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第3章 安住の地
第37話 国境1
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「地図によると、この辺りが帝国との国境付近なんだけどね」
空から見ると、国境線などは見えないから既に国境を越えている可能性もある。後で色々と問題になるのも嫌だから、ちゃんと国境の検問を受けて入国したい。緑の森と草原ばかりが広がる国境線付近をウロウロと飛び回りながら検問所を探す。
「リビティナ様。あの左手の方。あの建物が国境検問所のようですぜ」
ネイトスの指差す方向に、白い建物が見えた。そのすぐ近くには宿場町のような小さな町。そこに内陸と国境をつなぐ街道が伸びている。行商人の人達だろうか、街道には荷馬車や大きな荷物を持った人が行き交う。
「人が多いね。急降下して城壁の陰へ降りるよ。ネイトス、しっかりベルトを掴んでいてね」
「ヒッ! ヒッエ~エ~ェ~~~」
ネイトスが人のものとは思えないような叫び声をあげる。おいおい、フリーフォール程の急降下じゃないだろう? 精々ジェットコースター並だと思うんだけど。
しかし地上に降りたネイトスは白目をむいて気絶してしまっていた。Bランク冒険者ともあろう者がこれぐらいで気絶するとは……。
水魔法を顔にぶっかける。
「しっかりしてくれよ。ネイトス」
「リ、リビティナ様。俺、今……黄泉への道が見えました……」
まあ、この世界でジェットコースターのような遊興施設は無いから、こんな体験は初めてだろうね。
二人仮面をつけて、まだ足をガクガクさせているネイトスに肩を貸しながら城門へと向かうけど、何やら騒がしいね。
「おい、そこの二人。早く町中に入るんだ!」
「一体どうしたんだい?」
「怪鳥の鳴き声が空から聞こえた。今から捜索隊を出す」
「な、何を言っているんだい。こんな町の近くに怪鳥が現れる訳ないじゃないか」
とぼけた声で門番さんに話したけど、真剣な顔を向けてくる。
「ああ、この町始まって以来かも知れん」
兵士達が慌てた様子で城門に集まって来た。これは大事になってしまったよ。
「ネイトス、君のせいだからね」
「そんな~、俺は死ぬ思いをしたんですよ~。今思い出しても、足が震えてきますよ」
今にも倒れそうに、振るえた声を出すネイトス。まあ、次回からは善処するよ。
城門を潜り、街中で歩いている住民の女性に国境の事について聞いてみた。
「おや、お二人さんは旅行か何かかい。でも帝国の次の町までは遠いからね。向こう側の乗合馬車は朝まで無いよ」
今は午後の三時頃だろうか、普通ならこの町で一泊するんだろうね。でもリビティナなら空を飛んで陽が落ちる前に次の町まで行ける。
「ボク達は冒険者だから森の中で野営ができるんだ。今から国境を超えるよ」
「そうかい。国境まで歩いて行けなくもないけど、乗り合い馬車が反対側の門から出てるよ。それに乗るといい」
ありがとうとお礼を言って、見知らぬ街の様子を観光気分で眺めながら反対側の東門へと向かう。この町は帝国との貿易で成り立っているのか、行商の馬車を止められる大きな宿泊施設が多いみたいだね。国同士は仲が悪いとはいえ、こういう貿易は盛んなようだ。
「この馬車は国境まで行くのかい」
「ああ、すぐに出るけど乗っていくかい」
十二、三人は座れそうな幌馬車には誰も乗っていない。
「この時間、国境に向かう人はほとんどいなくてね。その分安くしてるんだけどね」
国境まで距離が短いとはいえ、一人銅貨四枚とは確かに安いね。ちょうど良かったと二人馬車に乗り込む。
「反対側の城門が騒がしかったけど、何かあったのかね」
「さあ、何だろうね~。よく知らないや」
とぼけながら答える。ほんと、ごめんなさい。
馬車に揺られてすぐに、空から見えた白い建物に到着した。馬車が到着するのを待っていたのか、その建物から王国風の人達が出て来て、リビティナ達と入れ代わりに馬車に乗り込んでいく。
これが国境かと辺りを見回していたリビティナの横を、細身で赤茶色の毛並みをしたクマ族の若い女性が通り過ぎた。頭髪は少し長く天然パーマでクルクルカールしていて可愛いけど、使い古した剣を腰に差し弓を背に担いでいる。帝国の冒険者かな。
馬車にも乗らずここまで歩いて来たのだろうか、慣れた感じで国境検問所へと向かっている。その後ろに付いてリビティナ達も白い建物へと入った。
何度か国境に来ているネイトスの後ろに付いて、リビティナはキョロキョロしながら建物の中を歩く。多くの事務員が働いていてお役所といった感じだけど、武器を携えている者も多く、緊迫感があるね。
いくつもある窓口のひとつで、ネイトスが冒険者カードをカウンターに提示するのに習って、リビティナも自分のカードを見せる。
「お二人とも冒険者の方ですね。文字の読み書きはできますか? お名前と出国目的を教えてください」
文字は書けると言って、出された書類に必要事項を記入して手荷物を見せたら、もう出国手続きは終わった。料金を支払い、出口はあちらだと言われたけど割と簡単に通してくれるんだね。普通の町から出るのと同じような感じだったよ。
でも隣の窓口にいたさっきのクマ族の冒険者が、職員と何か言い争っている。問題でもあったのかな。
空から見ると、国境線などは見えないから既に国境を越えている可能性もある。後で色々と問題になるのも嫌だから、ちゃんと国境の検問を受けて入国したい。緑の森と草原ばかりが広がる国境線付近をウロウロと飛び回りながら検問所を探す。
「リビティナ様。あの左手の方。あの建物が国境検問所のようですぜ」
ネイトスの指差す方向に、白い建物が見えた。そのすぐ近くには宿場町のような小さな町。そこに内陸と国境をつなぐ街道が伸びている。行商人の人達だろうか、街道には荷馬車や大きな荷物を持った人が行き交う。
「人が多いね。急降下して城壁の陰へ降りるよ。ネイトス、しっかりベルトを掴んでいてね」
「ヒッ! ヒッエ~エ~ェ~~~」
ネイトスが人のものとは思えないような叫び声をあげる。おいおい、フリーフォール程の急降下じゃないだろう? 精々ジェットコースター並だと思うんだけど。
しかし地上に降りたネイトスは白目をむいて気絶してしまっていた。Bランク冒険者ともあろう者がこれぐらいで気絶するとは……。
水魔法を顔にぶっかける。
「しっかりしてくれよ。ネイトス」
「リ、リビティナ様。俺、今……黄泉への道が見えました……」
まあ、この世界でジェットコースターのような遊興施設は無いから、こんな体験は初めてだろうね。
二人仮面をつけて、まだ足をガクガクさせているネイトスに肩を貸しながら城門へと向かうけど、何やら騒がしいね。
「おい、そこの二人。早く町中に入るんだ!」
「一体どうしたんだい?」
「怪鳥の鳴き声が空から聞こえた。今から捜索隊を出す」
「な、何を言っているんだい。こんな町の近くに怪鳥が現れる訳ないじゃないか」
とぼけた声で門番さんに話したけど、真剣な顔を向けてくる。
「ああ、この町始まって以来かも知れん」
兵士達が慌てた様子で城門に集まって来た。これは大事になってしまったよ。
「ネイトス、君のせいだからね」
「そんな~、俺は死ぬ思いをしたんですよ~。今思い出しても、足が震えてきますよ」
今にも倒れそうに、振るえた声を出すネイトス。まあ、次回からは善処するよ。
城門を潜り、街中で歩いている住民の女性に国境の事について聞いてみた。
「おや、お二人さんは旅行か何かかい。でも帝国の次の町までは遠いからね。向こう側の乗合馬車は朝まで無いよ」
今は午後の三時頃だろうか、普通ならこの町で一泊するんだろうね。でもリビティナなら空を飛んで陽が落ちる前に次の町まで行ける。
「ボク達は冒険者だから森の中で野営ができるんだ。今から国境を超えるよ」
「そうかい。国境まで歩いて行けなくもないけど、乗り合い馬車が反対側の門から出てるよ。それに乗るといい」
ありがとうとお礼を言って、見知らぬ街の様子を観光気分で眺めながら反対側の東門へと向かう。この町は帝国との貿易で成り立っているのか、行商の馬車を止められる大きな宿泊施設が多いみたいだね。国同士は仲が悪いとはいえ、こういう貿易は盛んなようだ。
「この馬車は国境まで行くのかい」
「ああ、すぐに出るけど乗っていくかい」
十二、三人は座れそうな幌馬車には誰も乗っていない。
「この時間、国境に向かう人はほとんどいなくてね。その分安くしてるんだけどね」
国境まで距離が短いとはいえ、一人銅貨四枚とは確かに安いね。ちょうど良かったと二人馬車に乗り込む。
「反対側の城門が騒がしかったけど、何かあったのかね」
「さあ、何だろうね~。よく知らないや」
とぼけながら答える。ほんと、ごめんなさい。
馬車に揺られてすぐに、空から見えた白い建物に到着した。馬車が到着するのを待っていたのか、その建物から王国風の人達が出て来て、リビティナ達と入れ代わりに馬車に乗り込んでいく。
これが国境かと辺りを見回していたリビティナの横を、細身で赤茶色の毛並みをしたクマ族の若い女性が通り過ぎた。頭髪は少し長く天然パーマでクルクルカールしていて可愛いけど、使い古した剣を腰に差し弓を背に担いでいる。帝国の冒険者かな。
馬車にも乗らずここまで歩いて来たのだろうか、慣れた感じで国境検問所へと向かっている。その後ろに付いてリビティナ達も白い建物へと入った。
何度か国境に来ているネイトスの後ろに付いて、リビティナはキョロキョロしながら建物の中を歩く。多くの事務員が働いていてお役所といった感じだけど、武器を携えている者も多く、緊迫感があるね。
いくつもある窓口のひとつで、ネイトスが冒険者カードをカウンターに提示するのに習って、リビティナも自分のカードを見せる。
「お二人とも冒険者の方ですね。文字の読み書きはできますか? お名前と出国目的を教えてください」
文字は書けると言って、出された書類に必要事項を記入して手荷物を見せたら、もう出国手続きは終わった。料金を支払い、出口はあちらだと言われたけど割と簡単に通してくれるんだね。普通の町から出るのと同じような感じだったよ。
でも隣の窓口にいたさっきのクマ族の冒険者が、職員と何か言い争っている。問題でもあったのかな。
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