神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう

文字の大きさ
2 / 201
プロローグ

1.死んだらガングロおねーさんが現れて神様だと名乗った

しおりを挟む
 そこは真っ白な世界だった。
 いきなり変な情景描写でゴメン。
 だけど、ほかに表現しようがないんだ。
 地面も真っ白、空も真っ白。とにかく真っ白。
 病室の壁や布団のシーツも白かったけど、あれはウソの白さなんだなと思うくらい真っ白。
 ここの白さはなにひとつ混じりっけがない。
 立っている僕の足下を見ても影すらない。

 ……うん? 
 僕、地面に立っている?
 生まれたときから下半身麻痺で、お医者さんは一生立ち上がるどころか座ることすらできないだろうって言っていたのに。
 ついでにいえば、生まれてから11年間僕を苦しめていた内臓の痛みも感じない。

 ふむ、いったいこれはどうしたことだろう。
 ちょっと、ここに来る前のことを思い出してみよう。

 ---------------

 僕が産まれたとき、医学が発達していない世の中なら数時間で死んでいてもおかしくない状態だった。
 下半身麻痺と極度の抵抗力不足という身体からだで生まれた僕は、物心ついたときから病室の外に出たことがない。
 厳密には何度か手術や検査のためにほかの部屋に行ったことはあるけど、常にベッドごと看護師さんに運ばれたし、ベッドは細菌やウィルスが寄りつかないように厚いビニールで覆われていた。

 苦しみ抜いて迎えた、11歳の誕生日。
 僕はこれまでにないほどの胸の痛みを感じた。
 そりゃあ、もう、ものすごい。
『痛くて気絶しそうだけど、痛すぎて気絶できない』という矛盾した表現を使いたくなるほどのスゴさだった。
 ベット脇にぶら下がっているナースコールのボタンを押せたのは我ながら奇跡だと思う。

 しばらくして、看護師さんやお医者さんがやってきて、いろいろなんか叫んだりしていて、点滴に薬を追加したりとか、さらに注射を何本もうたれたりとかしたけど、はっきりいってよく覚えていない。
 すぐに意識がなくなった。
 たぶん、注射か点滴に麻酔でも入っていたんだろう。
 
 そして気がつくと、この真っ白な世界にいたってわけだ。

 ---------------

 この状態で考えられる可能性は2つかな。

 実はまだ目を覚ましていないという夢オチ。
 もう1つは、ついに死んでしまって、ここはあの世だっていうこと。

 うん、どっちも十分に可能性があるな。
 むしろ、病室で感じた苦しみを考えると、死んじゃった可能性の方が高いかな?
 まあ、それならそれでいいか。
 どうせ僕は一生病室から出られないし、お母さんやお父さんにとっても負担にしかならない息子だ。
 2人とも、今頃はこれで病弱な息子の世話から解放されて入院費もかからなくなったってホッとしているかもね。
 面会したことはないけど、僕には健康で元気な弟もいるらしいし、家族3人で暮らしていくことだろう。

 もし死んじゃったのだとすると、ここはあの世ってこと?
 あの世ってこんなに真っ白なのかな?
 閻魔様にも天使にも鬼にも会ってないけど、ここが天国? それとも地獄?
 他の死んだ人の魂とかは見当たらないなぁ。

 などと思っていると、いきなり目の前にセーラ服姿のおねーさんが現れた。
 歩いてきたとか、飛んできたとか、そういうんじゃない。
 瞬間移動としか言いようがない現れ方。

 僕は驚いてその場に尻餅をついた。
 だって、あんまり突然だったんだもん。
 何の脈絡もなく、文字通り、いきなり目の前に現れたんだよ。
 でもって、顔が黒い。
 ……黒人さんかな?
 しかも、ピアスをしている。耳だけでなくて鼻や口元にも!

「あー、ゆータンひどい、女の人を見ていきなり倒れるなんて、チョベリバみたいなぁ」

 っていうか、ゆータンってなんだ?

「ほら、君、さくら勇太ゆうたくんでしょ? だからゆータン」

 勝手に変なあだ名をつけないでほしい。
 っていうか、なんで僕の名前を知っている?
 そもそも、おねーさん何者よ?

「私? 私は神様なのだー。チョースゴイでしょっ。あ、ちなみに姿は自由に変えられるけど、この顔はお化粧だから。ガングロファッションなのよね」

 か、神様?
 ガ、ガングロ?
 ガングロってよく分からないけど、10年以上前に流行ったってテレビで言っていたヤツ?
 いや、どーみても、勘違いした女子高生としか思えないんだけど……
 少なくとも、とても神様には見えない。

「えー、ゆータンヒドイぃー」

 目をウルウルさせるおねーさん(自称神様)。
 っていうか、今気づいたけど、僕、声を出していないのに会話が成立しているのな。

「そりゃあ、あたし神様だもーん、チョベリグーな能力いっぱいもっているのだー。どうだ、スゴイっしょ?」

 まあ、確かにいろいろな意味でスゴイけどね。
 ってことは、僕は死んじゃったの?

「うん、11歳になった誕生日の翌日に残念ながらゆータンは死んじゃったよ。南無阿弥陀仏」

 南無阿弥陀仏って……神様が仏様に祈るなよ……
 あれ? ツッコもうとしたけど声が出ないぞ。

「あはっ! ツッコまれちゃった。てへ♪
 あ、今のゆータンは魂だけの存在だから、下界で人間がやるような声帯を震わせて空気の振動で声を届けるとかできないよ。そもそもここって空気ないし」

 声が出せないのか。
 まあ、しょうがない。
 心で思えば伝わるみたいだし。

「そそ、細かいこと気にしちゃ、長生きできないよん」

 11歳になったばかりで死んだけどね。
 で、ここは天国? それとも地獄?

「うーん、どっちでもないよー。ここは神様と人の魂が謁見――話をするための仮想空間……みたいな?」

『みたいな』っていいかげんだなぁ。

「うん、部長にもよくそう言われる」

 いるのかよっ、神様にも部長!?

「うん、むかつくセクハラ親父だよ。あたしのお尻さわろうとするんだよ。ぶん殴ってやりたい」

 なんか、もうツッコむ気にもなれない。
 あー、でも、これ夢じゃないなぁ。
 僕の脳みそはこんなに変な神様を想像できない。僕が想像もできないものは、たぶん夢には出てこないだろう。

「おー、理知的だねー。11歳とは思えない」

 両手を打ち合わせて拍手してみせるおねーさん。
 拍手しても音がしないのは、空気がないから?

「そーだよ、やっぱり、ゆータンは頭いいね。学校に通っていなかったのに」

 体調が少し良かったとき、テレビを見たり本を読んだりすることはできたからね。
 ……まあ、それも半年前に体調が悪化してからは1日1時間までって言われちゃったけど。

 っていうか、さ。
 神様っていっているけど、女の神様って女神様っていう方が正しくない?

「あー、それって男女差別よぉ。スチュワーデスをキャビンアテンダントっていう時代なんだから、神様も女性だけ別の呼び方するのやめてくれない?」

 ……ごめんなさい。
 なんか理不尽な怒られ方をしたような気がするけど……あ、この考えも読まれちゃうのか。

「まーね。それにしても、ゆータン冷静だね。自分が死んだなんて言われたら、普通の人間はもっと悲しむもんだと思っていたけど」

 ま、大人になる前に死ぬだろうっていうのは僕にだって想像できたからね。
 お父さんやお母さんや弟もそう思っていただろうしさ。

 で、おねーさんが僕を天国に連れて行ってくれるの?

「えー、そんなの無理だよー」

 なんで?
 僕、地獄行き?
 悪いことした覚えなんて無いけど!?
 まあ、良いこともしていないけど。
 あ、ひょっとして親より先に死ぬのは最大の罪とかそういう話?

「うーん、そうじゃないけど……存在しないところに連れて行くのは無理だし」

 存在しない?

「天国とか地獄なんて、人間が勝手に考えたものだからねー。実際には死んだ生物の魂は、しばらくすると消滅するよ」

 そっかぁ。
 じゃあ、僕ももうすぐ消えてなくなるんだ。

「このままだとそーだね」

 なんか、笑っちゃうな。

「うをぉ!? 自分が死んだのに笑っちゃうとは、これいかに? もしかして、ゆータン、その年でマゾだったりするの?」

 いや、それは意味がわからないけど。

 だってさ、生まれてからずっと、自分の足で立ったこともないし、身体はずっと痛みや苦しみや感じていたからね。
 こんなふうに、元気に相手にツッコミをいれつつ話すなんて夢のまた夢でさ。
 それどころか座ることすら出来なかったんだよ。

 それなのに、死んでもうすぐ魂が消滅するってときになって、初めて立ち上がって苦しくない時間を過ごせるなんてさ。
 笑うしかないじゃん。

「おー、前向きなようでいて後向きなナイス発言だね♪」

 で、僕の魂は後どれくらいで消滅するの?

「うーん、ゆータンの場合、あと30分くらいかな。このままならね」

 30分かぁ。
 いろいろ思うところはあるけど……

 ……うん?
 なんか、おねーさんの言い方気になるな。
 このままなら・・・・・・ってさっきから言っているけど、それって……

「ご名答、このまま・・・・じゃない・・・・選択肢・・・を与えようと思って、あたしはここにゆータンの魂を呼び寄せたんだよ」

 このままじゃない選択肢?
 つまり、生き返らせてくれる?

「うーん、それは無理。さすがのあたしもザオ○クとかつかえないから」

 僧侶に負けるなよ、神様……

「でも、ゆータンの魂を『転生』させることならできるよ」
 
 転生……

「ようするに生まれ変わりだね」

 おねーさんはそう言って、ニッコリ笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...