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第6章 魔族の国
第50話 交易路2
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「それにしても、お嬢ちゃん。歳は若いのにすごい魔力量だったな」
「いや~、何かご迷惑を掛けてしまったようで」
工事をしている人達と宿屋で食事をしながら今日の事を話す。リビティナとしては反省会になってしまった。
「まあ、あれだけ派手にやらかしゃ、怒られもするわな」
「嬢ちゃん、こんな工事は初めてなんだろう。仕方ねえよ」
「前に人が通るくらいの山道は作ったことがあるんだけどね~。こんな本格的なのは初めてなんだよ」
「それで力が入っちまったのかい」
「ごめんね~。魔道具は使い慣れていなくてさ」
「そんな事ないって、よくやってくれているよ。親方、工事がすげ~進んだって喜んでたぜ」
「そうだよな。明日には一番の難所を越えられそうだしな。嬢ちゃん明日も頼むぜ」
背中をバンバンと叩かれて、励まされてしまったよ。
一人で山道を作るのも楽しかったけど、こうやってワイワイ言いながら一緒に道を作っていくのも悪くないよね。
翌日、日が昇ると同時にこの町を出て現場へと向かう。人が乗る馬車と工事用に機材を積んだ大型の馬車、三台を連ねて昨日作った道を進んで山の中へと入って行く。
「よっしゃ、今日も一日みんな頑張れ。但し怪我だけはすんじゃね~ぞ。怪我するよ~な奴は未熟者だ」
親方と呼ばれている工事の責任者がみんなの前で、今日の工事についての説明と注意事項を話す。
「山の奥まで入って来た。前後に魔獣退治の冒険者を配置した。笛が鳴ったらみんな中央に固まれ」
昨日いなかった人が居ると思ったら、雇った冒険者なんだね。四人の冒険者が工事区間の前後に立ち警戒にあたる。
昨日と同じように、三角定規の装置を設置して山肌を削っていく。
「リビティナの嬢ちゃん。ここはあんたに任せる。ドカンと削ってくれ」
リビティナの魔力を使ってもいい箇所で、親方から頼まれた。意気揚々と魔道具に魔力を流すと、一区間全ての崖が切り裂かれ一気に道ができていく。
「よっしゃ、ご苦労さん。落ちた岩をどけて粉を撒いていけ」
崖を切り崩した後は、地面を固める粉というものを撒いていく。後方では谷に落ちないように石の柵を作って街道を仕上げている。
前方を歩いていた親方が、後ろに向かって指示を出した。
「お~い、ここの壁を固めるぞ。補強板を持ってこい」
そう言うと後方にいた、資材を積んだ大きな馬車がやって来た。荷台から幅二メートル、高さ一メートル程の木の板を側面の壁に押し付ける。それを四枚積み重ねて壁面を覆い隠す。
「これは何をやっているんだい」
「あの板はな、弱そうな地盤を固める魔道具で、上部から粉を入れて魔力を流すと固まってくれんだよ」
壁に横付けされた馬車の上に昇って、作業員が上から粉を入れて板のハンドルを握り魔力を流し込む。ジュッンと言う音と共に板の周りから白い煙が上がった。
これで固まったようでその板を横にずらして、同じ作業を繰り返し進めていく。
「これは州都の城壁の外側にあった漆喰?」
「お~、よく知ってるな。あれも俺達がやった工事だよ」
城壁にあったのと同じ明るいグレー色の壁がどんどん作られていく。
これはすごいね。組織だって効率よく作業を進めている。さすが妖精族だよ、魔法と建築材料を組み合わせて、大きな構造物を造っている。これは魔国も見習わないといけないね。
「よし、これで難工事区間は終わったな。後は既存の道を整備していくぞ」
その合図で、後ろの馬車からまた違う魔道具が運ばれて来た。手押し車のように四角い木の箱に車輪がついていて、見えている道の端まで押して運んでいく。
ここから先は二百年前に作られた道。今では樹木が生い茂っていて、この先どこが道なのかも分からない。後は地図頼りになるけど、二百年と言うと妖精族の寿命程度。一世代前で、当時作った正確な図面が今も残っているそうだ。
その魔道具に魔力を流すと、箱の下から風魔法が飛び出して樹木が切り倒されていく。
「これはな、道に沿って風の刃が飛んで邪魔な木を切っていくんだ。固まった道を壊すこともねえから、あんたでも使えるんじゃないか」
出力が抑えられているから、岩など固いものは切れないようになっているらしい。
カーブした道でも、道に張り付くように風魔法が曲がりながら樹木を切り裂いていくそうだ。
「それなら安心だね。ちょっと使わせてくれるかい」
「とは言え嬢ちゃんの魔力量だ。手加減はしてくれよ」
そう言われて手押しの魔道具に魔力を込めると、風切音がして箱の下から風の刃が勢いよく飛んで行った。
「うひゃ~。嬢ちゃんの魔力は半端ね~な。どこまで飛んで行ったか見えねえじゃねぇか」
曲がりくねった峠道。見えない先まで道幅の樹木が倒され、街道に日光が届くようになり明るくなった。
道の補修をしつつ進み、道に残った大きな切株は鉄の杭を打ち込んで破壊し、薬剤を注入して固める。
これで根を張って道を壊す心配もなくなるそうだ。埋め殺しという手法で、いちいち切株を掘り起こさず早く工事を進めていける。
今日の工事も終わり、今晩は山の中で護衛に守られて野営をする。
「なあ、あんた。冒険者を辞めて、うちの会社に入らんか。魔力量の調整を覚えりゃ、いい職人になれるぞ」
「いや、ボクは依頼でここに来ただけで……」
「そんな臨時収入じゃなくてよ、手に職を付ければ将来も食いっ逸れる事もねえぞ」
冒険者の収入は不安定だと、真剣にリビティナのことを思って言ってくれる。ここまで一緒に仕事をして、同じ釜の飯を食った仲間と思ってくれているのかな。
この会社に入る事はできないけど、仲間と一つの事をしていく。うん、うん。なんかこういう雰囲気もいいもんだね。
「いや~、何かご迷惑を掛けてしまったようで」
工事をしている人達と宿屋で食事をしながら今日の事を話す。リビティナとしては反省会になってしまった。
「まあ、あれだけ派手にやらかしゃ、怒られもするわな」
「嬢ちゃん、こんな工事は初めてなんだろう。仕方ねえよ」
「前に人が通るくらいの山道は作ったことがあるんだけどね~。こんな本格的なのは初めてなんだよ」
「それで力が入っちまったのかい」
「ごめんね~。魔道具は使い慣れていなくてさ」
「そんな事ないって、よくやってくれているよ。親方、工事がすげ~進んだって喜んでたぜ」
「そうだよな。明日には一番の難所を越えられそうだしな。嬢ちゃん明日も頼むぜ」
背中をバンバンと叩かれて、励まされてしまったよ。
一人で山道を作るのも楽しかったけど、こうやってワイワイ言いながら一緒に道を作っていくのも悪くないよね。
翌日、日が昇ると同時にこの町を出て現場へと向かう。人が乗る馬車と工事用に機材を積んだ大型の馬車、三台を連ねて昨日作った道を進んで山の中へと入って行く。
「よっしゃ、今日も一日みんな頑張れ。但し怪我だけはすんじゃね~ぞ。怪我するよ~な奴は未熟者だ」
親方と呼ばれている工事の責任者がみんなの前で、今日の工事についての説明と注意事項を話す。
「山の奥まで入って来た。前後に魔獣退治の冒険者を配置した。笛が鳴ったらみんな中央に固まれ」
昨日いなかった人が居ると思ったら、雇った冒険者なんだね。四人の冒険者が工事区間の前後に立ち警戒にあたる。
昨日と同じように、三角定規の装置を設置して山肌を削っていく。
「リビティナの嬢ちゃん。ここはあんたに任せる。ドカンと削ってくれ」
リビティナの魔力を使ってもいい箇所で、親方から頼まれた。意気揚々と魔道具に魔力を流すと、一区間全ての崖が切り裂かれ一気に道ができていく。
「よっしゃ、ご苦労さん。落ちた岩をどけて粉を撒いていけ」
崖を切り崩した後は、地面を固める粉というものを撒いていく。後方では谷に落ちないように石の柵を作って街道を仕上げている。
前方を歩いていた親方が、後ろに向かって指示を出した。
「お~い、ここの壁を固めるぞ。補強板を持ってこい」
そう言うと後方にいた、資材を積んだ大きな馬車がやって来た。荷台から幅二メートル、高さ一メートル程の木の板を側面の壁に押し付ける。それを四枚積み重ねて壁面を覆い隠す。
「これは何をやっているんだい」
「あの板はな、弱そうな地盤を固める魔道具で、上部から粉を入れて魔力を流すと固まってくれんだよ」
壁に横付けされた馬車の上に昇って、作業員が上から粉を入れて板のハンドルを握り魔力を流し込む。ジュッンと言う音と共に板の周りから白い煙が上がった。
これで固まったようでその板を横にずらして、同じ作業を繰り返し進めていく。
「これは州都の城壁の外側にあった漆喰?」
「お~、よく知ってるな。あれも俺達がやった工事だよ」
城壁にあったのと同じ明るいグレー色の壁がどんどん作られていく。
これはすごいね。組織だって効率よく作業を進めている。さすが妖精族だよ、魔法と建築材料を組み合わせて、大きな構造物を造っている。これは魔国も見習わないといけないね。
「よし、これで難工事区間は終わったな。後は既存の道を整備していくぞ」
その合図で、後ろの馬車からまた違う魔道具が運ばれて来た。手押し車のように四角い木の箱に車輪がついていて、見えている道の端まで押して運んでいく。
ここから先は二百年前に作られた道。今では樹木が生い茂っていて、この先どこが道なのかも分からない。後は地図頼りになるけど、二百年と言うと妖精族の寿命程度。一世代前で、当時作った正確な図面が今も残っているそうだ。
その魔道具に魔力を流すと、箱の下から風魔法が飛び出して樹木が切り倒されていく。
「これはな、道に沿って風の刃が飛んで邪魔な木を切っていくんだ。固まった道を壊すこともねえから、あんたでも使えるんじゃないか」
出力が抑えられているから、岩など固いものは切れないようになっているらしい。
カーブした道でも、道に張り付くように風魔法が曲がりながら樹木を切り裂いていくそうだ。
「それなら安心だね。ちょっと使わせてくれるかい」
「とは言え嬢ちゃんの魔力量だ。手加減はしてくれよ」
そう言われて手押しの魔道具に魔力を込めると、風切音がして箱の下から風の刃が勢いよく飛んで行った。
「うひゃ~。嬢ちゃんの魔力は半端ね~な。どこまで飛んで行ったか見えねえじゃねぇか」
曲がりくねった峠道。見えない先まで道幅の樹木が倒され、街道に日光が届くようになり明るくなった。
道の補修をしつつ進み、道に残った大きな切株は鉄の杭を打ち込んで破壊し、薬剤を注入して固める。
これで根を張って道を壊す心配もなくなるそうだ。埋め殺しという手法で、いちいち切株を掘り起こさず早く工事を進めていける。
今日の工事も終わり、今晩は山の中で護衛に守られて野営をする。
「なあ、あんた。冒険者を辞めて、うちの会社に入らんか。魔力量の調整を覚えりゃ、いい職人になれるぞ」
「いや、ボクは依頼でここに来ただけで……」
「そんな臨時収入じゃなくてよ、手に職を付ければ将来も食いっ逸れる事もねえぞ」
冒険者の収入は不安定だと、真剣にリビティナのことを思って言ってくれる。ここまで一緒に仕事をして、同じ釜の飯を食った仲間と思ってくれているのかな。
この会社に入る事はできないけど、仲間と一つの事をしていく。うん、うん。なんかこういう雰囲気もいいもんだね。
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