48 / 120
第七章 怨敵との再会
砂の中の羊
しおりを挟む
「ど、どうしましょう!? この砂硬くて全然動きませんよ!」
エルがそう言った通り出入り口を塞いでいる砂は斬っても押してもビクともしない
「先に進むしかなさそうだな」
この広場にはジョン達が入って来た入口以外にもう一個先へ続く出入り口が有った。
「……明らかに罠の予感がするけど」
「間違いなく俺達は誘い込まれているんだろうな、だが進むしかないみたいだな」
「火の中に飛び込む虫の気分だよ」
「火傷程度で済めばいいがな」
四人は恐る恐る先に進む、そして広場から先に進む通路を覗くと通路は砂で覆われている事が分かる
「俺が先行する」
「待て、此処は不死の我が先に行く」
「いいや、お前はジャックの傍についてこいつを護れ死なれたらマリアお嬢様共々道連れだからな」
ジャックには最強と謳われた拒絶という名の防御魔法を有しているのをジョンは知っている、だがメイヴィスに護れと命令する、今のチームで最も強いのは恐らく彼女だとジョンは判断したのだ。
「だが……」
「兎に角、俺が先行する」
「ジョンよく分かったね、私の弱点が」
「そりゃ分かる、なんせお前焦ってるからなお前ご自慢の最強の防御魔法とやらがこの状況でもお前を護ってくれるなら焦る必要なんてないハズ、つまりこの状況じゃ何かしらの理由があってお前の魔法は発動しない、違うか?」
「それについてはノーコメントって事にさせて」
ジャックの魔法、『拒絶』は相手の攻撃を完全に無効化する魔法、剣を持って斬りかかっても攻撃は届かず、魔法も無効化される、発動はジャックが無意識でも攻撃されれば相手の敵意を自動的に感知して勝手に発動するだから不意打ちされても死ぬ事は無い
しかしこの魔法欠点が幾つかある、一つは神には通用しない事、もう一つは敵意を持たないものには一切反応しないという事だ。つまり今の状況の様に行き成り上から土砂が降って来ても魔法は発動せずそのまま潰されてしまう、この魔法は相手の敵意を利用して発動する仕組み、無機物には一切無効
そしてメイヴィスを押し切りジョンが先行して通路に突入、一歩を踏み出すジョン、ジョンの足が砂にめり込む、しかしめり込みは浅く歩行は可能だという事が分かった。
ジョンの後を追いメイヴィス、ジャック、エルの順に通路に踏み出す。
道は平坦で上下が無い、しかし砂が足を取り非常に動き辛いしかしそんな状況でも一歩一歩確かに前に前進する四人
しかしそれは長くは続かなかった。通路に侵入して暫く後の話である、ジョンが一歩を踏み出そうとした時足が今までとは明らかに違う沈み方をして右足の腿まで一気に沈んでしまう
「うげっ!?」
「先生!!」
「ジョン! 我の手を取れ!」
メイヴィスがジョンに手を差し出す。それに捕まるジョンだが足はどんどん沈み腰まで沈み始める
そこにジャックもエルもジョンを救出しようと身体を引っ張るが無駄、沈む力の方が遥かに強い
このままでは全滅すると悟ったジョンは三人を突き飛ばす。
「何をする!?」
「俺に構うな! このまま俺に構っていたら間違いなく全滅する……!」
肩まで沈む
そんなジョンを見てメイヴィスとエルは放って置けずまた助けようと動き出す。がそこをジャックに止められる
「待ちなよ、ジョンの言う通りだ。今の私達じゃ残念ながら彼を救う事も出来なさそうだしね、諦めるべきだよ」
「そこを退け!」
「退かないよ、死んでもね、此処で戦力と肉壁を失う訳にはいかない」
「貴様……!!」
「ふふふっ……何とでも思いなよ」
(ケッこういう時は頼りになる)と内心思いながら砂に呑まれるジョン・ラム
「先生ェ!!」
エルの叫びが通路に木霊する
砂に飲み込まれたジョン、しかし彼は圧死も窒息死もしていなかった。
砂の下はまた別の空間がありそこに落ちてしまっただけのようだ。そして幸運な事に落下によるダメージも殆どない
(助かったな……此処から上には戻れるのか?)
松明も失い真っ暗ながらも辺りを見渡すジョン
眼が慣れ辺りも徐々に見えて来る
(どうやら此処はさっきの湖があった広場と同じ様なドーム状の広場らしいな……)
壁は石で出来ている
その上ジョンはとんでもないモノを発見してしまう
鎧を着た骸骨である、そも一体では無い三体そこに転がっていた。
「これが俺の未来の姿って訳か? 冗談キツイな」
ジョンは骸骨に近付く
「急に動き出したりするなよ、頼むぜ……」
恐る恐る骸骨兵士を探り始めるジョン
「その甲冑を見るにお前は兵士だってようだな、恐らく十五年前に此処へ侵入したの村の兵だろうな、俺と同じような目に遭って此処に落ちて来たって訳だな、次は死因か……骨に外傷の痕跡は見られないな、これも俺と同じで落下による負傷も無かったみたいだ。どこも骨折していない」
ここでジョンは思う、落下のダメージを受けなかったのは幸運では無かったのではないのかと
「床は砂で柔らかい……あの罠は俺を傷つける為の罠じゃなかった訳だな、それもそうか、殺すだけならあのまま砂に潰させるだけでも出来るからな……」
ブツブツ独り言を言いながら状況を整理していくジョン
「しかし、こいつらは死んだ。何故か? 餓死だろうな、此処で水も食料も無く飢えて死んだ。此処は拷問部屋だな……でなきゃこんな回りくどい事をする意味が無い」
骸骨の周りをグルグルと周り、身体と頭を回転させるジョン
「なら俺一人では脱出不能? 外から誰かに助けて貰うしか方法は無いのか? いやそもそも外から俺を脱出させる事は出来るのか? アイツ等は俺の生存を知らない筈死んでいると思っているはずだ……ならアイツらが無事外に脱出出来ても死んでいると思われている俺は置いて行かれる可能性が大、要するに俺一人で此処を出なければ俺は死ぬ、つまり俺ヤバイ」
辺りを見渡すが当たり前だとでも言う様に出入り口の様な物は一切ない
あるのは骸骨三体のみ
「おい! 誰か見て無いのか! 此処が拷問部屋なら誰か接触してくるハズだろ!? 誰も居ないのか! おーい!!」
ジョンが大声を出しても返答は無し
「マジかよ、十五年前の拷問部屋はシステムだけは生きて使い手は十五年の時を経て死んだって訳か」
ジョンは仕方がなく一途の望みに懸けて自分を閉じ込めている牢屋の石壁を叩き始める
「ダメダメダメ、厚い壁でこんなのを破壊なんて無理だ。ならどうする? 考えろ考えろ……天井はどうだ? 駄目だ高すぎる登れない、なら床は?」
ジョンは足元を見る、足元は砂で出来ている、頑張れば掘る事も可能な硬さ
「掘れって? マジで言ってる?」
掘るしかないそう確信したジョンは小型のスコップを取り出し掘り始める
砂は柔らかいのでスコップは深くまで刺さる、これを不幸中の幸いと呼ぶか焼け石に水と呼ぶかは人次第
その頃ジョンの声が届かない上層では底なし砂の前で行き詰りにあっているジャックにメイヴィスそれとエル
「先生!! 返事をして下さい!」
長い事エルはジョンが飲み込まれた地面に向かって叫び続けていた。
その後ろで冷めた目でエルを見るジャック
「無駄だよ、それで何度目だと思うの? 彼は死んだ。そう割り切って先に進むしかないよ」
「貴方は黙ってて!」
「へー随分と彼と仲が良いんだね、そこまで心配するなんてさ」
ジャックの戯言を無視し叫び続けるエル
「フフフ、彼は幸せ者だね、最後に自分の事を想ってくれる人と出会えたって訳だ。君は彼の親友? それとも恋人? 先生という呼び方から言って師弟の関係なのは分かるけど……先生、ククク」
先生という単語を言った途端何かを思い出したかのように微笑するジャック
勿論これにもエルは答えない
「もう止めないか、ジャック」
止めるメイヴィス
しかしジャックは続ける
「でも君は知ってるのかな? 彼の正体をさ知らないよね? そんな事あの男が喋るはずがない、君は滑稽だ。何も知らない男の為にさ」
「もう止めろと言った!!」
「君は私を殺せない、黙っててよ、メイヴィス」
「ボクもこの中に……!」
と砂の中に入ろうとするエル
「あ~あ、全く……何考えてるんだかね」
「エル!!?」
エルを急ぎ止めるメイヴィス
「止めろ! 犬死する気か!?」
そのメイヴィスの呼び掛けでようやく正気を取り戻すエル
「……すいません」
「良いんだ。気にする事は無い、今は今を生き残れる方法を考えよう」
「彼は”殺し屋”だよ、一流のね」
返答無し
「あれ? 驚かないね、まぁそこら辺は察していたかな? 彼、普通じゃないしね、じゃあ次」
「もう黙って居ろ!」
メイヴィスが意気消沈中のエルの為、怒鳴る
「私はジョンの弟子だった」
「!?」
「なに!?」
そのジャックの発言に今まで無反応だったエルも反応する
「やっと驚いてくれたね、嬉しいよ」
「お前がジョンの弟子だと? じゃあジョンは自分の弟子を殺そうとしているのか?」
「ちゃんと私の言葉を聞いてよ、私はジョンの弟子”だった”もう関係無いよ」
「先生と貴方の間に何があったんですか?」
「君達に教えてもね……理解出来ないだろうから教えないよいや”教えられない”かな?」
「それじゃあ皆驚いた所で生き残る方法を考えよう、先の通路にはどうやって進む?」
「ジョンが沈んだ所を飛び越える?」
「う~ん、どれくらい飛び越えれば良いのか分からないよ、もしかしたらこの通路全部底なし砂かもしれないよ?」
「じゃあ、分かりません」
「君の所為なのに?」
「うっ……」
それを聞いて涙目になるエル、ジョンの件と仲間を危険に合わせた事それは間違いなく自分の安請け合いの所為だと自覚をしていた。
「止めないか! 今はそんな事を言っている場合ではない!」
「全部君の所為さ君が余計な事を言わなければあのまま安全に帰れたのに君が余計な事を言うからこの有様さ」
「……すいません」
「いいよ、仕方がない、今のは君をへこましたくて言っただけだから気にしないで」
これはジョン以上だと確信するメイヴィス
その後もジャック達は慎重に通路を調べる、沈んだら命は無いのかもしれないのだから……
責任を感じエルが先頭に立ち通路を調査している、つま先でちょんちょんと通路を叩く
「此処は大丈夫みたいです」
「良かったね、次」
慈悲の欠片もない言葉がエルを襲う
「はい……」
それに大人しく従うエル、エルは死ぬほど責任を感じている
「もういい、我が先に行く、エルもう下がって良い」
「駄目だよ、エルだけじゃ心配だからね、君には生き残って貰わないと困る、実際ジョンの言った通り君が現状で最も強い間違いないよ」
「エルは今自責の念を感じておかしくなっている今は無理をさせる時じゃない」
「彼女には責任を感じて貰わなきゃ困るよ、ね? エル?」
「意地悪は止せ」
「すいません……」
「エルも良いんだ、ジャックの相手をする事は無い」
さっきから口を開く度にすいませんすいませんすいません、エルは精神的に参っていた。
ジョンが死に参っていた。ジャックの悪態にも参っていた。メイヴィスの掛ける優しい言葉にも参っていた。
全ての事がエルを参らさせていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
遂にはごめんなさいを連呼し始めて泣き出してしまう
「勘弁してよ……」
ジャックはそれにうんざりしメイヴィスは心配そうにエルを見る
「エルはまだ若い精神的にも幼い部分を持っている、それなのにお前が遠慮も無しに罵るからこうなる」
「それは御免なさいね、仕事仲間には容赦しない方でね」
エルは泣き始めてしまい、先には進まない、そんな彼女をジャックは押そうとするがメイヴィスが止める
メイヴィスはこの時完全にエルの母親気分
「仕方がないでしょ? こうでもしなきゃ先に進めない」
「エルを殺す気か? 止めろ」
「此処にずっと居たらあの二人も死ぬ事になるよ」
二人とはマリアとネルヒムの事を指す。時間が遅れては彼女たちの首に仕掛けた爆弾が爆発してしまうのだ。
「不味いよ、爆発まで時間が余りない」
「我が行く、文句は無いな?」
「仕方がない、分かったよエル下がって」
「いや! ボクが行きます……行けます」
「らしいよ?」
「行ける訳ない」
「大丈夫です。ボクだって騎士です。こんなの慣れてます」
エルは既に泣き止んでいた。
だが顔は赤い
「そうは見えないけど?」
「何と言われても大丈夫です」
「ならいいよ、調査を続けて」
「はい……」
エルは調査を再開する
さっきと同じように通路をつま先で慎重に調べる
そして分かったことがある、あの罠は一度発動二度目は発動しないという事である
「いや~良かった良かった私達はジョンの尊い犠牲のお陰で無事に通れる様になったようだね、まぁあまり良い師匠だったとは言えないけど最期に良いプレゼントを貰ったよ、ありがとう元師匠、さよなら……死んでいたらだけどね」
(死んでいる事を願いたいよ、ジョン)
ジャックには予感があった。あの男はまだ死んでいないという予感が
確信に至る証拠はないだが心のどこかであの男は死んでいない、そう確信しているジャック、だから願う、死んでいてくれと
そしてその悪い予感は見事的中している
上でジャックがそんな懇願をしている時
下では砂を掘り進める礼服の男が居た。
彼は必死に必死にスコップを刺し砂を掘り出し新たな穴を作るそれを繰り返し繰り返しようやく外に脱出する事が叶った。脱出に掛かった時間はおよそ三十分
外といってもまだ遺跡の中なのは変わりない、変ったのは彼があの牢屋を脱出出来たという事
”外”の空気を思いっ切り吸って吐くそして本当に外に出れたのだと実感する
「はぁ……助かった……」
一時期は死ぬのかとも思ったジョンだが何とか生き残れた。
「ふぅ……で? 此処は何処? 誰か教えてくれない?」
応える者は居ない
(まだ遺跡の中みたいだな……アイツ等の姿も見えない)
そう心で思いながら何処へ繋がっているか分からない通路を進む
そして一つの部屋に行き着いた。部屋に扉は無いだからジョンは手を使う事無く部屋に入る
部屋は書庫のようで本棚に勿論本が置かれている、しかしボロボロ
ボロボロの本を手に取り読んでみようと試みるが無駄、内容は読み取れない
大人しく本棚に本を戻す。
そして書庫全体を見回っているとまたも白骨遺体を発見する、今回の骸骨は白衣を着ており二本の剣が刺さっている
「此処で殺人事件が起こった様だな……犯人は誰だ? まだ生きてこの遺跡に潜伏している? いや、可能性は低いか」
この骸骨を殺した何者かが自分に危害を加えて来ないかを心配する
「白衣か……研究者だったのか? 俺の世界じゃ白衣を着るのは研究者の特権なもんでな、こっちじゃどうだか知らんが」
ジョンは此処を古代の遺跡か何かだと思っていたのでこの白衣やこの部屋に立ち並ぶ本棚には違和感を感じていた。
あまりにも現代的過ぎるからだ。骨も白衣も本もこの遺跡を構築していたであろう石壁の状態等から比べれば新しい
「こいつは此処で何をしてたんだ? 何故殺された? なぁ、教えてくれどうやったら外に出れるんだ?」
死人に口なし
「だろうな」
ジョンがそんな一人芝居をしている時何者かがもう一人この書庫に入って来た。ジョンも足音でその存在に気が付く
急ぎその侵入者から見つからない為姿を消すジョン
そして静かに侵入者に近付きその姿を眼に入れる、ジョンの計画では此処で相手を観察し相手の弱点等を見破り、後ろから気が付かれない様に近付き
無効化する計画だった。
だがそうはさせなかった。何故ならその侵入者は……
「ナサル……?」
黒髪の騎士、ナサル・パララグだったからである
ナサルは静かにジョンの方を向く
「お前は海の都に居るハズじゃ……」
「……貴方、侵入者?」
「侵入者だと?」
ナサルの様子がおかしい、ナサルの眼を視てもそれが分かる
「お前……もしかしてナサルじゃないのか?」
「私はナサルという名では無いわ、私はライラというの」
ナサルとは口調も違う
「質問に答えて貰える? 君は侵入者?」
「そうだと言ったらどうする?」
「どうもしないよ、此処にはもう知られて困るものも無いし取られて困るものも無いよ、勝手に何でも持って行って良いよ私には関係ないから」
「こちらからも質問していいか?」
「いいよ、何?」
「お前は誰だ?」
エルがそう言った通り出入り口を塞いでいる砂は斬っても押してもビクともしない
「先に進むしかなさそうだな」
この広場にはジョン達が入って来た入口以外にもう一個先へ続く出入り口が有った。
「……明らかに罠の予感がするけど」
「間違いなく俺達は誘い込まれているんだろうな、だが進むしかないみたいだな」
「火の中に飛び込む虫の気分だよ」
「火傷程度で済めばいいがな」
四人は恐る恐る先に進む、そして広場から先に進む通路を覗くと通路は砂で覆われている事が分かる
「俺が先行する」
「待て、此処は不死の我が先に行く」
「いいや、お前はジャックの傍についてこいつを護れ死なれたらマリアお嬢様共々道連れだからな」
ジャックには最強と謳われた拒絶という名の防御魔法を有しているのをジョンは知っている、だがメイヴィスに護れと命令する、今のチームで最も強いのは恐らく彼女だとジョンは判断したのだ。
「だが……」
「兎に角、俺が先行する」
「ジョンよく分かったね、私の弱点が」
「そりゃ分かる、なんせお前焦ってるからなお前ご自慢の最強の防御魔法とやらがこの状況でもお前を護ってくれるなら焦る必要なんてないハズ、つまりこの状況じゃ何かしらの理由があってお前の魔法は発動しない、違うか?」
「それについてはノーコメントって事にさせて」
ジャックの魔法、『拒絶』は相手の攻撃を完全に無効化する魔法、剣を持って斬りかかっても攻撃は届かず、魔法も無効化される、発動はジャックが無意識でも攻撃されれば相手の敵意を自動的に感知して勝手に発動するだから不意打ちされても死ぬ事は無い
しかしこの魔法欠点が幾つかある、一つは神には通用しない事、もう一つは敵意を持たないものには一切反応しないという事だ。つまり今の状況の様に行き成り上から土砂が降って来ても魔法は発動せずそのまま潰されてしまう、この魔法は相手の敵意を利用して発動する仕組み、無機物には一切無効
そしてメイヴィスを押し切りジョンが先行して通路に突入、一歩を踏み出すジョン、ジョンの足が砂にめり込む、しかしめり込みは浅く歩行は可能だという事が分かった。
ジョンの後を追いメイヴィス、ジャック、エルの順に通路に踏み出す。
道は平坦で上下が無い、しかし砂が足を取り非常に動き辛いしかしそんな状況でも一歩一歩確かに前に前進する四人
しかしそれは長くは続かなかった。通路に侵入して暫く後の話である、ジョンが一歩を踏み出そうとした時足が今までとは明らかに違う沈み方をして右足の腿まで一気に沈んでしまう
「うげっ!?」
「先生!!」
「ジョン! 我の手を取れ!」
メイヴィスがジョンに手を差し出す。それに捕まるジョンだが足はどんどん沈み腰まで沈み始める
そこにジャックもエルもジョンを救出しようと身体を引っ張るが無駄、沈む力の方が遥かに強い
このままでは全滅すると悟ったジョンは三人を突き飛ばす。
「何をする!?」
「俺に構うな! このまま俺に構っていたら間違いなく全滅する……!」
肩まで沈む
そんなジョンを見てメイヴィスとエルは放って置けずまた助けようと動き出す。がそこをジャックに止められる
「待ちなよ、ジョンの言う通りだ。今の私達じゃ残念ながら彼を救う事も出来なさそうだしね、諦めるべきだよ」
「そこを退け!」
「退かないよ、死んでもね、此処で戦力と肉壁を失う訳にはいかない」
「貴様……!!」
「ふふふっ……何とでも思いなよ」
(ケッこういう時は頼りになる)と内心思いながら砂に呑まれるジョン・ラム
「先生ェ!!」
エルの叫びが通路に木霊する
砂に飲み込まれたジョン、しかし彼は圧死も窒息死もしていなかった。
砂の下はまた別の空間がありそこに落ちてしまっただけのようだ。そして幸運な事に落下によるダメージも殆どない
(助かったな……此処から上には戻れるのか?)
松明も失い真っ暗ながらも辺りを見渡すジョン
眼が慣れ辺りも徐々に見えて来る
(どうやら此処はさっきの湖があった広場と同じ様なドーム状の広場らしいな……)
壁は石で出来ている
その上ジョンはとんでもないモノを発見してしまう
鎧を着た骸骨である、そも一体では無い三体そこに転がっていた。
「これが俺の未来の姿って訳か? 冗談キツイな」
ジョンは骸骨に近付く
「急に動き出したりするなよ、頼むぜ……」
恐る恐る骸骨兵士を探り始めるジョン
「その甲冑を見るにお前は兵士だってようだな、恐らく十五年前に此処へ侵入したの村の兵だろうな、俺と同じような目に遭って此処に落ちて来たって訳だな、次は死因か……骨に外傷の痕跡は見られないな、これも俺と同じで落下による負傷も無かったみたいだ。どこも骨折していない」
ここでジョンは思う、落下のダメージを受けなかったのは幸運では無かったのではないのかと
「床は砂で柔らかい……あの罠は俺を傷つける為の罠じゃなかった訳だな、それもそうか、殺すだけならあのまま砂に潰させるだけでも出来るからな……」
ブツブツ独り言を言いながら状況を整理していくジョン
「しかし、こいつらは死んだ。何故か? 餓死だろうな、此処で水も食料も無く飢えて死んだ。此処は拷問部屋だな……でなきゃこんな回りくどい事をする意味が無い」
骸骨の周りをグルグルと周り、身体と頭を回転させるジョン
「なら俺一人では脱出不能? 外から誰かに助けて貰うしか方法は無いのか? いやそもそも外から俺を脱出させる事は出来るのか? アイツ等は俺の生存を知らない筈死んでいると思っているはずだ……ならアイツらが無事外に脱出出来ても死んでいると思われている俺は置いて行かれる可能性が大、要するに俺一人で此処を出なければ俺は死ぬ、つまり俺ヤバイ」
辺りを見渡すが当たり前だとでも言う様に出入り口の様な物は一切ない
あるのは骸骨三体のみ
「おい! 誰か見て無いのか! 此処が拷問部屋なら誰か接触してくるハズだろ!? 誰も居ないのか! おーい!!」
ジョンが大声を出しても返答は無し
「マジかよ、十五年前の拷問部屋はシステムだけは生きて使い手は十五年の時を経て死んだって訳か」
ジョンは仕方がなく一途の望みに懸けて自分を閉じ込めている牢屋の石壁を叩き始める
「ダメダメダメ、厚い壁でこんなのを破壊なんて無理だ。ならどうする? 考えろ考えろ……天井はどうだ? 駄目だ高すぎる登れない、なら床は?」
ジョンは足元を見る、足元は砂で出来ている、頑張れば掘る事も可能な硬さ
「掘れって? マジで言ってる?」
掘るしかないそう確信したジョンは小型のスコップを取り出し掘り始める
砂は柔らかいのでスコップは深くまで刺さる、これを不幸中の幸いと呼ぶか焼け石に水と呼ぶかは人次第
その頃ジョンの声が届かない上層では底なし砂の前で行き詰りにあっているジャックにメイヴィスそれとエル
「先生!! 返事をして下さい!」
長い事エルはジョンが飲み込まれた地面に向かって叫び続けていた。
その後ろで冷めた目でエルを見るジャック
「無駄だよ、それで何度目だと思うの? 彼は死んだ。そう割り切って先に進むしかないよ」
「貴方は黙ってて!」
「へー随分と彼と仲が良いんだね、そこまで心配するなんてさ」
ジャックの戯言を無視し叫び続けるエル
「フフフ、彼は幸せ者だね、最後に自分の事を想ってくれる人と出会えたって訳だ。君は彼の親友? それとも恋人? 先生という呼び方から言って師弟の関係なのは分かるけど……先生、ククク」
先生という単語を言った途端何かを思い出したかのように微笑するジャック
勿論これにもエルは答えない
「もう止めないか、ジャック」
止めるメイヴィス
しかしジャックは続ける
「でも君は知ってるのかな? 彼の正体をさ知らないよね? そんな事あの男が喋るはずがない、君は滑稽だ。何も知らない男の為にさ」
「もう止めろと言った!!」
「君は私を殺せない、黙っててよ、メイヴィス」
「ボクもこの中に……!」
と砂の中に入ろうとするエル
「あ~あ、全く……何考えてるんだかね」
「エル!!?」
エルを急ぎ止めるメイヴィス
「止めろ! 犬死する気か!?」
そのメイヴィスの呼び掛けでようやく正気を取り戻すエル
「……すいません」
「良いんだ。気にする事は無い、今は今を生き残れる方法を考えよう」
「彼は”殺し屋”だよ、一流のね」
返答無し
「あれ? 驚かないね、まぁそこら辺は察していたかな? 彼、普通じゃないしね、じゃあ次」
「もう黙って居ろ!」
メイヴィスが意気消沈中のエルの為、怒鳴る
「私はジョンの弟子だった」
「!?」
「なに!?」
そのジャックの発言に今まで無反応だったエルも反応する
「やっと驚いてくれたね、嬉しいよ」
「お前がジョンの弟子だと? じゃあジョンは自分の弟子を殺そうとしているのか?」
「ちゃんと私の言葉を聞いてよ、私はジョンの弟子”だった”もう関係無いよ」
「先生と貴方の間に何があったんですか?」
「君達に教えてもね……理解出来ないだろうから教えないよいや”教えられない”かな?」
「それじゃあ皆驚いた所で生き残る方法を考えよう、先の通路にはどうやって進む?」
「ジョンが沈んだ所を飛び越える?」
「う~ん、どれくらい飛び越えれば良いのか分からないよ、もしかしたらこの通路全部底なし砂かもしれないよ?」
「じゃあ、分かりません」
「君の所為なのに?」
「うっ……」
それを聞いて涙目になるエル、ジョンの件と仲間を危険に合わせた事それは間違いなく自分の安請け合いの所為だと自覚をしていた。
「止めないか! 今はそんな事を言っている場合ではない!」
「全部君の所為さ君が余計な事を言わなければあのまま安全に帰れたのに君が余計な事を言うからこの有様さ」
「……すいません」
「いいよ、仕方がない、今のは君をへこましたくて言っただけだから気にしないで」
これはジョン以上だと確信するメイヴィス
その後もジャック達は慎重に通路を調べる、沈んだら命は無いのかもしれないのだから……
責任を感じエルが先頭に立ち通路を調査している、つま先でちょんちょんと通路を叩く
「此処は大丈夫みたいです」
「良かったね、次」
慈悲の欠片もない言葉がエルを襲う
「はい……」
それに大人しく従うエル、エルは死ぬほど責任を感じている
「もういい、我が先に行く、エルもう下がって良い」
「駄目だよ、エルだけじゃ心配だからね、君には生き残って貰わないと困る、実際ジョンの言った通り君が現状で最も強い間違いないよ」
「エルは今自責の念を感じておかしくなっている今は無理をさせる時じゃない」
「彼女には責任を感じて貰わなきゃ困るよ、ね? エル?」
「意地悪は止せ」
「すいません……」
「エルも良いんだ、ジャックの相手をする事は無い」
さっきから口を開く度にすいませんすいませんすいません、エルは精神的に参っていた。
ジョンが死に参っていた。ジャックの悪態にも参っていた。メイヴィスの掛ける優しい言葉にも参っていた。
全ての事がエルを参らさせていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
遂にはごめんなさいを連呼し始めて泣き出してしまう
「勘弁してよ……」
ジャックはそれにうんざりしメイヴィスは心配そうにエルを見る
「エルはまだ若い精神的にも幼い部分を持っている、それなのにお前が遠慮も無しに罵るからこうなる」
「それは御免なさいね、仕事仲間には容赦しない方でね」
エルは泣き始めてしまい、先には進まない、そんな彼女をジャックは押そうとするがメイヴィスが止める
メイヴィスはこの時完全にエルの母親気分
「仕方がないでしょ? こうでもしなきゃ先に進めない」
「エルを殺す気か? 止めろ」
「此処にずっと居たらあの二人も死ぬ事になるよ」
二人とはマリアとネルヒムの事を指す。時間が遅れては彼女たちの首に仕掛けた爆弾が爆発してしまうのだ。
「不味いよ、爆発まで時間が余りない」
「我が行く、文句は無いな?」
「仕方がない、分かったよエル下がって」
「いや! ボクが行きます……行けます」
「らしいよ?」
「行ける訳ない」
「大丈夫です。ボクだって騎士です。こんなの慣れてます」
エルは既に泣き止んでいた。
だが顔は赤い
「そうは見えないけど?」
「何と言われても大丈夫です」
「ならいいよ、調査を続けて」
「はい……」
エルは調査を再開する
さっきと同じように通路をつま先で慎重に調べる
そして分かったことがある、あの罠は一度発動二度目は発動しないという事である
「いや~良かった良かった私達はジョンの尊い犠牲のお陰で無事に通れる様になったようだね、まぁあまり良い師匠だったとは言えないけど最期に良いプレゼントを貰ったよ、ありがとう元師匠、さよなら……死んでいたらだけどね」
(死んでいる事を願いたいよ、ジョン)
ジャックには予感があった。あの男はまだ死んでいないという予感が
確信に至る証拠はないだが心のどこかであの男は死んでいない、そう確信しているジャック、だから願う、死んでいてくれと
そしてその悪い予感は見事的中している
上でジャックがそんな懇願をしている時
下では砂を掘り進める礼服の男が居た。
彼は必死に必死にスコップを刺し砂を掘り出し新たな穴を作るそれを繰り返し繰り返しようやく外に脱出する事が叶った。脱出に掛かった時間はおよそ三十分
外といってもまだ遺跡の中なのは変わりない、変ったのは彼があの牢屋を脱出出来たという事
”外”の空気を思いっ切り吸って吐くそして本当に外に出れたのだと実感する
「はぁ……助かった……」
一時期は死ぬのかとも思ったジョンだが何とか生き残れた。
「ふぅ……で? 此処は何処? 誰か教えてくれない?」
応える者は居ない
(まだ遺跡の中みたいだな……アイツ等の姿も見えない)
そう心で思いながら何処へ繋がっているか分からない通路を進む
そして一つの部屋に行き着いた。部屋に扉は無いだからジョンは手を使う事無く部屋に入る
部屋は書庫のようで本棚に勿論本が置かれている、しかしボロボロ
ボロボロの本を手に取り読んでみようと試みるが無駄、内容は読み取れない
大人しく本棚に本を戻す。
そして書庫全体を見回っているとまたも白骨遺体を発見する、今回の骸骨は白衣を着ており二本の剣が刺さっている
「此処で殺人事件が起こった様だな……犯人は誰だ? まだ生きてこの遺跡に潜伏している? いや、可能性は低いか」
この骸骨を殺した何者かが自分に危害を加えて来ないかを心配する
「白衣か……研究者だったのか? 俺の世界じゃ白衣を着るのは研究者の特権なもんでな、こっちじゃどうだか知らんが」
ジョンは此処を古代の遺跡か何かだと思っていたのでこの白衣やこの部屋に立ち並ぶ本棚には違和感を感じていた。
あまりにも現代的過ぎるからだ。骨も白衣も本もこの遺跡を構築していたであろう石壁の状態等から比べれば新しい
「こいつは此処で何をしてたんだ? 何故殺された? なぁ、教えてくれどうやったら外に出れるんだ?」
死人に口なし
「だろうな」
ジョンがそんな一人芝居をしている時何者かがもう一人この書庫に入って来た。ジョンも足音でその存在に気が付く
急ぎその侵入者から見つからない為姿を消すジョン
そして静かに侵入者に近付きその姿を眼に入れる、ジョンの計画では此処で相手を観察し相手の弱点等を見破り、後ろから気が付かれない様に近付き
無効化する計画だった。
だがそうはさせなかった。何故ならその侵入者は……
「ナサル……?」
黒髪の騎士、ナサル・パララグだったからである
ナサルは静かにジョンの方を向く
「お前は海の都に居るハズじゃ……」
「……貴方、侵入者?」
「侵入者だと?」
ナサルの様子がおかしい、ナサルの眼を視てもそれが分かる
「お前……もしかしてナサルじゃないのか?」
「私はナサルという名では無いわ、私はライラというの」
ナサルとは口調も違う
「質問に答えて貰える? 君は侵入者?」
「そうだと言ったらどうする?」
「どうもしないよ、此処にはもう知られて困るものも無いし取られて困るものも無いよ、勝手に何でも持って行って良いよ私には関係ないから」
「こちらからも質問していいか?」
「いいよ、何?」
「お前は誰だ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる