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第2章 街暮らし 冒険者編
第80話 シルスの魔道具2
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王都魔術師協会、魔道具部門、最高責任者の一室。
「コルセイヤ様、本日の報告は以上です」
「魔道具登録の異議申し立てに来たという、女と人族の男の件について詳しく聞かせてくれるかな」
その内容も気になるが、訪れたのが人族というのがどうも引っ掛かる。
「本日の午前中の事ですが、11日前に登録不許可通知を出した魔道具に対して、登録申請の再考を願い出たとの事です」
「王都の者ですか?」
「アルヘナの町からの来訪者で、現在は王都に滞在中とのことです」
「アルヘナというと例の魔道部品の一件となった町ですね」
「はい、風と土の魔道部品を大量に購入している町です。その魔道具店の店長が、今回申請に来た女性です」
魔道具や魔道部品は我がエルトナ王国の独自技術で、他国への輸出も制限している物だ。
だからこそ王都でのみ製造・販売を行ない一括管理しているのだ。
大量に購入している場合、他国へ横流ししていることが疑われるが、調査した結果他国との繋がりはなかった。
「申請の再考について、管理部は何と言っているのですか」
「今回は図面を見誤った事による不備で、再考の余地があると申しております」
「あの管理部が自らの誤りを認めていると」
「革新的技術の可能性があり、是非にと特記事項として書かれております」
「革新的技術……申請に来た人族の男が関わっているということですか」
書類をめくりながら側近は答える。
「登録割合は2割となっておりますが」
人族は技術革新をもたらす者とされている。
50年以上前。王国に来訪した人族によって、農業分野の技術革新が行なわれた。
それにより我が国の食料生産力が上がり、隣国の共和国に頼らずとも自国生産で賄えるようになったと聞く。
確か15年ほど前にも人族が訪れて王宮に住んでいたはず。今も王宮に居るかは不明だが、そんな人族が関わった魔道具であれば革新的技術ということもあるかも知れない。
魔術師部門に後れを取る我が魔道具部門ではあるが、人族による革新がもたらされるのであれば、それを利用しない手はないだろう。
「この件に関して早急に処理を進めなさい。私自ら審議に立ち会い判断を下します」
「了解しました。コルセイヤ様」
◇
◇
翌日。私達は王都の魔道具店を訪れていた。ここなら温風装置という物があるかもしれないわ。王都の魔道具店は広く、色々な魔道具が販売されていた。
「すごい品数ですね。私の店のカタログにも載ってますが、現物を見ると圧倒されます」
「ほんとね。何に使う魔道具か分からない物が多いわね。ユヅキさん分かる?」
「ランプぐらいは分かるが、後は分からんな」
私達はあちらこちらを見て回る。
「すみません。ここに温風装置はありますか?」
「温風装置? ここには置いてないね。聞いたことない商品だ」
「この王都に、他の魔道具店はありますか?」
「王城を挟んだ反対側に2軒あるけど、多分そこにも無いと思うよ。あるとしたら貴族街にある魔道具店じゃないかな」
なるほど、貴族街か。それなら私が持っているカタログにも記載されてないわね。
私達は宿屋に帰り、部屋に集まって相談する。
「ここに来る途中、馬車で出会ったセルンという魔術師の学生さんは、ドライヤーの魔道具の事は知らなかったな」
「そうですね。多分貴族街の魔道具店でしか扱っていない商品なんじゃないでしょうか」
「ねえ、その貴族街の魔道具店には行けないの?」
「我々が貴族街に入るには特別な許可が必要ですから、難しいでしょうね」
王都に住んでいる貴族は、高位の人達ばかりだ。そんな場所に私達が立ち入ることなどできないでしょうね。
「温風装置がどんなのか分からなくても、『このドライヤーはすごいんです!』じゃだめですか」
「本当は比較して優れている点を主張するのが一番いいんですけど、見つからないならアイシャさんの言うようにするしかないですね」
魔術師協会の人達は再考してくれると言ってるから、ちゃんと説明すれば分かってくれると思うんだけど……。
絶対大丈夫ですよ、とアイシャさんが励ましてくれる。
「ところで、シルスさん。審議開始までの2週間をどう過ごすかだが。王都に滞在するか、一旦アルヘナに戻るか」
「ここの宿代と往復の馬車代を考えると、どちらともいえませんね。長く滞在するなら、王都で働くことも考えないと。明後日また魔術師協会に行った後で考えましょうか」
「それなら、明日1日は王都を観光してもいいよね。ねえ、ユヅキさん」
「そうだな。この宿に居ても暇を持て余すだけだしな。シルスさん頼めるか?」
「ええ、いいですよ。王都には面白い場所が沢山ありますからね」
魔法大学に通っている間、私も王都の色々な所を見て回った。明日はユヅキさん達と王都観光をして気分転換でもしましょう。
翌日朝から王都の観光名所を巡る。まずは、中央広場の噴水を見に行きましょう。大きな噴水にアイシャさんも喜んでいるわ。
「あちらの池の中央には大きな貝があって、その中に硬貨を投げ込んで願いをかけると、叶うという伝説があるんですよ」
「そうなんですか。私やってみますね。こうですか?」
アイシャさんが真剣な表情で硬貨を投げ入れていたわ。
その他にも大きな石像や昔の戦争の跡地など、名所をユヅキさん達と巡る。
ユヅキさんは王都が初めてのはずだけど、なんだか懐かしむような感じで一緒に歩いていたわね。人族の国にも同じような場所があるのかしら。
人族の国はこの大陸の遥か南。王国を越え他国を渡らないと行けない遠い場所。そんな故郷へ簡単に帰る事はできないわよね。
私の気分転換もあるけど、きょう一日はユヅキさん達にもこの王都を楽しんでもらいたいわ。
「コルセイヤ様、本日の報告は以上です」
「魔道具登録の異議申し立てに来たという、女と人族の男の件について詳しく聞かせてくれるかな」
その内容も気になるが、訪れたのが人族というのがどうも引っ掛かる。
「本日の午前中の事ですが、11日前に登録不許可通知を出した魔道具に対して、登録申請の再考を願い出たとの事です」
「王都の者ですか?」
「アルヘナの町からの来訪者で、現在は王都に滞在中とのことです」
「アルヘナというと例の魔道部品の一件となった町ですね」
「はい、風と土の魔道部品を大量に購入している町です。その魔道具店の店長が、今回申請に来た女性です」
魔道具や魔道部品は我がエルトナ王国の独自技術で、他国への輸出も制限している物だ。
だからこそ王都でのみ製造・販売を行ない一括管理しているのだ。
大量に購入している場合、他国へ横流ししていることが疑われるが、調査した結果他国との繋がりはなかった。
「申請の再考について、管理部は何と言っているのですか」
「今回は図面を見誤った事による不備で、再考の余地があると申しております」
「あの管理部が自らの誤りを認めていると」
「革新的技術の可能性があり、是非にと特記事項として書かれております」
「革新的技術……申請に来た人族の男が関わっているということですか」
書類をめくりながら側近は答える。
「登録割合は2割となっておりますが」
人族は技術革新をもたらす者とされている。
50年以上前。王国に来訪した人族によって、農業分野の技術革新が行なわれた。
それにより我が国の食料生産力が上がり、隣国の共和国に頼らずとも自国生産で賄えるようになったと聞く。
確か15年ほど前にも人族が訪れて王宮に住んでいたはず。今も王宮に居るかは不明だが、そんな人族が関わった魔道具であれば革新的技術ということもあるかも知れない。
魔術師部門に後れを取る我が魔道具部門ではあるが、人族による革新がもたらされるのであれば、それを利用しない手はないだろう。
「この件に関して早急に処理を進めなさい。私自ら審議に立ち会い判断を下します」
「了解しました。コルセイヤ様」
◇
◇
翌日。私達は王都の魔道具店を訪れていた。ここなら温風装置という物があるかもしれないわ。王都の魔道具店は広く、色々な魔道具が販売されていた。
「すごい品数ですね。私の店のカタログにも載ってますが、現物を見ると圧倒されます」
「ほんとね。何に使う魔道具か分からない物が多いわね。ユヅキさん分かる?」
「ランプぐらいは分かるが、後は分からんな」
私達はあちらこちらを見て回る。
「すみません。ここに温風装置はありますか?」
「温風装置? ここには置いてないね。聞いたことない商品だ」
「この王都に、他の魔道具店はありますか?」
「王城を挟んだ反対側に2軒あるけど、多分そこにも無いと思うよ。あるとしたら貴族街にある魔道具店じゃないかな」
なるほど、貴族街か。それなら私が持っているカタログにも記載されてないわね。
私達は宿屋に帰り、部屋に集まって相談する。
「ここに来る途中、馬車で出会ったセルンという魔術師の学生さんは、ドライヤーの魔道具の事は知らなかったな」
「そうですね。多分貴族街の魔道具店でしか扱っていない商品なんじゃないでしょうか」
「ねえ、その貴族街の魔道具店には行けないの?」
「我々が貴族街に入るには特別な許可が必要ですから、難しいでしょうね」
王都に住んでいる貴族は、高位の人達ばかりだ。そんな場所に私達が立ち入ることなどできないでしょうね。
「温風装置がどんなのか分からなくても、『このドライヤーはすごいんです!』じゃだめですか」
「本当は比較して優れている点を主張するのが一番いいんですけど、見つからないならアイシャさんの言うようにするしかないですね」
魔術師協会の人達は再考してくれると言ってるから、ちゃんと説明すれば分かってくれると思うんだけど……。
絶対大丈夫ですよ、とアイシャさんが励ましてくれる。
「ところで、シルスさん。審議開始までの2週間をどう過ごすかだが。王都に滞在するか、一旦アルヘナに戻るか」
「ここの宿代と往復の馬車代を考えると、どちらともいえませんね。長く滞在するなら、王都で働くことも考えないと。明後日また魔術師協会に行った後で考えましょうか」
「それなら、明日1日は王都を観光してもいいよね。ねえ、ユヅキさん」
「そうだな。この宿に居ても暇を持て余すだけだしな。シルスさん頼めるか?」
「ええ、いいですよ。王都には面白い場所が沢山ありますからね」
魔法大学に通っている間、私も王都の色々な所を見て回った。明日はユヅキさん達と王都観光をして気分転換でもしましょう。
翌日朝から王都の観光名所を巡る。まずは、中央広場の噴水を見に行きましょう。大きな噴水にアイシャさんも喜んでいるわ。
「あちらの池の中央には大きな貝があって、その中に硬貨を投げ込んで願いをかけると、叶うという伝説があるんですよ」
「そうなんですか。私やってみますね。こうですか?」
アイシャさんが真剣な表情で硬貨を投げ入れていたわ。
その他にも大きな石像や昔の戦争の跡地など、名所をユヅキさん達と巡る。
ユヅキさんは王都が初めてのはずだけど、なんだか懐かしむような感じで一緒に歩いていたわね。人族の国にも同じような場所があるのかしら。
人族の国はこの大陸の遥か南。王国を越え他国を渡らないと行けない遠い場所。そんな故郷へ簡単に帰る事はできないわよね。
私の気分転換もあるけど、きょう一日はユヅキさん達にもこの王都を楽しんでもらいたいわ。
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