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第4章 とある世界編
第111話 プロローグ-0.1 ~とある時代~ 始まりの時
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「これから採決を行う。手元のボタンを押してくれ」
「また30対20か。いつまでこんなことを続ける」
「まだ様子を見ようと言っているだけだ。議決には従ってもらおう」
会議を取り仕切っている文也の言う事も分かるが、時間は限られている。
「残りの非常食は2週間分しかないんだぞ」
「そうは言っても、モニターで外の様子を見ただろう。あんな化け物がうろついているんだぞ」
白い家の外。その様子を見る事のできるモニターには、遠くに歩く人型のモンスターの影が映る。
「あなた達も見たでしょう、獣が2足歩行で歩いているのよ。大きなトカゲが歩いているのも見たわ」
「だからこの武器で倒すんだろう」
俺達には最初から、人数分の武器が用意されている。これを持って戦うことができるじゃないか。
「こんなレーザー銃とナイフだけで、あんなモンスターと戦えと言うの」
「この家は安全だ。ここに隠れ住むことも選択肢のひとつだ」
「食料はどうするんだ」
「近くの森には、食料となるイノシシがいるようだ」
「それだけでは足りないと言っているんだ」
俺達が目覚めて、こんな不毛な議論を10日以上続けている。
野菜は家の中で栽培可能だ。文也の言うように獣を狩れば、非常食も合わせて1ヶ月は持つかもしれない。だがこの先ずっとそんなギリギリの生活を送るつもりか。
「祐樹、私はもう限界だわ。周りのモンスターに怯えて、こんな狭い部屋に閉じこもっているのはイヤなの」
「静香、次回もここに残るという結論なら、俺は外に出る」
「分かったわ。私も祐樹と一緒に出るわ」
会議で採決の結果は27対23となった。だがそれに納得することはできない。
「俺は今から外に出て、モンスターを討伐する。俺に続く有志の参加者を募る」
「なに勝手な事を言っているんだ。議会採決でここに留まると決まったじゃないか」
「だから俺の独断だ。みんなに強制はしないし、責任は自分の命で購う」
「私は祐樹について行くわ」
「俺も祐樹と一緒に行こう」
「ありがとう、静香、修二。外に出るか出ないか後のことは文也、お前に任せる。俺達3人のことは気にするな」
外の空気が汚染されていないことは確認している。酸素マスク付きのヘルメットは不要だが、体にフィットした濃紺の耐熱スーツは着用する。リュックを背負い、腰に巻いたベルトにレーザー銃とナイフを刺す。準備を整え、俺達は初めて外の世界へと踏み出す。
扉のすぐ外は森だが100m程離れたところに道があり、モンスターが行き交っている。
「家の入り口を知られる訳にはいかない。道と平行に歩けるだけ歩いてから攻撃しよう」
「それにしても、なんなのあいつら。荷車のようなものを引っ張っていたわよ」
「それなりの文明があるのかもしれん。言葉らしきものもしゃべっていたしな」
「武器も持っていたな。鉄製だろうか。それなら中世ぐらいの文明かもしれんが、この銃とナイフなら対抗できる」
森を進んで行くと、俺達を発見したモンスターが剣を抜いて森に入り向かってきた。
「祐樹、気づかれたぞ」
「よし、戦闘に入ろう。まだ距離はある、銃で応戦するぞ」
相手は人型が3体だ、3対3なら勝機がある。レーザー銃を向け発射するがなかなか当たらない。訓練は積んできたが実戦とはまるで違う。
奴らは木の陰に隠れながら、こちらに近づいてくる。いきなり炎の球が飛んできた。火炎瓶か? 矢も飛んでくるぞ。
「奴らは戦い慣れしている。一旦引いた方が良くないか」
「そうだな、銃で牽制しながら森の奥へ行こう。静香ついて来れるか」
「ええ、今そっちに行くわ」
俺達は走って、森の奥へと向かう。モンスター達は追って来ないようだ。なんとか逃げ切れたか。
「今日はここで夜を明かそう。食事の準備をしておいてくれ、俺は燃やせる木を見つけてくる」
「食事の準備って言っても、こんなところでどうやるのよ」
「静香、お前もメイからサバイバルの事を教わっただろう」
世界の事をよく知るメイから、俺達は教育を受けている。屋外でのサバイバル術もそうだ。教えてもらったことは実践しないとな
「分かったわよ。石を探してくるわ」
かまどを作り乾いた木を積んで、一番下にナイフで削ったフェザースティックを置く。着火棒をガンガン叩き、火を熾す。
非常食の粉に水筒の水を加えて、鍋を火にかければ夕飯の出来上がりだ。
「このご飯にも飽きてきたわね」
「そうだな、だがこの食料が尽きる前に、俺達がなんとかしないとみんなが飢え死んでしまう」
食事を終えてテントで寝静まった頃、俺は耳をつんざく悲鳴を聞いて外に飛び出した。
「どうした! 静香、無事か! 修二はいるか!」
「祐樹、こっちよ!」
急ぎライトと武器を手にする。星明りだけの真っ暗な中、ライトを頼りに静香の声のする方に駆ける。行ってみると修二が寝ていたテントが引き裂かれ、辺り一面が血で濡れている。
「静香! ライトを照らせ。何かいるぞ!!」
「キャー!」
森の奥深く、豹なのか虎なのか大型の獣の影が見える。その口には2本の大きな牙、そして首を噛まれ力なく引きずられる修二の姿があった。
俺はレーザー銃を撃ったが当たらず、その獣は悠々と森の奥へと姿を消した。
「静香ここは危険だ。すぐに離れよう」
「修二が……、修二が……」
「諦めろ。この鞄を持って道まで走るぞ」
放心状態の静香の手を引いて森を出て、モンスター達が行き交っていた道まで出てきた。
道の外れの草むらに身を隠して、夜が明けるまで静香の手を握り続けた。
「この地球はどうなっているんだ。モンスターやあんな獰猛な獣までいるなんて」
「メイは生物が住めない環境が続いていたって言っていたのに」
「一旦、あの白い家に戻った方がいいかもしれんな」
「また30対20か。いつまでこんなことを続ける」
「まだ様子を見ようと言っているだけだ。議決には従ってもらおう」
会議を取り仕切っている文也の言う事も分かるが、時間は限られている。
「残りの非常食は2週間分しかないんだぞ」
「そうは言っても、モニターで外の様子を見ただろう。あんな化け物がうろついているんだぞ」
白い家の外。その様子を見る事のできるモニターには、遠くに歩く人型のモンスターの影が映る。
「あなた達も見たでしょう、獣が2足歩行で歩いているのよ。大きなトカゲが歩いているのも見たわ」
「だからこの武器で倒すんだろう」
俺達には最初から、人数分の武器が用意されている。これを持って戦うことができるじゃないか。
「こんなレーザー銃とナイフだけで、あんなモンスターと戦えと言うの」
「この家は安全だ。ここに隠れ住むことも選択肢のひとつだ」
「食料はどうするんだ」
「近くの森には、食料となるイノシシがいるようだ」
「それだけでは足りないと言っているんだ」
俺達が目覚めて、こんな不毛な議論を10日以上続けている。
野菜は家の中で栽培可能だ。文也の言うように獣を狩れば、非常食も合わせて1ヶ月は持つかもしれない。だがこの先ずっとそんなギリギリの生活を送るつもりか。
「祐樹、私はもう限界だわ。周りのモンスターに怯えて、こんな狭い部屋に閉じこもっているのはイヤなの」
「静香、次回もここに残るという結論なら、俺は外に出る」
「分かったわ。私も祐樹と一緒に出るわ」
会議で採決の結果は27対23となった。だがそれに納得することはできない。
「俺は今から外に出て、モンスターを討伐する。俺に続く有志の参加者を募る」
「なに勝手な事を言っているんだ。議会採決でここに留まると決まったじゃないか」
「だから俺の独断だ。みんなに強制はしないし、責任は自分の命で購う」
「私は祐樹について行くわ」
「俺も祐樹と一緒に行こう」
「ありがとう、静香、修二。外に出るか出ないか後のことは文也、お前に任せる。俺達3人のことは気にするな」
外の空気が汚染されていないことは確認している。酸素マスク付きのヘルメットは不要だが、体にフィットした濃紺の耐熱スーツは着用する。リュックを背負い、腰に巻いたベルトにレーザー銃とナイフを刺す。準備を整え、俺達は初めて外の世界へと踏み出す。
扉のすぐ外は森だが100m程離れたところに道があり、モンスターが行き交っている。
「家の入り口を知られる訳にはいかない。道と平行に歩けるだけ歩いてから攻撃しよう」
「それにしても、なんなのあいつら。荷車のようなものを引っ張っていたわよ」
「それなりの文明があるのかもしれん。言葉らしきものもしゃべっていたしな」
「武器も持っていたな。鉄製だろうか。それなら中世ぐらいの文明かもしれんが、この銃とナイフなら対抗できる」
森を進んで行くと、俺達を発見したモンスターが剣を抜いて森に入り向かってきた。
「祐樹、気づかれたぞ」
「よし、戦闘に入ろう。まだ距離はある、銃で応戦するぞ」
相手は人型が3体だ、3対3なら勝機がある。レーザー銃を向け発射するがなかなか当たらない。訓練は積んできたが実戦とはまるで違う。
奴らは木の陰に隠れながら、こちらに近づいてくる。いきなり炎の球が飛んできた。火炎瓶か? 矢も飛んでくるぞ。
「奴らは戦い慣れしている。一旦引いた方が良くないか」
「そうだな、銃で牽制しながら森の奥へ行こう。静香ついて来れるか」
「ええ、今そっちに行くわ」
俺達は走って、森の奥へと向かう。モンスター達は追って来ないようだ。なんとか逃げ切れたか。
「今日はここで夜を明かそう。食事の準備をしておいてくれ、俺は燃やせる木を見つけてくる」
「食事の準備って言っても、こんなところでどうやるのよ」
「静香、お前もメイからサバイバルの事を教わっただろう」
世界の事をよく知るメイから、俺達は教育を受けている。屋外でのサバイバル術もそうだ。教えてもらったことは実践しないとな
「分かったわよ。石を探してくるわ」
かまどを作り乾いた木を積んで、一番下にナイフで削ったフェザースティックを置く。着火棒をガンガン叩き、火を熾す。
非常食の粉に水筒の水を加えて、鍋を火にかければ夕飯の出来上がりだ。
「このご飯にも飽きてきたわね」
「そうだな、だがこの食料が尽きる前に、俺達がなんとかしないとみんなが飢え死んでしまう」
食事を終えてテントで寝静まった頃、俺は耳をつんざく悲鳴を聞いて外に飛び出した。
「どうした! 静香、無事か! 修二はいるか!」
「祐樹、こっちよ!」
急ぎライトと武器を手にする。星明りだけの真っ暗な中、ライトを頼りに静香の声のする方に駆ける。行ってみると修二が寝ていたテントが引き裂かれ、辺り一面が血で濡れている。
「静香! ライトを照らせ。何かいるぞ!!」
「キャー!」
森の奥深く、豹なのか虎なのか大型の獣の影が見える。その口には2本の大きな牙、そして首を噛まれ力なく引きずられる修二の姿があった。
俺はレーザー銃を撃ったが当たらず、その獣は悠々と森の奥へと姿を消した。
「静香ここは危険だ。すぐに離れよう」
「修二が……、修二が……」
「諦めろ。この鞄を持って道まで走るぞ」
放心状態の静香の手を引いて森を出て、モンスター達が行き交っていた道まで出てきた。
道の外れの草むらに身を隠して、夜が明けるまで静香の手を握り続けた。
「この地球はどうなっているんだ。モンスターやあんな獰猛な獣までいるなんて」
「メイは生物が住めない環境が続いていたって言っていたのに」
「一旦、あの白い家に戻った方がいいかもしれんな」
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