
そう思っていると音もなくステラが入ってきて俺の隣に座った。
「はあ、そんなに睨むなよ。
2人とも何か話し合うことがあるんだろ?
俺は一旦抜けるよ。」
そういうとサランは部屋から出て行った。
サランが出て行った後の部屋は静まり返っていて気まずかった。
どちらから話し合えばいいのかわからなかった。
でもわかるのは2人とも互いにものすごい勘違いをしているということだけだった。
ステラは無言で俺の拘束を解いてくれた。
感謝しようと口を開いた。
「ステラ、、、」
「ご主人様、」
2人の声が重なった。
「あ、、先言っていいぞ。」
「いえ、ご主人様こそ先にお話しください。」
「、、、じゃあ聞くけど、、ステラはまだマフィリア帝国に帰らないのか?」
核心に触れるのが怖いくせに聞きたいことがたくさんあってどうすればいいのか分からなくなり、俺は当たり障りのない質問をするのが精一杯だった。
「パレードとパーティーでアルルの帰還と、私の即位後初訪問を祝うのが表向きでしたがその後ハルバニア王国を視察するために滞在していました。」
「そうなんだ、、。
じゃあステラはなんで俺の本屋に変装までして来てたんだ?
そして、、俺に何も言ってくれなかった、、。」
「それは私はご主人様が勘当され、平民堕ちとなったことを知らなかったのです。
私は諸事情によってご主人様を迎えにいけなくなってしまったことを手紙に書き、ご主人様に出していました。
しかしあなたから返信が返ってくることはありませんでした。
ですが忙しいんだと解釈して読まれさえすればそれでもいいと思っていました。
そして帰ってきた後、私はパーティーであなたを探しました。
ご主人様は当たり前に私の帰りを王宮で待っていてくれると信じていました。
ですがいくら待ってもあなたは現れなかった。
最初は忙しくて私に会いに来れないのかと考えていましたが、、王族が現れる時、その中にあなたがいないことをまずは怪しく思いました。
そして国王に話を聞いたところあなたが平民となったことが発覚したのです。
手紙が届くわけもなく、返信が来るはずもないとやっと理解しました。
私はご主人様が仲良くしていたカルウスさんやソフィア嬢など全ての人にあなたの居場所を聞き出そうとしました。
ですが誰も教えてくれなかった、、。
私は自力で探し出すことを決めて何ヶ月もかけてあなたの居場所を探しました。
ですがご主人様はその時、、、婚約されてました、、、。」
ステラは顔を歪めた。
「それは、、」
「あなたが婚約をしたと街の人から聞いた時、私は約束を破られたのだと感じ、ひどく荒れました。
ですがあなたを見て、、それでもいいと思いこもうとした。
なのに、、私は認めたくなかったんです。
毎日あなたを見るために王都から数日間かかる道を魔法と駿馬を駆使して全力で駆け抜けて通いました。
私は皇帝という立場があったので変装をしなければなりませんでした。
あなたに正体を明かさなかった理由はあなたが他の人と幸せになろうとしている時に私が邪魔をしてはいけないと思いました。
それに、、こんなにも重い男が現れたらあなたを困らせてしまう。
それでも少しでも正体を明かさなくてもいいからそばにいたかった。
私とご主人様は契約で繋がっていて決して繋がりがないわけではないと思い込み、精神を保っていました。
ですがそんな私なあなたは契約を解除しようと言ったのです。
それを聞いた瞬間、私は冷静ではいられなかった。
その結果、、あなたを怖がらせて傷つけしまった、、。
本当に申し訳ございません、、。」
ステラは話しながらどんどん苦しそうな顔になっていった。
「ステラ、、。
俺は大丈夫だ。
傷ついてなんかいない。」
ステラは苦しながらも微笑むとまた口を開いた。
「私にも聞きたいことがあります。
婚約は嘘なんですか?」
「婚約はただのフリだ。」
俺はイバラーノ嬢とアークさんの話を一からステラに説明した。
「本当に、本当に婚約してないんですね?」
ステラがもう一回聞いてきた。
「俺は嘘なんかつかない。
本当だ!」
俺が言い切るとステラの顔に笑顔が少しだけ戻った。
「ステラは俺に会うまでの6年間一体何をしていたんだ?」
ステラは真面目な顔で話し始めた。
「私はサラン兄上と神殿で出会い、そこから共に革命の準備をしていました。
そして、戦争で混乱が生じるタイミングに合わせて反乱を起こしました。
結果的に革命はたくさんの困難にあたりましたが、成功することができました。
ですが、、私の家族のことは私が思っていたよりも深刻なままでした。
、、、私の本当の身分が何かもう知っていますよね、、?」
「ああ、、新聞に載っていた。
マフィリア帝国の第3皇子だろ?」
本当は物語で始めから知っていたが、それは言わない。
「そうです。
あなたを長年騙してしまい本当に申し訳ございません。」
「そんなことはいいんだ。
俺は騙されたと思っていない。
話を続けてくれ。」
「、、、私には2人の兄がいます。
私たちは昔はとても仲が良かったのですが、、帝国の決まりとしての後継者争いは過酷であり、誰か1人が生き残るまで続けられるというものでした。
私の母や大事な人や物の何もかもがこの争いに巻き込まれていきました。
もちろん兄達も被害者です。
私は革命中、兄達にも久しぶりに会いました。
兄達の精神はすでに崩壊していました。
1人目の兄は自分が生き残るために他を殺そうと必死になっており、とても話せるような状況ではありませんでした。
2人目の兄は殺し、殺されそうになることに怯えて自殺未遂を何度も繰り返すような状況でした。
2人とも重度な精神病に犯されていました。
そして私の父上は病にかかり余命も残り少ない状態でした。
私の革命がある程度終わり父上と話し合おうとした時、、父上は自ら亡くなりました。
遺言に私を皇帝にすることと、家族をここまで崩壊させてしまったことへの謝罪を書き残していました、、。
父上は病床にいながらも私と魔道具を通しての通信や戦争の指揮などを行っていたのです、、。
そして母の死の原因となる首謀者は兄たちのそれぞれの母親でした。
彼女たちは2人で手を組み、計画して指示を出して私の母を殺したのです。
彼女たちは今、幽閉し、終身刑を言い渡しました。
それからその後は完全にまとまってはいない国のこと、2人の兄のこと、父上の死の後の業務、母上関連の片付けなど私にはたくさんのことが積み重なり、とてもハルバニア王国に帰れる状態ではなかったのです。」
全ての話を聞いて胸が重くなった。
俺はステラのことを何も知っていなかった。
何1人で約束が破られたなどと怒っていたのだろう。
ステラはこんなに苦しい思いをしたのに、、。
自分がちっぽけな存在に思えて、嫌になった。
ステラはそんな俺を見て、優しく撫でてくれた。
撫で方はとても優しくて、一瞬で俺をあの過去の日々に戻した。
あの日々の時と同じようにステラに撫でられ、俺の心は落ち着いた。
「悲しい顔をしないでください。
今は国はまとまり、2人の兄は回復しましたから。
、、、2人の兄の回復にアルルががんばってくれました。
国民は私とアルルは惹かれあって戦争が終わったと思っていますが本当はそんなのではありません。
私はアルルを一度戦争で見かけ、とても強力な光魔法の使い手だということを知りました。
そして革命後、兄たちの精神のケアにアルルが必要だと思ったのです。
光魔法は体の傷を癒すだけでなく心の傷も癒やします。
兄たちを治療して欲しくて私はアルルを帝国に呼ぼうと思いました。
ですがマフィリア帝国はまだ革命が成功したばかりの不安定な状態であり、2人の兄の精神状態を他の国や人に漏らしてはリスクが高すぎたのです。
それで
『戦場で一目見たアルルの魔法に惹かれたのでマフィリア帝国に欲しい。
もし応じた場合は戦争を終わらせる。』
という文書をハルバニア王国に送りました。
それに噂がたくさんつき、惹かれあったという噂にまでなってしまいました。
アルルは熱心に看病をしてくれ、私も兄たちの経過を見るためにたくさん通っていたので私とアルルの過ごす時間は増えていき、それを見た周りの人々がまたさらに私とアルルについて噂をし、それが広まってしまいました。
アルルがなぜ私と結婚するという勘違いをしていたのかは分かりませんが、、とにかく私とアルルの間には何もありません。
、、、私とアルルの噂については前から少しは知っていたのですがどうでもよくてそのままにしていました。
それがご主人様を勘違いさせていたとは思いもしませんでした、、。
私はあなたにだけは勘違いされたくないです。
どうか信じてください。」
ステラが言い切ってくれたことに俺はとても安心していた。
いやむしろ喜んでしまっていた。
それを隠そうと真顔で質問した。
「詳しく教えてくれてありがとう。
でも、、そんなに俺に話して大丈夫なのか?
俺は平民だし、、それに万が一話すっていう可能性もあるし、、。」
「私はあなたを何よりも信じています。
だから大丈夫です。
そして私はあなたが平民だろうとなんだろうと気にしません。
そんなことを言うなら私は奴隷の身分ですから。
それに、、あなたを平民ではなくする方法があるので、、気にしていません。」
「平民ではなくする方法?
そんなのがあるか?」
「はい、、。
でもそれはまだ秘密にしときます。」
ステラがそのことを想像しているのか幸せそうに笑った。
俺は何か分からなかったが、ステラが幸せならいいかと俺も笑った。
「やっと、、2人で笑い合えたな、、。」
「はい、、。
やっとです。」
6年間の空白は大きかった。
だけど俺たちならまた、2人の物語を歩める気がした。
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